ちゃなのゲームブック

ゲームブック作家「ちゃな」のブログです。Amazonキンドルで「デレクの選んだ魔法」等販売中!

悪夢の幽霊都市 レビュー&チャート

どうも、ちゃなです。

 

今回解説するのは、「悪夢の幽霊都市」。

初出は1986年ですが、最近キンドルで再版されました。

悪夢の幽霊都市 悪夢シリーズ (幻想迷宮ゲームブック)

悪夢の幽霊都市 悪夢シリーズ (幻想迷宮ゲームブック)

 

 

本作は鳥井架南子先生の「悪夢シリーズ」三部作の最終巻に当たります。

悪夢の妖怪村 悪夢シリーズ (幻想迷宮ゲームブック)

悪夢の妖怪村 悪夢シリーズ (幻想迷宮ゲームブック)

 

三部作と言ってもストーリー上のつながりはありません。いずれも単体で完結しています。主人公はいずれも「君」ですが、多分別々でしょう。妖怪村の主人公は怖いもの見たさに廃村に忍び込む好奇心旺盛な人物ですが、二作めの主人公は失恋したてのナイーブな少年です。

 

私は以前にも書きましたが、この二作目「悪夢のマンダラ郷」が一番好きですね。

悪夢のマンダラ郷 悪夢シリーズ (幻想迷宮ゲームブック)

悪夢のマンダラ郷 悪夢シリーズ (幻想迷宮ゲームブック)

 

 

さて、このシリーズは、主人公がふとしたことから不思議な世界に迷い込んでしまい、現世に戻る道を探すという物語になっています。いずれも300パラグラフと短めですが、デッドエンドが多く、またパラグラフジャンプを駆使しなければエンディングに辿り着けないため、難易度は高めになっています。

 

ゲーム開始時に「運命数」と「バイオリズム数」を決めるのが特徴です。運命数はランダムな1~9の数字で、バイオリズム数は運命数にその日の日付を足した数ということになっています。この二つの数字は、そこかしこで成功判定に用いられることになります。

したがって、運命数やプレイする日にちによって、行けるはずの道が通れなかったり、攻略ルートが微妙に変わってくるんですね。

その特徴が顕著なのが、今回紹介する「悪夢の幽霊都市」で、運命数によって3パターンの脱出路のうちどこを辿るべきかが変わってきます。

 

さて、この「悪夢シリーズ」。システムは同一ですが、舞台を包む雰囲気がそれぞれ異なっていて、どれも絶妙な味わいを出しています。

妖怪村はまさしくゲゲゲの鬼太郎の世界。怖い妖怪もいればとぼけた奴もいたりします。

マンダラ郷では、ありとあらゆる時代の怪物が登場します。原始人と決闘したり、仙人の弟子になったり、スフィンクスの謎かけに挑んだりと、破天荒な冒険が待っています。エンディングのカタルシスが一番大きいのもこの作品だと思います。

そして、幽霊都市は、一見普通の町並みですが、危険がいっぱいです。消灯したビルか地下鉄の駅に閉じ込められたような恐怖を味わえます。一番現実味があるのもこの作品で、本当に夢に出てきそうです。

 

「悪夢の幽霊都市」には、デッドエンドといえるパラグラフが全部で40以上あります。400パラグラフのファイティングファンタジーシリーズでもデッドエンドは十数箇所の作品が主ですから、これはべらぼうに多いといえます。

なお本作では、バッドエンドには三段階あり、「死」はスタート地点に戻されるだけで最もペナルティが軽いとされています。アイテムはすべて失いますが、道中に手に入れたヒント(パラグラフジャンプの方法も!)は持ち越せますので、完全なやり直しではありません。

次に、「永遠の罠」というのがいくつかあり、例えばエレベーターがいつまでも下り続けて出られない、という悲惨な目に遭います。これにはまってしまうと、お助けアイテムがなければゲーム終了です。そのお助けアイテムは序盤で手に入るのですが、入手できるかどうかは運次第。例えば、運命数が1の読者は、このアイテムを手に入れることはできません。

そして、幽霊都市に囚われてしまったり、異世界で生涯を終えることになる、言わば真のバッドエンドもたくさんあり、ここでは無条件でゲーム終了となっています。

 

