ちゃなのゲームブック

ゲームブック作家「ちゃな」のブログです。Amazonキンドルで「デレクの選んだ魔法」等販売中!

エロいゲームブック

どうも、ちゃなです。

今回は、ゲームブックにおけるエロスについてです。

 

拙作ネイキッドシリーズはいずれも主人公が丸裸で始まるというアレな設定なわけですが、そもそも文化とエロは切っても切れない関係にあると言えます。インターネットがここまで隆盛したのもエロサイトのお陰という説がありますし、エロサイト見たさや美少女ゲームをやりたくてパソコンの使い方を覚えたという男性の方もいらっしゃることでしょう。文学作品にしても、映画にしても、エロスは一定の需要を支えています。

 

ネイキッドウォリアー (ちゃなのゲームブック)

ネイキッドウォリアー (ちゃなのゲームブック)

 

 

むしろ、いたずらに道徳観念に囚われて、エロを否定したり排除しようとするメディアは、廃れやすいと言われています。一方で、パソコンゲーム業界のようにエロだらけになってしまうのも、ある意味末期的と言えます。

 

では、まだまだ未熟ともいえるゲームブック業界に、エロスは出てくるのでしょうか?

実際、18禁のゲームブック作品というのは、電子書籍ではけっこう制作されています。そもそも、PCのアドベンチャーゲームゲームブックみたいなものですから、それを数え上げるときりがありません。

 

ですが、ここでは、直接的な性表現ではなく、フレーバーとして性的な要素を盛り込んだ、アダルティでエロいゲームブックを紹介したいと思います。

 

 第5位「ソーサラー

ソーサラー (アドベンチャーノベルス)

ソーサラー (アドベンチャーノベルス)

 

いきなり絶版本ですみません。本作は魔法使いものの三部作の二作目で、主人公が様々な魔法を覚えて悪魔と対決するストーリーです。舞台はファンタジーなのですが、途中で現代の米国っぽいところにトリップしてしまうこともあります。

そこでなんと、主人公が麻薬を飲んで、本当にトリップしてしまう展開があるんですね。夢の中で主人公は裸のガールフレンドとご対面することになります。

非常にソフトな描写ですが、状況を考えるととても危険です。ちなみに、実際に麻薬を飲んでしまう場合と、魔法で状況を予測する場合の2パターンがあり、前者はもちろんバッドエンドに直行です。

 

第4位「ハウス・オブ・ヘル」

ハウス・オブ・ヘル (HJ文庫G)

ハウス・オブ・ヘル (HJ文庫G)

 

スティーブ・ジャクソン氏の名作「地獄の館」を翻案したものです。パラグラフ構成は変わっていませんが、主人公が無色透明の「君」ではなく、女子高生としてキャラ付けされたことで、雰囲気が大分変わっています。

ファイティングファンタジーシリーズに無理に萌え要素を付け加えたことを批判する向きもあるのですが、本作はホラーで、主人公は勇者でもないただの無力な人間なので、映像的には女性の方が映えますね。拷問部屋に捕らえられた少女の末路を思うと、ぐっとくるものがあります。お約束の、生け贄にされてしまう裸の娘も出てきます。

 

第3位「モンスターの逆襲」

これも残念ながら絶版のようです。主人公はなんとゴブリン!別のモンスターに進化できる首飾りを武器に、家族を殺した冒険者たちへの復讐の旅に出るというストーリーです。モンスターを主人公にした作風は山本弘氏の十八番ですね。

終盤に、氷漬けにされた裸の美少女が出てきます。読者としては眼福なのですが、主人公はモンスターなので全然惹かれません。そして当の美少女の正体は……。こういうちょっとしたエロスをさりげなく入れ込んでくるあたりも氏の真骨頂です。

 

第2位「バック・トゥ・ザ・フューチャー

これまた絶版ですねー。かの名作のストーリーをそのまま、ゲームブックにしたものです。

この作品では、映画を観た人が誰でも想像するIF展開が仕込まれています。原作では、過去に戻った主人公が、結婚する前の母親といい仲になってしまうわけですが、そこで最後の一線を踏み越えてしまうと……最後の最後で嗚咽を禁じ得ないバッドエンドが待っていますよ。

 

