どうも、ちゃなです。
今回は、ゲームブックの単方向と双方向について解説します。
ゲームブックには、大きく分けて、単方向作品と双方向作品があります。
この用語は、ある程度ゲームブックをやり慣れた人なら誰でも知っていることなのですが、あまり経験のない読者にとってはなじみのない言葉かもしれません。
単方向作品とは、物語の進行が一方通行で、進んだら同じパラグラフに戻って来られない構成のゲームブックを指します。
例えば、こんな感じです。
1 道が分かれている。右に進むなら2へ。左に進むなら3へ。
2 道は行き止まっている。残念だ。END
3 道は先に続いている。進み続けるなら4へ。
4 ゴールに着いた。おめでとう!
一方、双方向作品とは、同じパラグラフに行ったり来たりすることのできるゲームブックを指します。
例えば、こんな感じですね。
1 道が分かれている。右に進むなら2へ。左に進むなら3へ。
2 道は行き止まっている。戻るなら1へ。
3 道は先に続いている。進み続けるなら4へ。戻るなら1へ。
4 ゴールに着いた。おめでとう!
単方向作品と双方向作品では、ゲームブックとしての性質がかなり異なります。
1 単方向は時間を管理、双方向は空間を管理
迷宮やオープンフィールドなどを自由に動き回れる双方向作品は、言わばゲームブック内で空間を管理しているといえます。
「モンスター変貌」は迷宮内を行ったり来たりしながらアイテムを集め、強いモンスターを召喚しながら先に進む双方向作品です。
一方、双方向作品では、同じパラグラフを何度も使い回すことになるので、時間の管理が得意ではありません。進んだら戻ってこられない単方向作品の方が、時間の管理に向いています。
2 双方向の方がプレイ時間が長い
総パラグラフ数や文章の長さにもよりますが、一般的に双方向作品の方がプレイ時間が長めになります。これは、単方向作品は読み進めればいずれエンディングにたどり着くのに対し、双方向作品ではパラグラフ間を行ったり来たりしながらエンディングへの道のりを探さねばならないからです。
双方向の傑作とされる「魔界の滅亡」は、三部作のラストということもあり、非常に手強い作りをしています。主人公は20回に及ぶ塔の中をさまよい歩いて、目的地にたどり着かねばなりません。
3 単方向は結果重視、双方向は過程重視
前項で述べた通り、単方向作品は読み進めていれば誰でもいずれかのエンディングに到着します。したがって、単方向作品では複数のエンディング(そのほとんどはバッドエンド)を用意して、最良のエンディングへの選択肢を見つけ出すことを読者に求めることがほとんどです。言わば作者と読者の知恵比べのような構図になります。初プレイで真のエンディングにたどり着いたなら、誰でも快哉を叫ぶのではないでしょうか。
拙作「ネイキッドウォリアー」でも、初プレイで真のエンディングに到達するのはなかなか大変ですよ。
一方、双方向では同じところをぐるぐる歩き回っていつまで経っても物語が進まないということがしばしばあります。読者にとって大事なのは、この物語を進めていくという過程です。その終着点にはもちろんエンディングがあるのですが、エンディングにたどり着いたという結果そのものにはあまり意味がありません。パラグラフの海を泳ぐ過程にこそ面白さがあるのです。例えるならば、低難度のコンピュータRPGに似ているかもしれません。主人公を鍛え上げて強敵に挑み、クエストをクリアしていく過程が楽しいのであって、チートしてエンディングだけ見てしまっては興ざめです。
「ネバーランドのリンゴ」は1000パラグラフに及ぶ大作です。体感的にはドラクエ一本クリアするのと同じくらいのボリュームがあります。
このように考えると、単方向はどちらかというと結果重視、双方向は過程重視といえるのではないでしょうか。
4 単方向の方が制作が容易
作者の立場からすると、単方向作品の方が双方向よりも制作はずっと簡単です。双方向作品では、主人公が何度も同じパラグラフに戻ってくるので、各パラグラフに矛盾が出ないように気をつけねばなりません。フラグ管理をしっかりしないと、倒したはずの敵が復活したり、助けたはずの少女がまた捕らえられていたり、夜になったはずなのに朝だったりという問題が起こりうるのです。
このような矛盾を防ぐためには、キーナンバーやチェックリストを用いたフラグ管理を、読者に負担させる必要が出てきます。
拙作、「ネイキッドサバイバー」は100パラグラフ双方向の小品ですが、フラグワードという一つの単語ですべてのフラグを管理しています。
単方向でも、分岐の先で合流したパラグラフなどでは矛盾が生じないよう気をつけねばなりませんが、双方向に比べると管理は遙かに簡単です。
5 単方向の方がポピュラー
前項の理由からか、これまで刊行されたゲームブック作品の多くは単方向です。
世界で最も有名なゲームブック作家であるスティーブ・ジャクソン(英)氏とイアン・リビングストン氏は、私の知る限りでは、単方向作品しか執筆していません。
それもあって、英国では60作程度、日本でも30作以上刊行された「ファイティングファンタジー」シリーズの中で、双方向といえるのはわずかに数作品です。
海外の作家で双方向作品を主に書いているのは、スティーブ・ジャクソン(米)氏とJ・H・ブレナン氏ですね。
双方向作品は、フラグ管理が複雑でプレイ時間が長く、パラグラフ数も多くなりがちなことから、どちらかというとマニア向けと認識されているように思います。
日本では鈴木直人氏、林友彦氏、古川尚美氏といった第一人者がいずれも双方向作品を手がけているため、双方向の人気が高いように思います。
近年では、単方向作品ながら2周めのプレイが可能となっていたり、一見単方向に見えて実は時間のループなどのギミックにより双方向的な構成をしている、凝ったゲームブックも見受けられます。
また、単方向作品ではあるものの、途中に迷宮など行ったり戻ったりしながら道を探す双方向的なギミックを取り入れた作品も、しばしばあります。
単方向と双方向、あなたはどちらがお好みでしょうか?私はそれぞれの作風に合わせて、どちらも制作を続けていきたいと思っています。