さて、そんな凶悪な本作は、実は双方向になっています。主人公は地下鉄やバスを乗り継いで都市の中を行ったり来たりしながら脱出路を探すのです。確かに、その方が都市っぽいですよね。

 

以下にチャートをお示しします。

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こんな感じです。

黄色のパラグラフは完全なバッドエンド、赤いパラグラフは「永遠の罠」です。紫のパラグラフは「死」で、パラグラフ208に飛ばされるのですが、簡略化するためにその道筋は省いています。

 

本作は現在でもキンドルで入手可能なので、興を削がないようにチャートの細かい説明は省いておきます。我こそはという方は、是非挑戦してみてください。

 

ちなみに、今回チャートを作っていて改めて思ったのですが、やはりパラグラフジャンプの多い作品は紙の方が読みやすいですね。最初はPCに両手で打ち込むためにキンドル版を参照していました。しかし、パラグラフジャンプの飛び先を確認する作業は、紙の本の方がずっと速かったです。

さまよえる宇宙船 チャート解析 その2

前回の続きです。

「さまよえる宇宙船」がなぜ難しいかというと……

 

ここでいきなり、チャートの一番最後を見てみましょう。

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紫のパラグラフ216で、主人公は最後のワープを試みることになります。ここはパラグラフジャンプになっており、それまでの旅で時間座標と空間座標を見つけ出しておかないと、飛び先がわからない仕組みになっています。

正しい座標を計算式に当てはめれば、無事地球に帰れるのですが、見てわかる通り、間違った座標を入力してしまうとバッドエンドに直行です。

そしてこの、空間座標と時間座標の候補は、それぞれ3つずつあるのです。

したがって、考えられる組み合わせは9通り。そのうち正解は一つだけなのです。

(組み合わせの一つは同時入手が不可能なので飛び先が用意されていません。)

 

しかも、どの空間座標と時間座標が正しいかは、本文中のどこにも明らかにされていません。実際に飛んでみてバッドエンドに至って初めて、少なくともどちらかは間違いだったことがわかるのです。

 

これでは、正攻法で正解を見つけ出すためには、何度チャレンジを繰り返せばいいのか、見当もつきませんよね。

 

多くのゲームブックは、一回のチャレンジではクリアできないように難易度調整されています。しかし、バッドエンドになった場合、何がまずかったのかはおぼろげにわかるのが普通です。

例えば「バルサスの要塞」では、ヒドラで詰むことが多いですが、ヒドラに手も足も出なかった場合、「妖怪写し」が選択肢に出てくるので、この魔法を用意しておけば攻略できるかもしれない、ということが読者にはわかります。実際、妖怪写しを3つ持っていけば、ヒドラを打ち倒すチャンスが生まれます。あるいは、毛皮が選択肢に上がっているのを見て、次のプレイではバルサスの妻からなんとしても毛皮を盗もうと試みるかもしれません。このように試行錯誤を繰り返して、クリアに近づいていくのが、ゲームブック攻略の王道ともいえるやり方です。

 

しかし、この「さまよえる宇宙船」では、空間座標や時間座標を手に入れた際、それが本物か偽物かを区別する術はありません。(正解の文章には、なんとなくそれらしい雰囲気があるのですが、それも全文読み比べておぼろげに感じられる程度のものです)したがって、読者はとにかく最後の選択まで読み進めて、そしてバッドエンドに至ることで、可能性の一つをようやく潰すことができるに過ぎないのです。

 

正攻法で、つまり、選択肢を後戻りしたりチャートを解析したりせずに本書を攻略することがいかに難しいか、おわかりいただけたでしょうか?