第1位「竜の血を継ぐ者」

竜の血を継ぐ者

竜の血を継ぐ者

 

 ベスト10でも紹介した作品です。ナムコの名作「ドラゴンバスター」のゲームブックのリメイクです。

本作はロマンスをテーマにしており、相手の王子様に対する主人公のいじらしい恋心が繊細に描かれています。それだけでもエロスを感じさせるのですが、本作では主人公が危ない目に遭うシーンがいくつかあります。

特に最悪なのは、酒に薬を混ぜられて、眠っているうちに悪戯されてしまうという展開。まあ、女だてらで一人旅を続けていれば、よこしまな男に狙われることだって少なくないでしょうね。直接的な描写ではありませんが、それがまた現実を否認したい主人公の想いを表現しているようで、なんとも切ない気持ちにさせられます。

 

番外編「Master of the Manor」

Master of the Manor (Spanking Adventures Gamebook Book 1) (English Edition)

Master of the Manor (Spanking Adventures Gamebook Book 1) (English Edition)

 

スパンキングアドベンチャーと銘打たれている通り、本作はれっきとしたSMゲームブックです。主人公の女性は洋館に迷い込み、女主人に調教されてしまうのです!

本作には「お尻の赤み」というすごいステータスがあります。当然、ぶたれる毎に赤くなっていき、限界を超えると能力値が減少して、最後は人格崩壊に至ります。

当然ながら性描写満載で、飲尿シーンまであるというハードコアな作風なので、今回は選外としました。全677パラグラフという大作ですが、各パラグラフがあまりシャッフルされていないので、頭から読んでいくだけでストーリーが大体わかります。アダルト小説としてもいけますよ。

 

あ、そうそう、この作品は、FT書房さんのミニゲームブックで杉本=ヨハネ氏が紹介していたものでした。

ゲームブックへの道 ミニゲームブック集2

ゲームブックへの道 ミニゲームブック集2

 

 このシリーズの中にも、エロネタを扱ったゲームブックがあります。ロア・スペイダー氏の「悪魔の宴」とかね。

 

このように、エロティックな展開を含むゲームブック作品は結構あります。

一方で、主人公が無色透明な「君」である場合、主人公がエロスに巻き込まれるのを好まない読者もいることでしょう。

エロスをフレーバーとしてどう使いこなすか、作者の力量が試されていると言えます。

ゲームブックの難易度について

どうも、ちゃなです。

今回のテーマは、ゲームブックの難易度についての考え方です。

 

ほとんどのゲームブックはエンディングのパラグラフまでたどり着くのが目的ですから、なかなかエンディングにたどり着けないゲームブックは難しいゲームブックということになります。

ゲームブックの難易度の高さは、おおよそ次の7つの要素から成ります。

 

1.パラグラフ数が多い

単純に、400パラグラフのゲームブックは、100パラグラフの作品よりも長く、故に難しいです。

現在、最長と思われる作品の一つが「ネバーランドのリンゴ」。なんと1000パラグラフ!しかも双方向なので、クリアまでにどっぷりと時間を使います。

ネバーランドのリンゴ (創元推理文庫―スーパーアドベンチャーゲーム)

ネバーランドのリンゴ (創元推理文庫―スーパーアドベンチャーゲーム)

 

 

2.バッドエンドが多い

選択を間違えるとすぐバッドエンドになってしまう作品は、どの選択肢を選んでもエンディングにたどり着ける作品に比べて、より難しいといえます。

「釘責めの迷宮」は、FT書房さんのシリーズの中ではなかなか手強い作品です。100パラグラフ中12個がバッドエンドになっています。これら以外に、アイテムがないと先に進めないパラグラフもあるので、より難しさを感じます。

釘ぜめの迷宮 ゲームブック

釘ぜめの迷宮 ゲームブック

 

 

3.「真の道」が見つけにくい

バッドエンドの数が多くても、何度もチャレンジしていればいずれはクリアできるはず。そう思っても、なかなかうまくはいきません。

エンディングに安全に辿り着ける「真の道」が、パラグラフジャンプなどで巧妙に隠されていたり、一見正解に見えるルートが複雑に分岐してすべてバッドエンドで終わっていたりと、意地悪な構造を持っている作品もあります。

