ちゃなのゲームブック

ゲームブック作家「ちゃな」のブログです。Amazonキンドルで「デレクの選んだ魔法」等販売中!

ゲームブックにおける主人公の設定

ゲームブックは、基本的に「二人称小説」です。

読者が主人公なので、地の文では、「君は……」という表現が始終出てきます。

作風によっては「君」ではなく「あなた」だったりします。英語ではほぼ100%、"you"ですね。

 

さて、この主人公にどんな人格を与えるか、それとも与えないかに、作品の特徴が大きく現れてきます。

主人公の扱いは、大きく3パターンに分けられます。

 

(1)無色透明の「君」

ファイティングファンタジーシリーズのほとんどは、主人公には何の人格も与えられていません。ストーリーの都合上、冒険者だったり盗賊だったり魔法使いの弟子だったりと、大まかな身分や能力は決まっているものの、容姿や性格、果ては年齢も性別も不明だったりします。

不明ということは、読者が自由に設定できることを意味します。あなたのお気に入りのキャラクターをゲームブックの世界で冒険させることができるのです。

近年復刊されたファイティングファンタジーシリーズでは、巻末に何人かのプレロールドキャラクター(能力値や出自の設定済みのキャラクター)が例示されています。

無色透明の「君」を用いるメリットは、読者の想像を損ねないことと、キャラ人気に左右されず幅広い読者を許容できることです。作者目線では、主人公の設定にはかなり気を遣うので、そこを読者に丸投げできるというのも実はお気楽だったりします。

 

しかし、気をつけなければならないのは、ゲームブックが有限の選択肢を提示している以上、完全に無色透明の「君」などいないということです。

例えば、敵に出会ったときの選択肢が「戦う」「逃げる」「呪文を唱える」「道具を使う」の4種類だったとします。この時点で、この主人公は敵を口車で懐柔したり、降参したふりをしたり、本当に降参して任務を放棄したりするような性格ではないということが規定されているのです。

「ソーサリー!」シリーズの主人公も無色透明な「君」で、実際iPadアプリ版では男女が選べます。しかし本編ではゴブリンをダシにした冗談をいうシーンや、魔法談義に花を咲かせるシーンがあり、コミュ能力に長けた人物像が浮かび上がってきます。

 

(2)想定される人格を有する「君」

主人公に名前こそ与えられていないものの、性別や容姿、性格がある程度決まっている作品もあります。

「悪夢のマンダラ郷」では、失恋したばかりの青年が主人公として想定されています。腰巻き一つの魔女ランダに誘惑されるシーンから察するに、そこそこイケメンなのではないでしょうか。

悪夢のマンダラ郷 悪夢シリーズ (幻想迷宮ゲームブック)

悪夢のマンダラ郷 悪夢シリーズ (幻想迷宮ゲームブック)

 

 

拙作「ネイキッドウォリアー」では、主人公は「名もなき女戦士」とされています。私自身、主人公の裏設定などは一切作っていません。しかし、全財産を投げ打って裸レースに出るわけですから、ギャンブル精神とさばけた性格の持ち主であることは確かでしょう。

ネイキッドウォリアー (ちゃなのゲームブック)

ネイキッドウォリアー (ちゃなのゲームブック)

 

 

こういった主人公の設定は、序盤で読者に明示される必要があります。さもないと読者は混乱し、「こんなの俺のXXじゃないー!」となります。自分が感情移入している主人公が行いそうな行動が選択肢に出てこないというのは、ゲームブックをプレイするうえで最もストレスフルな瞬間です。

 

(3)主人公が設定済み

はじめから主人公に名前と設定が与えられているゲームブックもあります。日本の作家の作品はこのパターンの方が多いかも知れません。

ドルアーガの塔」三部作の主人公は言うまでもなく王国の騎士ギルガメスです。「サイキックJK麻美 -灯油通り魔事件!」なんかは、帯に「主人公が「あなた」じゃない!」とまで書かれていて、主人公を二人から選ぶことができます。

 

この手の作品の場合、主人公のキャラがいかに魅力的かがとても重要です。同時に、主人公を定めた時点である程度想定読者を絞り込むことになります。

メリットとしては、作中に主人公の台詞を入れやすいことが挙げられます。作中人物同士の友情や論争を描くにのに、主人公が何も喋らないというのはやはり不自然です。しかし無色透明の「君」の場合、主人公に安易に喋らせると、読者の脳内世界が崩壊しかねません。特に日本語では、敬語や女性口調などで語尾変化が多様なので、”Yes"ひとつを喋らせるのも一苦労なのです。