 

私は個人的には、このような難しさは、あまり歓迎しません。初期のファイティングファンタジーシリーズには、こういった運否天賦の選択を迫る展開が、結構見受けられます。

 

さて、先にネタばらしをしてしまいました。それではチャートをはじめから順に見ていきましょう。

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さすがにこんな序盤で詰みが確定することはあまりありません。

しかし、最初の選択肢であるパラグラフ256で右舷にある不毛の星系を目指すと、いきなり燃料補給の必要に迫られます。ここでは、乗員を喪失したり、船にダメージを負ったりするリスクがあり、難易度が上がります。

 

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パラグラフ258で惑星にビーム着陸すると、いきなり座標を手に入れることができます。しかし、選択肢によって空間座標か時間座標のいずれかしか手に入らず、しかもどちらもハズレになっています。

燃料補給ルートからうまくすると、警備員を追加で手に入れられる可能性があります。とはいえ、所詮は警備員なので、あまり役には立ちませんが。

パラグラフ44からビーム着陸して異星人と接触すると、展開によっては彼らの弱点を知り、今後の展開が有利になります。さらにその先では、貴重な技術点を上げるアイテムが手に入ります。

 

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飢饉と疫病のある惑星では医務官が大活躍しますが、彼女を失うリスクもあります。残念ながら幾ら働いてもメリットはありません。

なお、パラグラフ83では、ブラックホールに侵入するための速度に関する情報が手に入りますが、この情報はダミーで、使い道がありません。

 

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パラグラフ126から小さな灰色の惑星に降り立つと、恐ろしい病原体を持ち帰ってしまいます。しかしこれを回避すると、真の空間座標を手に入れることができず、バッドエンドが確定します。なんとも意地の悪い構成です。

 

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複雑に分岐していますが、ここでの肝はパラグラフ232で入手できる空間座標です。当初目指していた赤い惑星には目もくれず、パラグラフ11で新たに見つけた小さな光点を目指さねばなりません。そこでイ・アベイルの時空間の研究に協力するか、無理矢理実験台にさせられる必要があるのです。迷路の出口に至れば正しい座標を教えてもらえますが、道を間違えるとバッドエンドです。

 

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パラグラフ109では灰色の惑星に降り立つルートがありますが、この惑星で最終的に手に入る座標は偽物です。ここは無視して飛び去るのが正解です。

 

いよいよ終盤です。

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パラグラフ320では車輪状の建造物ではなく、黒い惑星を目指します。しかしこの惑星そのものが目的ではありません。パラグラフ104から灰緑色の惑星にビーム着陸します。そしてテリアル人と遭遇するのですが、ここでは子供の方が偉いので、パラグラフ118で子供についていくことを選びます。するとラフという子供がサービスを提供してくれます。そこで体力点を全快してもらう誘惑に負けてはいけません。ラフこそが正しい時間座標を教えてくれる唯一の人物なのです。交換条件に船の技術を調べさせてあげても、リスクはありませんので、取引に応じましょう。

この最後のポイントを通るためには、途中の分岐ですべて正しい選択をしなければなりません。最大の難所といえます。

 ちなみにパラグラフ106では宇宙船を完全に修理することができますが、その備えが役に立つことはなく、バッドエンド確定です。本書では回復が意味を成さないんですね。

 

以上です。ファイティングファンタジーにしては少ないパラグラフ数にも拘わらず、非常に歯ごたえのある冒険でした。

本作では、道中、スタートレックを思わせるような奇抜なイベントが多数起こり、いかにもスペースオペラな展開ににやりとさせられます。しかし、地球に帰還するためには、そんな異星人との邂逅を楽しんでいる余裕はまったくないのが、何とも歯がゆいところです。

さまよえる宇宙船 チャート解析 その1

どうも、ちゃなです。

 

ゲームブックのチャート解析第3弾。今回は、スティーブ・ジャクソン氏の「さまよえる宇宙船」です。

 

初出は1983年。343パラグラフ単方向。日本語版は教養文庫から出たきりで絶版になっています。

iOSのアプリでもプレイ可能です。(多分。私は実は購入していません。)

 

Tin Man Games | Starship Traveller

 

舞台は遠い昔、遙か彼方の銀河系……ではなく、地球を飛び立った宇宙船がトラブルで別の宇宙にワープしてしまったという局面で始まります。主人公は宇宙船トラベラー号の船長。数多くの乗員を守り、銀河の星々を巡って、地球に帰るための手がかりを探さねばなりません。

 