「モンスター誕生」がその典型です。序盤にあるヒントを得ておかないと、途中までは進めてもいずれ詰まってしまうようになっています。

モンスター誕生?ファイティング・ファンタジー (24)
 

 

4.戦闘バランスが厳しい

サイコロで戦闘の決着をつけるシステムを採用しているゲームブックはたくさんあります。ほとんどの作品では、主人公の初期能力値が低くても「真の道」を通れば容易にクリアできるようになっています。

しかし、例えば「バルサスの要塞」で、魔法を一切使わずにクリアしようとすると、技術点12、体力点18のラスボスを傷ついた状態で倒さなければなりません。これは理論上はほぼ不可能です。

スティーブ・ジャクソン氏の作品の中では易しい方に入る「シャムタンティの丘を越えて」ですが、技術点が最低の戦士では、クリアは相当難しいです。

 

5.謎が難しい

特定の謎を解けないと詰まってしまうタイプのゲームブックもあります。

「魔の罠の都」では、4行の呪文をすべて見つけないとクリアできない上に、呪文の言葉を手に入れるためには謎解きに挑まねばならないものもあります。

魔の罠の都―ソーサリー〈02〉 (Adventure Game Novel)

魔の罠の都―ソーサリー〈02〉 (Adventure Game Novel)

 

 

6.エンディングまでの道のりが長い

パラグラフ数が少なくても、迷路やループなどで、なかなか前に進めない作品もあります。

ピラミッドゲームブックシリーズは、先に進むことの難しさを楽しむのがコンセプトになっていて、無類の難易度を誇ります。

死内村十三塚伝説 (ピラミッド文庫―ピラミッド・ゲームブック)

死内村十三塚伝説 (ピラミッド文庫―ピラミッド・ゲームブック)

 

 

7.シナリオが難解

クリア自体はたやすくても、一回エンディングにたどり着いただけでは、ストーリーの理解が難しい作品というのもあります。

送り雛は瑠璃色の」なんかはゲームブックとしてより文学作品として難解といえます。

送り雛は瑠璃色の

送り雛は瑠璃色の

 

 

このように、ゲームブックの難易度を構成する要素は様々です。

作者側からすると、難易度を上げるのは簡単なことです。しかしそれでは単なる独りよがりな作品になってしまいます。歯ごたえが あって挑戦欲をかき立てられる作品を作るためには、単にバッドエンドを仕込んだり敵を強くしたりするのではなく、パラグラフ構成にひねりを加えて、ゲームブックとしての完成度にこだわるのが王道といえそうです。

 

ちなみに、今回参考に数えてみたところ、「ネイキッドウォリアー」にはバッドエンドのパラグラフがなんと20個以上ありました。難しかったでしょうか……? 

ネイキッドウォリアー制作裏話 その2

どうも、ちゃなです。

ネイキッドウォリアーの制作裏話、続きです。

 

ネイキッドウォリアー (ちゃなのゲームブック)

ネイキッドウォリアー (ちゃなのゲームブック)

 

 

「ネイキッドウォリアー」のゲームシステムは、武器と鎧、靴という3種類のアイテムを管理するだけの、ごく単純なものです。はじめての商用ゲームブック作品ということで、あまり凝った仕様にはせず、鉛筆もサイコロもなして気軽にプレイできるようにしました。ただし、現実味を持たせるためと、後述の「裸縛りプレイ」が可能になるようにするため、装備を見つけても身につけるかどうかは読者が選べるようにし、身につけると後で痛い目に遭うトラップアイテムも仕掛けました。

(ただ、この方法だとフラグ立てがうまく作れないので、終盤で手に入るあるアイテムだけは強制的に装備することになっています)

 

ゲーム序盤でどの装備を選ぶかが、本作でグッドエンドにたどり着くための最大の鍵 になっています。当然、強い装備を選べば良いのですが、本作では敵を倒すよりも早くゴールにたどり着く方が重要なので、足を守る靴が実は最も重要なアイテムになっています。

 

「ネイキッドウォリアー」では、真のエンディングにたどり着くためには鎧を一切装備しない(つまり裸)で最後まで到達する必要があります。これは、当初考えていたエンディングシーンの再現です。

さらに、武器も靴も一切使わなくてもクリアできたら面白いのではないかと考えました。いわゆる「裸縛りプレイ」ですん。

 