 

ファイティングファンタジーの影響も大きいと思いますが、海外作品では無色透明の「君」が一般的です。対して、和製作品では主人公のキャラ設定にこだわった作品が人気を博する傾向があるように思います。日本ではドルアーガも含めてファミコン作品のゲームブック化が隆盛したという事情もあるでしょう。

 

ただ、この傾向はコンピュータRPGでも同じで、海外で人気の「The Elder Scroll」シリーズや「Bulder's Gate」シリーズでは主人公の種族も性別も自由に設定することできます。こうした作風のゲームは和製コンピュータRPGではあまり見当たりません。主人公を遊び手が自律的にキャラ付けするのを好む英米と、癖のある主人公になりきって遊ぶのが好きな日本、という傾向がおぼろげながら見て取れます。

 

皆さんは、無色透明の「君」を自分好みに脳内変換するのと、作者が精魂込めて作ったキャラを味わうのと、どちらがお好みですか?

 

「魔力の杖」チャート解析 その1

どうも、ちゃなです。

モーリス・サイモン氏の「魔法の王国」三部作、買っちゃいました。

以前2巻まで買ったものの完結編を読まないまま捨ててしまったので、ずっと心残りだったんですよねー。

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本作を一言で説明すると、AD&Dのシステムと世界観に準じた、大魔術師の息子カー・デリングの成長と冒険の物語です。

第1巻「魔力の杖」では、主人公はまだ少年で、本編で初めて魔術を習います。そして父が創設した神秘科学アカデミー内に隠された「ブーコッドの錫杖」を手に入れることになります。

第2巻「魔術師の宝冠」、第3巻「魔域の対決」では成長した主人公が大いなる悪と戦うことになるのですが、実はまだ攻略未了なので、またの機会に。

魔法の王国〈1〉魔力の杖 (富士見文庫―富士見ドラゴンブック)

魔法の王国〈1〉魔力の杖 (富士見文庫―富士見ドラゴンブック)

 

 

「魔力の杖」の魅力は、なんと言っても主人公が一つ一つ魔法を習得していく過程にあります。

例えば、「眠り」の呪文をかけるためには、相手に砂をかけて「しーっ!」と言わねばなりません。かけられた側は自分に客観的になることで術を回避することができます。

「魔法解読」を習得するためには、一人ずつ異なるコマンドワードを探り当てなければならないのですが、その探し方のアプローチがまた、成功判定の成否によって変わってきます。

このように、多くのファンタジーゲームでは省略されがちな魔法取得の描写がとてもリアルで、まるで読者自身が魔術の勉強をしているような気持ちにさせてくれるのです。

ハリー・ポッターよりも本作の方が遙かに先ですからね!

 

本作はそういった文学的な描写に力を割いていて、パラグラフ数に比べてとても文章量が多いです。

危険な町並みや荘厳なアカデミー、一癖あるキャラクター達も生き生きと描かれています。

 

その一方で、本作はゲームとしてみると、かなりこなれていない部分が目立ちます。

 

まず、主人公は冒険に先立ち、生命点と三種類の技術点を決めるのですが、このうち生命点はまったく意味を成していません。

生命点が減る箇所はいくつかありますが、全部引き当てても主人公が死ぬことはないのです。

おそらくシステムをシリーズで共通にしたためでしょう。しかし、魔術師である主人公は白兵戦など行いませんし、戦闘ルールも存在しないのです。「ソーサリー!」のように、魔法を使ううちにどんどん体力を削られるということもありません。

 

三種類の技術点は、「判断力」「機敏度」「沈着度」に計5点を振り分ける形式になっています。これらはたびたび成功判定に用いられるので、初期設定は非常に重要です。

ルール説明でも強調されているように、判断力が主人公にとって最も重要です。迷わず判断力に3点振っておくのが正解です。

この技術点の扱いにもちょっと問題があります。技術点は展開によって大きく上下するのですが、判定に失敗すると技術点を減らされることが多いのです。ただでさえ低い技術点がさらに減らされると、次の判定は一層難しくなってしまいます。特に判断力が減ってしまうパラグラフを踏むと、冒険はかなり厳しくなります。

 

そして、本作の最大の欠点は、実は魔法です。

本作では主人公は全部で16種類もの魔法を習得するチャンスがあります。もっとも、すべてを習得することはできません。どんなルートをたどっても覚えられる魔法は最大3種類です。