本作は、ファイティングファンタジーシリーズの一作なのですが、色々と野心的な取り組みがなされています。

とりわけ目を惹くのはパーティプレイでしょうか。本作では主人公である船長以外に、科学官、医務官、技官、保安官、警備員2名が能力値を持ったキャラクターとして登場します。個々の惑星にビーム着陸する際に、あなたは誰を同行させるかを選ばねばなりません。医療知識が必要そうな局面なら医務官を連れて行くとか、好戦的な異星人がいると思ったら保安官に任せるといった、判断を迫られます。乗員は体力ポイントをすべて失うと殺されてしまいます。また人質になったり事故に巻き込まれたりして乗員を失うこともあり得ます。誰をどのように活用し、温存するか、あなたのリーダーシップが問われているのです。

 

また、本作では通常の白兵戦以外に、宇宙船同士の艦隊戦や、一撃必殺のフェーザー銃を用いた銃撃戦のルールもあり、戦闘ルールが微妙に異なっています。

 

システムが複雑な分、シナリオは比較的簡素にできています。宇宙を旅するうちに起こりえるイベントの中には、異星人との遭遇、未知のウイルス、転送機の事故といった、スペースオペラで定番の事件が盛りだくさんですが、個々のイベントにはそれほどの深みはなく、イベント同士のつながりも希薄です。また、アイテムの類はほとんど出てきません。

 

さて、この「さまよえる宇宙船」、実は非常に攻略難易度が高いです。

実は私は、未だに正攻法でクリアしたことがありません。今回チャートを作成して初めて攻略ルートが判明しました。

そのチャートがこちらです。

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例によってよくわかりませんが、基本的に一本道なのが見て取れるでしょうか?

この一本道のゲームブックがなぜ難しいのか、次回、詳しく解説していきたいと思います。

バルサスの要塞 チャート解析 その2

どうも、ちゃなです。

昨日に引き続き、ゲームブックバルサスの要塞」をチャートで見ていきましょう。

(以下、重度のネタバレを含みます)

 

まずは砦に入るまで。

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実はここで既に運命的な選択が待ち構えています。

灰色のパラグラフは、踏んだ瞬間クリア不可能になる、禁忌の選択肢になっています。

つまり、パラグラフ251、中庭の場面では、「どれかの集団に近づく」つまり住人に接触を持たねばなりません。どうしてかというと、パラグラフ235で手に入る「塗り薬のツボ」が、後半でガンジーをかわすために必須のアイテムになっているからです。

ちなみにパラグラフ235では、他にも銅の鍵と金貨、そして滅多に手に入らない、術のストックを増やしてくれる魔法薬まで手に入るという、大盤振る舞いになっています。

 

続いて、砦の中。

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砦の中ではいくつかのルートに分かれており、道筋によっては行程を大幅にショートカットしたり、逆に敵に捕まって牢獄行きになったりします。

必須なのは、昨日紹介した「黒の塔」に踏み居るための鍵番号を入手することです。

番号は図書館で手に入るため、図書館を通過してしまうとクリア不可能になります。

 

その図書館を通るチャートが下図になります。

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青く塗られたパラグラフ238を通ることがクリアの条件です。

図書館の代わりにカジノ部屋に行ってしまうと、幾ら金貨や魔法のアイテムを稼いでも、最後で詰まります。食料庫も同様です。

道中でガークを倒してブラシを入手しておくと、難易度がかなり下がりますが、必須ではありません。

 

砦の後半戦。

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レプラコーンのオシェイマスがパラグラフ210で登場します。人を食ったキャラですが、剣+1と銀の鏡が手に入るので、この出会いは実はかなり有用です。

その後、道順によっては黒エルフから「携帯用万能棒」を奪うことも可能です。この武器はシリーズの中でも人気が高く、非常に役に立ちます。

 

ここからはさらに凶悪な罠が待ち構えます。

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3つの宝箱を順に開けると、「蜘蛛男の瓶」が手に入ります。しかしこれは、選択肢には数多く出てくるもののまったく役に立たず、しかも敵に回ることもあるという完全なトラップアイテムなのでご用心。

 

砦の上層へ向かいます。

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ブラシを持っていれば、バルサス・ダイアの奥方から毛皮を入手するチャンスがあります。ただし運試しが必要です。

 