とはいえ、一切装備なしでもクリアできるゲームバランスにしてしまうと、普通のプレイでは難易度が下がりすぎてしまいます。

そこで、マルチエンディング方式を採用し、いくつかのグッドエンドを作りました。「真エンド」「ノーマルエンド」以外に「近衛隊エンド」「ハーレムエンド」「復讐エンド」があり、それぞれ特定の装備がないと辿り着けないようになっています。

本作にとって、マルチエンディングは、ゲームに広がりを持たせるためと言うより、難易度調整の意味合いが強いのです。

この特徴は、次回作「ネイキッドサバイバー」にも引き継がれています。

ネイキッドウォリアー制作裏話 その1

どうも、ちゃなです。

 

私が「ネイキッドウォリアー」を制作しようと思ったのは、2016年の秋頃でした。

 

ネイキッドウォリアー (ちゃなのゲームブック)

ネイキッドウォリアー (ちゃなのゲームブック)

 

 

実は、その年の夏頃から、ライトノベルを書こうと思っていたのです。

小説はこれまで何本か書いたことがありましたが、キンドル自費出版したことはありませんでした。数年前からキンドル・デスクトップ・パブリッシング (KDP)が流行り始めていたので、この機会に自分でもやってみようと考えていたのです。

 

そのとき、「ライトノベルでは、一刻も早く裸の女の子を出さなければいけない」というルールを耳にしたんです(笑)

 

それなら冒頭一行目からハダカにしてしまおう。それも衆人環視の前で。

そんなシチュエーションが、現実的に起きるとしたら、どんな設定と世界観なのか。

 

そうやって演繹していって、「ネイキッドウォリアー」の冒頭シーンが生まれたのです。

 

なんともトホホな話ですね。 

 

当初、主人公の女戦士は、トライアスロンの最中に、とりあえず何とか服を着ようとするのだけど、その都度邪魔されてしまい、とうとう最後まで裸で通してしまう、というプロットを考えていました。

「ネイキッドウォリアー」で、主人公がローブを着ようとすると燃やされてしまうシーンは、その名残です。

 

でも、ライトノベルとは言え、一つのアイデアから筋の通ったストーリーを練り上げるのは、容易なことではありません。

同時に、街中を使ったレースというシチュエーションだとすると、色んなルートがあるだろうし、一本道の小説にしてしまうのが、なんとなくもったいないような気がしてきました。

 

そこで思いついたのが、ゲームブックです。

 

当時はちょうど、日本でもKindle Unlimitedという定額読み放題サービスが始まったばかりでした。そこにFT書房さんがさまざまな100パラグラフのゲームブック作品を投入されていて、子供の頃からゲームブックが大好きだった私は、それらを片っ端から読みふけっていました。

 

ドルイドリィ

ドルイドリィ

 

 

ゲームブックの代表とも言える「火吹き山の魔法使い」をはじめ、伝統的なゲームブックの多くは、400パラグラフあるいはそれ以上の大作が多いのに対し、FT書房さんは100パラグラフ程度の挑戦的な作品を次々に生み出していました。

私は以前にもゲームブックを作ったことがありましたが、300パラグラフ以上の作品を完成させるのは非常に労力を要します。それに対し、100パラグラフであれば、アイデアさえあれば一気に書き上げることができるし、じっくり推敲してバグを潰す余裕も持てます。

 

ライトノベル用に考えたアイデアと、短いパラグラフ数のゲームブックという新境地。この二つが、私の中でにわかにつながりました。

こうして、「ネイキッドウォリアー」は、ゲームブックとして誕生することになったのです。

パラグラフジャンプとは

どうも、ちゃなです。

 

ゲームブックに用いられる技法の一つに、「パラグラフジャンプ」というものがあります。

今回はこの技法について紹介します。

 

パラグラフジャンプとは、「特定の条件下で発動する、本文に指示されていないパラグラフへの転移」のことを指します。
(公式な定義というのがあるわけではありません)

 

(追記:単に指示されたパラグラフに飛ぶこと全般を「パラグラフジャンプ」と呼称していることもあります。)

 

普通、ゲームブックでは、各パラグラフに、次に読むべきパラグラフが明示されています。
例えば、こんな感じです。

 