しかも、せっかく覚えた魔法を使う機会が、ほぼまったくないのです。

 

種明かししてしまうと、16種類の魔法の中で使用する機会があるのは、「皆殺し」「炎の手」「羽毛落下」「壁登り」「明かり」「眠り」の6種類だけです。他の10種類は一度も選択肢に出てきません。

しかもこのうち、有効活用したと言えるのは「羽毛落下」「壁登り」「眠り」だけなのです。これらはクリアに必須ではありませんが、用いるとデッドエンドを回避しやすくなります。

「皆殺し」と「炎の手」は、選ぶと即死します。「明かり」は使っても使わなくても展開は変わりません。

 

たった244パラグラフの作品で、しかも魔法を習得する過程に重きを置いた構成では、魔法を使う機会を増やすにも限界があるでしょう。しかし、せっかく苦労して(時には死を覚悟して)習得した魔法がほとんど使えないというのは、主人公にしても読者にしても、あまりにも口惜しいものがあります。

 

……少々手厳しい解説になりましたが、気を取り直してチャートを見てみましょう。

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黄色いパラグラフはデッドエンド、青いパラグラフは魔法を習得するシーン、そして赤いパラグラフが、魔法を使う場面です。

……ね?魔法の習得に比べて活用するシーンがあまりにも少ないんですよ。

 

さて、本作ではパラグラフ構成にひとつ大きな特徴があります。途中でルートが大きく2つに分かれているのが見えるでしょうか?

実は、パラグラフ159からの選択で物語の展開が大きく2通りに分かれるのです。ひとつは、ハーフエルフのゼインに師事して魔術を学ぶ展開、もう一つは、主人公の叔父ベルドンの治めるアカデミーに入学するパターンです。

 

つまり本作は、物語の最大のポイントである「魔法の習得」というプロセスを2パターン用意しているのです。このようにメインプロットが複数に分かれるゲームブック作品は多くありません。

ちなみにネタバレになりますが、ベルドンは主人公の父の敵です。アカデミーに入学するということは、疑惑の渦中にある叔父の本拠地で勉強することになり、主人公にとっては様々な危険を背負い込むことになります。その展開を反映して、ベルドンルートの方が攻略の難易度は高くなっています。

他方では、アカデミーでの授業や意地悪な初級者長アルノとの確執など、ベルドンルートの方が面白いイベントが目白押しです。アルノは次巻以降でも主人公の宿敵として立ちはだかるのですが、ゼインルートだとアルノに会うこともなくエンディングに到達してしまいます。明らかに、ベルドンルートの方が正規ルートだと言っていいでしょう。ゼインルートはイージーモードとでも言うべきでしょうか?

(追記:……と思ったら、続編「魔術師の宝冠」では、主人公はゼインから魔法を学んだことになっていました。)

 

次回はチャートをより細かく見ていきます。

「魔力の杖」チャート解析 その2

どうも、ちゃなです。

「魔法の王国」三部作の一巻目「魔力の杖」。チャートを細かく見ていきましょう。

 

序盤は小手調べですが、バッドエンドが結構あります。

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主人公の母が死に、カー・デリングは旅立ちを余儀なくされます。叔父ベルドンを頼ってフリートンに向かいます。パラグラフ102で主人公はハーフエルフのゼインと出会います。

 

次のパートはゼインに師事するかベルドンのもとに向かうかの大きな分かれ道です。

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ゼインと親交を深め、パラグラフ159で彼に師事することを選ぶと、ゼインルートに分岐します。ゼインを信用せず、ベルドンに会って話を聞こうとすると、右側のベルドンルートに入ることになります。

ベルドンルートでは必ずアカデミーに入学することになります。入学早々、上級生との小競り合いがあり、技術点を減らされる局面も出てきます。

 

ベルドンルートの続きを見てみましょう。

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ベルドンルートでは選択によって、「いたずら」、「弱い魔術」、「強い魔術」のいずれかのカテゴリーを学ぶことになります。

ばか正直に初級コースを希望すると「いたずら」を二つしか学べず、これらは物語ではまったく役に立ちません。ブーコッドの錫杖についてゼインから聞いたことを正直に話すと「弱い魔術」のコースに分岐します。「羽毛落下」と「壁登り」があるので最も有用性が高いですが、羽毛落下の習得判定に失敗すると即死します。ブーコッドの錫杖のことを黙っている場合、「強い魔術」を学ぶことができ、さらにいきなり父の私室への侵入にチャレンジする機会もあります。ただし、強い魔術はいずれも攻略にほとんど役立ちません。