いよいよ終盤です。

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ミク、ガンジーヒドラと、難敵が連続で出てきます。

パラグラフ182で登場するガンジー。いきなり能力値にダメージを受けるうえに、こいつには武器も魔法もまったく効きません。やり過ごすには、序盤で入手した塗り薬のツボか、魔法のお守りが必要になります。ところが魔法のお守りを手に入れるルートでは錠番号がわからないので、後で詰むことになります。

続いてパラグラフ328のヒドラも、剣では倒せない相手です。確実に越えるには毛皮が必要です。妖怪写しを3回使うか、携帯用万能棒を使うことでも、足止めが可能ですが、いずれも運が絡みます。

 

最後の番号錠をパラグラフジャンプで抜けると、バルサスとご対面です。

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パラグラフ374で満を持して登場するバルサス・ダイヤ。前座の鉤爪獣もかなりの強敵です。

バルサスを倒す手段は二つ。魔法合戦の末に剣で打ち倒すか、弱点を突くかです。戦闘となった場合、彼は技術点12、体力点19と、ほとんどの主人公を上回る強さを持っています。指輪をすり取って弱体化させるか、武器戸棚から剣を入手しましょう。携帯用万能棒を使うと、最強の武器「太陽剣」が手に入るのですが、残念ながら使う間もなく殺されてしまいます。

 

一番最後に「浮遊」の術がないと、この広大な砦から歩いて脱出することになるのですが、その話はまた後で、ということになっています。

 

バルサスの要塞」を事前知識無しでプレイすると、大抵はガンジーヒドラ、あるいは番号錠で詰みます。それは多くの場合、序盤の選択肢を間違えたことが原因です。

 

ちなみに本作は、正しいルートを選べば、能力値が最低でもかなりの確率でクリアできます。(魔法を適切に使えば、戦う相手は技術点5点くらいですみます。毛皮を盗む時の運試しに成功できるかがカギになります。)必要な魔法は、「浮遊」2つ、「骨抜き」2つ、「防御」「千里眼」の6つくらいです。「体力増強」「開運」もあった方が良いでしょう。

 

では逆に、一つも魔法を使わずにクリアすることはできるでしょうか?

これも理論的には可能になっています。

ただしその場合、全力のバルサスと戦わねばならないので、技術点12、体力点20以上は欲しいです。道中ガンジーに技術点を下げられますので、オシェイマスから貰う剣+1があってやっと互角です。

 

最後に、パラグラフ258は調べた限りダミーパラグラフです。他にも細かいエラーがあることが発見されています。

それでも、本作は屈指の名作といえるものであり、私のお気に入りのゲームブックの一つです。

バルサスの要塞 チャート解析 その1

どうも、ちゃなです。

 

バルサスの要塞」というゲームブックをご存じでしょうか?

Citadel of Chaos (Fighting Fantasy)

Citadel of Chaos (Fighting Fantasy)

 

1983年に刊行された英国の巨匠スティーブ・ジャクソン氏の名作です。

 

邦版は1985年ですね。

今世紀になって新版も出ましたが、再び絶版になっています。

 

iPad版も出ています。

fightingfantasy.wikia.com

 

この作品、400パラグラフの単方向、システムはファイティングファンタジーでおなじみの技術点・体力点・運点をダイスで決まるというシンプルなものですが、「魔法」がテーマになっています。

主人公は、下記の12種類の中から魔法点の数だけピックアップして術を持ち込むことができます。どの術を何回使えるかはあらかじめ決めておかねばならず、ゲーム中に術が増える機会はほとんどありません。

 「妖怪写し」:敵のコピーを出して戦わせる。

 「千里眼」:敵の考えや壁の向こうを見抜く。

 「火炎」:炎で敵を攻撃する。

 「愚者の黄金」:偽物の財宝を作り出す。

 「目くらまし」:幻を作り出す。

 「浮遊」:空中に浮かぶことができる。

 「開運」:運点を回復する。

 「防御」:物理攻撃を遮断する盾を作る。

 「技術回復」:技術点を回復する。

 「体力増強」:体力点を回復する。

 「怪力」:自分の筋力を高める。

 「骨抜き」:敵を弱体化する。

 

この「魔法」を使いこなすことにより、主人公は困難な障害を乗り越えたり、強敵に打ち克ったりすることが可能になっています。

 