101 君は強敵を目の前にしている。
→戦うなら 102へ
→逃げるなら 103へ

 

102 君は必死で戦ったが、敵に殺された。 END

 

103 君は必死で逃げたが、敵に殺された。 END

 

おや、どちらを選んでも、ハッピーエンドにたどり着けませんね?
ところが、パラグラフ101にたどり着く前に、こんな経緯があったとします。

 

100 君は老人から話を聞いた。
「敵に会ったら、死んだふりをしてみると良い。無抵抗の相手には攻撃しないのが、この国のルールだ」
もしこの先君が敵に遭い、死んだふりをしたければ、そのパラグラフに3を加えたパラグラフに進むことができる。
→先に進むなら 101へ

 

このように、パラグラフ100で情報を得ている読者は、パラグラフ101の選択肢に示されていない行動を取ることができるのです。

 

104 君は死んだふりをした。
敵は去って行った。
君は起き上がって旅を続け、遂に目的地にたどり着いた。 Happy END

 

このように、パラグラフジャンプは、普通に読み進めていては気づかない選択肢を読者に提供するものなのです。


当然、このようなシステムは、紙またはキンドル本のような紙とほぼ同じ仕様のゲームブックでのみ成立するものです。
ゲームアプリなどでは、読者に見えないようにフラグ管理を行うことが可能なので、パラグラフジャンプを使わずとも、読者ごとに異なった選択肢を示すことができますし、そもそもパラグラフの概念自体が不要になります。


パラグラフジャンプをゲームブックに導入することで、いくつかのメリットがあります。

 

(1)ゲームブックの寿命を延ばす
基本的にゲームブックは、選択肢を総当たりで選ぶことで、いつかエンディングにたどり着くことができるようになっています。
パラグラフジャンプを要所に挟み込むことで、いわば隠しルートを作ることができ、読者はエンディングにたどり着くルートを見つけ出すことが難しくなります。
肝になる選択肢を隠しておくことにより、正解のルートが偶然目に入ってしまうことも避けられます。

例:「ハウス・オブ・ヘル」は最も難しいゲームブックの一つと言われていますが、その理由の一つが、パラグラフジャンプにより正解ルートが巧妙に隠されていることです。

ハウス・オブ・ヘル (HJ文庫G)

ハウス・オブ・ヘル (HJ文庫G)

 

 

(2)選択肢を選ぶ現実味を持たせる
上の例では、死んだふりをすることで戦いを避けられるという情報がなければ、普通の読者はそんな選択肢を取ることなど思いも寄らぬことでしょう。
はじめから、「死んだふりをするなら~」という選択肢を記載しておくのは、いかにも不自然です。
パラグラフジャンプの仕組みにより、特定の情報を得た読者だけに特別な行動を許すことができます。

例:「諸王の冠」では、燃えさかる炎の中に対して、幻影だと信じて飛び込むという選択肢があるのですが、普通に飛び込んだら死んでしまいます。ところが事前情報を得ていると……

諸王の冠―ソーサリー〈04〉 (Adventure game novel―ソーサリー)

諸王の冠―ソーサリー〈04〉 (Adventure game novel―ソーサリー)

 

 

(3)読者のチートを防ぐ
例えば、「この謎の答えがわかったら、そこに示された数字のパラグラフに進め」といった形でジャンプ先を隠しておくと、読者は本当に謎を解かなければ先に進めません。
これにより、ずるをして先に進もうとする読者を足止めできます。
パズル性の高いゲームブックでは必須とも呼べる手法です。

例:ピラミッド・ゲームブックのシリーズは、とにかく攻略難易度を極限まで高めようというコンセプトの作品です。全編にわたりパラグラフジャンプが仕込まれており、解析を困難にしています。 

怨霊谷からの招き (ピラミッド文庫―ピラミッド・ゲームブック)

怨霊谷からの招き (ピラミッド文庫―ピラミッド・ゲームブック)

 

 

(4)真の展開を隠す
あるパラグラフを2回訪れることがあって、2回目には別の展開が待っているようなことがあります。
初めて訪れた読者にそのことを悟らせないように、2回目でのみ発動するパラグラフジャンプを組み込んでおくのです。
同じパラグラフを使い回す、双方向型のゲームブックや、ループものなどで用いられるテクニックです。