物語における最終目的は、主人公の故郷を滅ぼそうと計画している妖術師バルサス・ダイヤの拠点に潜入し、彼を討ち取ることです。

 

砦の中には当然、様々な妖怪が登場し、時に敵対し、時には主人公をからかったりしてきます。

 

さて、この砦内での戦いなのですが、主人公の正体が割れていないこともあり、あからさまな用心棒と戦闘になる場面はあまり多くありません。しかし、バルサス・ダイヤは趣味で凶悪なモンスターを放し飼いにしているのか、下手をするとバルサス本人より強そうな妖怪に遭遇することもままあります。

特に強力なのはガンジーヒドラで、両者に対してはほとんど魔法も効きませんし、武器で戦う選択肢すら与えてもらえません。道中で手に入れるアイテムをうまく使いこなして懐柔する必要があります。

 

さらに、バルサスの住む「黒い塔」の入口には強力な鍵が仕掛けられており、番号を知らないと絶対に開けることができないのです。

(ただ、この鍵が実は3桁の回転錠だったりとか、その番号が公共施設に書いてあったりとか、お茶目なところもありますが……)

 

幾多の困難をくぐり抜けてバルサスの居室に侵入すると、最終決戦が待っています。バルサスは主人公と同じく「妖怪写し」「目くらまし」「火炎」といった術を使いこなし、魔法の指輪で強化された剣術の腕前も超一流です。

 

とこんな冒険なのですが、今回はこの「バルサスの要塞」のフローチャートを解析してみました。

実はもうずいぶん前に、安田均氏がチャートを公開しています。

 

さて、チャートの全体像はこんな感じです。

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まあ、例によってこれじゃ何がなにやらですね。

ブロック毎に見ていきましょう。

 

次回に続きます。

キンドルとゲームブックとの相性

どうも、ちゃなです。

 

私のゲームブックは今のところアマゾンのキンドル専売です。

ネイキッドウォリアー (ちゃなのゲームブック)

ネイキッドウォリアー (ちゃなのゲームブック)

 

 

どうしてキンドルなのか。色々と理由はあります。

 

(1)アマゾンのキンドルデスクトップパブリシング(KDP)で簡便に自費出版できること

これが非常に大きいですねー。KDPは、始めてみるとめちゃめちゃ簡単です。

黎明期は免税手続きなどが結構面倒くさかったのですが、現在は日本円で売る分には大した苦労は要りません。

 

(2)アマゾンの市場規模が大きいこと

これも実に重要です。電子書籍を売る手段は他にも色々あるのですが、アマゾンの知名度とユーザー数は圧倒的です。この世界、小さなプラットフォームはいつつぶれるかわかりませんからね。大手出版社ならいざ知らず、私のような個人で出版するなら、プラットフォームは大手一つに絞るのが得策です。

 

(3)私自身がキンドルに慣れ親しんでいたこと

キンドルは実は、日本に正式上陸する前から、Amazon.com経由で購入することができたんです。当時はもちろん英語の本しか買えませんでしたし、米国外から購入すると2ドル余計にかかるのですが、それでも紙の洋書を日本で買うよりはずっと安かったので、学術書などを買うのにはちょっと便利でした。当時からネット回線は使い放題で、通信費は無料だったんですよ。電子ペーパーなので、ウェブブラウジングはほとんど不可能でしたけど。

 

(4)Kindle Unlimitedに対応していること

アマゾンは、Kindle Unlimitedという読み放題サービスを始めました。日本ではまだまだ「お試し版」的な雰囲気が強いですが、英米ではもう100万冊以上が対象になっています。

この読み放題サービス、もしあなたが会員だったらどんな本を読みますか?

私は「買いたい本が対象なら即クリック」「ジャケ買いはしないけど興味のある本をとりあえずクリック」の2パターンなんですよねー。つまり、ベストセラーはもちろんですが、ニッチで普通はお金出して買おうとしない本でも、読み放題サービスなら手に取ってもらえる可能性が高くなるんです。しかもアマゾンはシリーズものを次々に進めてくれます。有料だとシリーズ全部大人買いとはいかないでしょうが、無料ならまとめてダウンロードしてもらえる確率が高い?

ネイキッドサバイバー (ちゃなのゲームブック)

ネイキッドサバイバー (ちゃなのゲームブック)

 

なので、Kindle Unlimitedは、むしろゲームブックのようなニッチな作品と非常に相性が良いと私は思っています。

 

(5)ファイル内リンクを貼れること

これはキンドルに限ったことではありませんが、電子書籍の強みはやっぱり検索とリンクですよね。ゲームブックの中でも私が執筆しているようなクラシカルなスタイルの場合、ファイル内リンクは最大限の強みを発揮します。片手でも読み進められますからね。

 

そんなわけで、アマゾンのキンドルゲームブックを個人で出版するに当たっては最強のプラットフォームだと思っています。

ネイキッドチェイサー (ちゃなのゲームブック)

ネイキッドチェイサー (ちゃなのゲームブック)

 

 

逆に、キンドルの弱点としては次のようなものがあります。

 

(1)紙の書籍に比べると販売網が狭い

まあ、これは仕方のないところですね。米アマゾンでは紙の書籍よりキンドルの方が売り上げで上回ったとのことですが、日本ではまだまだ普及に時間がかかるでしょう。大手出版社から本を出せる力のある作家さんならば、やはりまず紙で出版したうえで、売り上げを見て電子書籍版も検討するというのが基本なのだろうと思います。

 

(2)一部のゲームブック電子書籍と相性が悪い

これは作風によるのですが、紙でないとうまく機能しないゲームブックも多々あります。

まず、サイコロや筆記具を必要とする作品だと、電子書籍の良さを十分に生かせません。昔ながらの冒険記録紙とサイコロ2つを用意するか、あるいは逆に専用アプリで提供する方が、プレイアビリティが高いです。

また、パラグラフジャンプも電子書籍とはあまり相性が良くありません。特にキンドル専用端末で読む場合、電子ペーパーはページ更新に時間がかかるので、次に読むパラグラフを探すのに、紙でぱらぱらめくるよりも時間がかかります。これは以前書いた通りです。

さらに、紙である特性を活かしたゲームブックもたくさんあります。脱出ゲームブックなんかが代表的ですね。映像化ならぬ電書化不可能な作品というものです。

人狼村からの脱出 狼を見つけないと、殺される (脱出ゲームブック)

人狼村からの脱出 狼を見つけないと、殺される (脱出ゲームブック)

 

 

(3)アマゾンの手数料をどう見るか

KDPの場合、著者の手取りは売り上げの35%または70%です。70%にするためには、値段などいくつかの要件をクリアする必要があります。

この手取りを印税と考えると、紙の本の場合はせいぜい10%ですから、KDPは非常にお得といえます。しかし、電子書籍に限って言えば、他のプラットフォームの方が手数料が安いところもあります。

それ以外にも、振込手数料や為替差益、米ドルで売る場合は税金など、いくつか検討すべき問題があります。

 

以上をまとめると、キンドルゲームブックを作るうえでも出版するうえでも、様々なメリットがあると思います。

KDPの使い方については他にたくさんの方が書いていますし、そのための教科書も多数出ています。ただし、規約が割としょっちゅう変わるので、情報が古くなっていないかどうかに気をつけて、調べてみることが必要です。

キンドルゲームブックを作るためのやり方については、いずれ当サイトでも解説していこうと思います。もっとも、私もまだまだ試行錯誤の最中ですが。。。

スーパーマリオブラザーズ外伝 チャート解析

どうも、ちゃなです。

 

ゲームブックは読者が分岐を選んで読み進めていくものです(いわゆるパズルブック的なものは別とします)。したがって、ほとんどのゲームブック作品では、各パラグラフのつながりをフローチャートにすることが可能です。

 

チャートはゲームブックのプログラムそのものであり、ゲームブック作家からすると、チャートを作成することは、ゲームブックそのものを執筆するための最も重要な行程です。

逆に読者としては、作品からチャートを作ることは、ゲームブックの構造を解析することにつながります。言わばゲームソフトをハッキングしてプログラムやアルゴリズムを分析するようなものです。

 