例:「諸王の冠」でZEDの魔法を使った後の展開がこれに当たります。詳細は伏せますが、魔法の効果をリアルに感じさせる、実に見事な技法だと思います。

諸王の冠―ソーサリー〈04〉 (Adventure game novel―ソーサリー)

諸王の冠―ソーサリー〈04〉 (Adventure game novel―ソーサリー)

 

 

(5)文章の集約
例えば、主人公が習得した魔法をどこでも使えるようなゲームブックを作りたい場合、その効果をいちいち個別のパラグラフで記述していては、膨大な容量が必要になります。また、いちいちすべての魔法をあらゆるパラグラフで選択肢に示すのも、あまりにも冗長といえます。
そこで、「回復の魔法を使うなら、そのときのパラグラフを記録しておいて、100へ進め」等と指示しておき、パラグラフ100には「回復の魔法を一つ消して、体力ポイントを4増やし、もといたパラグラフに戻れ。ただし、パラグラフXXではこの魔法は効果を発揮しない。パラグラフYYで魔法を使った場合は、ZZに進め」等と記載しておけば、魔法の処理を一つのパラグラフに集約することができます。

例:「悪夢のマンダラ郷」では、とある魔法を習得すると、いつでも使えるようになります。
もちろん、間違ったタイミングで使ったら、バッドエンドに直行です。いつ使うべきかを見極めるのが、また一つの謎になっています。

悪夢のマンダラ郷 悪夢シリーズ (幻想迷宮ゲームブック)

悪夢のマンダラ郷 悪夢シリーズ (幻想迷宮ゲームブック)

 

 

このように、パラグラフジャンプには様々な用途があります。
他方では、パラグラフジャンプには次のような欠点もあります。

 

(1)パラグラフジャンプのタイミングがわかりづらい
どのタイミングでパラグラフジャンプを行えば良いのかわかりづらいことがあります。
ついつい読み飛ばしてしまって、タイミングを逃してしまうこともあるでしょう。
もっとも、それを逆手にとって、注意深い読者だけにジャンプさせるよう仕向ける手法もあります。

例:「魔の罠の都」では、人混みの中に知り合いを見つけて助けてもらえるという展開がありますが、その際のパラグラフジャンプは、読者が積極的に気を配っていなければ、ついつい見逃してしまうようにできています。

魔の罠の都―ソーサリー〈02〉 (Adventure Game Novel)

魔の罠の都―ソーサリー〈02〉 (Adventure Game Novel)

 

 

(2)計算が面倒くさい
「そのときのパラグラフにXを足したパラグラフに進め」といった指示だと、読者はジャンプ先を決めるために暗算が必要になります。
Xが3とかならまだしも、67とかだと、結構面倒くさいです。

 

(3)電子書籍と相性が悪い
電子書籍によるゲームブックでは、選択肢をクリックすれば次のパラグラフに進める仕様になっていることが多く、紙の本より読みやすいのですが、「ぱらぱらめくり」ができないので、パラグラフジャンプで目的のパラグラフを探すのは、紙の本よりも時間がかかることがあります。
対策として、巻末にすべてのパラグラフへのダイレクトリンクを貼っている作品もありますが、それでもやっぱり、紙よりも面倒に感じます。
さらに、パラグラフジャンプを行うゲームシステムでは、読者がいくつかの数値を記録しておく必要があるため、筆記用具やメモアプリなどが必須になることが多いです。この点でも、紙と鉛筆を使う前提のゲームブックの方が、やりやすいといえます。

読者からすると、そんな面倒なことを強いるならはじめからコンピュータのアドベンチャーゲームにすれば良いのに、と思うかもしれませんね。

 

(4)バグが出やすい
これは作者側の都合ですが、パラグラフジャンプは通常の転移と違った処理をするので、バグチェックが大変です。
最近のゲームブック作成ツールでは、パラグラフをランダムに並べ替えてくれる機能がついているものが多いですが、パラグラフジャンプに関わるパラグラフをあらかじめ除外しておかないと、つながりがおかしくなってしまいます。
さらに言うと、本来つながらないはずのパラグラフが、偶然、一見つながっているように読めてしまうことがあり、読者の混乱を招くことがあります。こんな事態を確実に防ごうとすると、非常に入念な推敲を強いられます。

 

私は、個人的にはこれらのデメリットを重く見ているので、キンドル本でパラグラフジャンプを使うことには消極的だったりします。
ただ、現在構想中の作品では、いくつかの理由から、パラグラフジャンプを導入しようと思っています。


作風に合わせて、うまく活用したいものですね。

ネイキッドチェイサー

どうも、ちゃなです。

 

私のゲームブック第3弾にして、ネイキッドシリーズ三部作の完結編が、こちらの「ネイキッドチェイサー」です。 

ネイキッドチェイサー (ちゃなのゲームブック)

ネイキッドチェイサー (ちゃなのゲームブック)

 

 三部作と言っても、ストーリー的なつながりはあまり強くありません。そもそも、それぞれの主人公の女戦士が同一人物かどうかも、公式には明らかにしてませんからね。

 

本作では、主人公は異界の魔神アビスの復活をもくろむ邪教団と戦うため、単身敵地に乗り込むことになります。ウォリアーやサバイバーと比べるとオーソドックスなプロットですね。でもやっぱり裸で始まるのはお約束。

 

本作は100パラグラフ単方向で構成されています。特徴になるのは、アイテムの作りがファジーなこと。ルートによっては、好きな武器を選べたり、何万枚もの金貨が手に入ったりすることがあります。先の展開を予想して、何を持っていくかを選びましょう。欲張ると思わぬところで足をすくわれることがあります。

 

また、三部作の最終章にふさわしく、前作に登場したライバル達が手を貸してくれる展開もあります。一方、一筋縄ではいかない強敵も次々と登場しますよ。

 

本作のハッピーエンドは一つだけですが、そこに至る道筋、つまり魔神とどう決着をつけるかについては、三通りの解決があります。特にどれが真のエンディングと決まっているわけではありませんので、是非あなたなりのベストエンドを見つけてください。そのうち一つを見出すには、アイテム管理で一工夫が必要です。

ネイキッドサバイバー

どうも、ちゃなです。

 

こちらは「ネイキッドサバイバー」、ネイキッドシリーズ第2作になります。 

ネイキッドサバイバー (ちゃなのゲームブック)

ネイキッドサバイバー (ちゃなのゲームブック)

 

 

ネイキッドサバイバーでは、主人公の女戦士は何者かに不意をつかれ、地下室に捕らえられてしまいます。裸で手足を拘束された絶体絶命のピンチをどうくぐり抜けるのか、自分をこんな目に合わせた相手にどうやって復讐を果たすのかが、物語のテーマになります。

 

ネイキッドサバイバーは、100パラグラフの双方向作品です。つまり、一度行った場所にまた戻ってくることができる仕掛けになっています。ある情報をつかんでからとある人物に会いに行くと、ストーリーが展開するといったことが起こるのです。

 

双方向ゲームブックでは、何度も同じパラグラフを使い回す形になるので、一度倒した相手が復活したりといった不具合を避けるための仕組みが必要です。代表的なものとして、キーナンバーやフラグチェックを読者に記録させておくやり方があります。しかし本作では、パラグラフ数も少なく、また筆記用具なしでも遊べることを目指しているので、あまり複雑な仕組みを使いたくはありませんでした。そこで私は、「フラグワードシステム」を導入しました。

 

フラグワードシステムとは、物語の進行を示す情報を、単語の中に埋め込んでおく仕組みです。読者は、現在のフラグワードを憶えておかなければなりません。例えば「あし」とか「ながれぐも」といった簡単な単語を一つだけ記憶しておけば、そこに、主人公の装備品や、誰を助けたかといった情報が収納されているので、過去の世界に迷い込む心配はありません。

 

ネイキッドサバイバーは、前作と異なり、エンディングは一つだけです。しかし、黒幕にどうやって復讐を果たすのかの道筋は、何通りもあります。直接殺す以外にも、誰化の助けを得て打倒する方法もあります。

 

何種類もの方法の中で、今回の事件の真相が垣間見える解決策が一つだけあります。これが言わば真のエンディングと言えるでしょう。しかし、このルートに入るには、一筋縄ではいきません。

 

色々と書きましたが、短時間で気軽に遊べる作品です。バッドエンドは存在しないので、是非試行錯誤を繰り返し、色んな物語を体験してみてください。