安田均先生の「ゲームブックの楽しみ方」は、スティーブ・ジャクソン氏とイアン・リビングストン氏の作品の魅力を存分に語った名著ですが、同書の最後にもいくつかの作品のチャートが掲載されています。

 

チャート解析は、ゲームブックに対する究極の愛情表現とも言えますが、一方で作品の寿命を縮める行為でもあります。出版されたばかりの作品のチャートを第三者が公開するのは、コンピュータゲームのチートコードを教えるような行為ですので、慎重にならねばなりません。

一方で、チャートを作成することによって、今まで見えづらかった作品の魅力が見えてくることもあります。中には、チャートを作らねば攻略自体が困難な難問ゲームブックもあります。

 

このブログでは、主に絶版や歴史的な名作ゲームブックについて、その魅力を掘り尽くす目的から、チャートを解析する試みも行いたいと思います。

 

ここで紹介するのは、「スーパーマリオブラザーズ外伝」。ファミコン作品のゲームブック化の黄金期に 出版された一作です。

スーパーマリオブラザーズ外伝 (アドベンチャーヒーローブックス)
 

 

本作の特徴は、全編がコミックになっていること。1ページが1パラグラフに相当します。

そのため総パラグラフ数は215と少なめになっています。

話が展開する場面では何ページか連続して読み進めるので、体感的には100パラグラフ程度に感じます。

 

トーリーは、クッパ亡き後、その息子ガルッパがキノコ王国を支配するべく陰謀を繰り広げるというもの。オリジナルキャラクターも多数登場します。実はマリオの活躍で不幸な目に遭っていた人がいたり、敵軍の中にも相容れない関係の者がいたりと、一見子供向きな体裁とは裏腹に、ハードでしっかりした物語性が魅力です。 

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システム面は、同シリーズではおなじみの方式を踏襲しています。開始時に、体力、戦闘力、魔力にパラメータを割り振ってマリオの能力を決め、戦闘はあらかじめ作成した乱数表によって解決されます。アイテムもキノコやフラワーをはじめとして十数種類も登場します。

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さて、チャートを見てみましょう。

 

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はい、見てみましょうと言っても、細かすぎてよくわかりませんね。。。

ただ、シンプルな一本道になっているのはおわかりいただけるかと思います。

 

黄色のパラグラフは、踏んでしまうと必ずバッドエンドになるルートです。

青は必須アイテムの手に入るパラグラフ。緑は時間経過パラグラフで、踏みすぎるとタイムオーバーになります。

 

本作では、終盤に4色の水晶がないとクリアできません。うち2つは必ず入手できますが、中盤で選択を間違えると、1つを手に入れそびれます。その選択肢が、逃げるか城兵に従うかという、判断の分かれそうな分岐なので、そこがちょっとだけ意地悪です。

また、本作は個々の戦闘で負けた場合パラメータにダメージを受けて続行というパターンが多いのですが、序盤で一カ所、負けると水晶を取り逃がすところがあります。ここに引っかかると最後で詰んでしまいます。

そして、終盤で強敵と戦う場面では、戦闘に負けると赤水晶が砕け散り、そのお陰でマリオは辛勝を得ます。しかし赤水晶は必須アイテムなので、結局最後にバッドエンドになります。しかしこれはこれで一度は踏んでおきたい印象深いシーンになっています。

 

本作は、3つのパラメータに数多くのアイテム、時間制限と、少々システムを詰め込みすぎて消化しきれていない感があります。選択肢によって展開が変わるところは多くなく、ゲーム性はあまり高いとは言えません。中盤の迷路だけが妙に複雑になっていて、ストレスフルに感じます。このように、チャートを見ることによって、本作の問題点が浮き彫りになります。

 

他方、本作は意外にも重厚なストーリー展開が魅力で、コミカルだけど結構頭もいいマリオをはじめ、敵役の黒騎士アーノルド卿やゴーゴンなど、味のあるキャラクターや名場面が満載です。これらを文章だけで表現したらかなりの容量になったはずで、コミックという表現形態に非常に良くマッチしていたといえます。その意味で、私のお気に入りの作品の一つです。

実際評判も良かったようで、続編も出ています。私は買いませんでしたが、本屋さんで夢中で立ち読みした記憶があります。