 

魔術習得のフェーズが終わると、主人公は侵入者を発見します。ヒロインの吟遊詩人ダーリスです。彼女は本来は味方なのですが、「皆殺し」や「炎の手」で挑んだり、判定に失敗したりすると、弁解する間もなく即死します。ここでは「眠り」を使うのが唯一確実な方法です。

ダーリスとともに主人公は父の私室への侵入を試みます。判定に失敗すると壁から落ちて命を落とすことになりますが、「壁登り」や「羽毛落下」があれば、それぞれ判定のチャンスが増えます。なお、パラグラフ28の飛び先は判定成功で179、失敗で10となっていますが、これはエラッタで逆でしょうね。

 

魔術を学ぶ前に父の私室にベルドンとともに侵入しようとするルートもあるのですが、ここにもエラッタがあります。パラグラフ160で部屋を調べてみる選択肢の飛び先は241となっていますが、これはおそらく105の間違いです。うまく侵入して父の巻物を手に入れ、さらに判定に成功してベルドンを欺ければ、物語は一気に終盤に向かいます。

一カ所エラッタがあり、ベルドンの名前が主人公の父になっています。

 

一方こちらはゼインルートです。

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ゼインに自分の不信感を正直に告白した場合、「強い魔術」を教えてもらえます。隠した場合は「弱い魔術」になります。しかし実際に役に立つのは「弱い魔術」の方です。

いずれも3つの魔術の習得を試みるのですが、一つも判定に成功しなかった場合はバッドエンドになります。ベルドンルートに比べると習得失敗時のペナルティが厳しくなく、また「羽毛落下」は判定に失敗しても習得できます。

 

ゼインルート終盤です。 

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ゼインルートではなぜかここに難所があります。ブーコッドの錫杖を取り戻そうとするミッションに怖じ気づいたり、錫杖より父の魔術書を優先しようとしたりすると、ゼインに記憶を消されます。この人、本当に味方なのでしょうか?

 

ゼインルートの場合はダーリスとともにアカデミーに侵入します。ベルドンルートの場合は侵入してきたダーリスと合流します。ここで主人公があっさりダーリスの言うことを信じて寝返ってしまうのが、ちゃな的にはちょっと違和感でした。

 

チャートは次で最後です。

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主人公は父の私室から巻物を手に入れます。展開によっては一冊入手し損ねますが、何の問題もありません。ニセドラゴンのラファエルという頼りになる従者を手に入れます。

 

最後は、錫杖を守る「暗き者」とベルドンの挟み撃ちに遭います。緊迫の一瞬ですが、ゲーム的には既にエンディングが約束されています。

 

いかがだったでしょうか?

チャートだけ見てしまうとあまり面白みがなく、また山場である魔法習得の機会をいくつにも分離させているのは、パラグラフ的に勿体ないように思います。その一方で、おそらく正伝と思われるベルドンルートのほかに、比較的安全に魔術を学べるイージーモードとしてのゼインルートが用意されているというのは、なかなか面白い試みと言えます。

(追記:続編「魔術師の宝冠」によると、ゼインルートの方が正史になっていました。)

 

前回お伝えした通り、本編の妙は描写にありますので、もし機会があれば是非手にとって読んでみてください。主人公と一体となって魔法を次々と学んでいくような気持ちになれること請け合いです。

いま構想中のゲームブック

どうも、ちゃなです。

このエントリーは、個人的な備忘録みたいなものなので、まあそんな感じに読んでください。

 

現在、私は新作ゲームブックの執筆で大わらわです。5月連休前に出したかったのですが、さすがに無理でした。初夏の発刊を目指します。

他にも、アイデアはいくつも温めているんですよね-。

 

「骨太な作品」

タイトルは一応伏せておきますが、私がゲームブックとしていずれなんとかして完成させたいのがこれです。元ネタはテーブルトークRPG用のオリジナルシナリオです。舞台はファンタジー、キャッチフレーズは「世界破滅の危機を2時間で召し上がれ」。マルチPCシステムを実装予定で、主人公は50人!双方向で、1000パラグラフくらいになるかと思います。

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「オカルトもの」

こちらもTRPGから。昔「サウンドノベルツクール」でアドベンチャーゲームとして制作したこともあります。システムは「ナイトメアハンター」、シナリオは「女神転生」に近いです。そのままシナリオとして公刊するかもしれませんが、主人公が固定なので、どちらかというとソロプレイに向いているかな?500パラグラフくらいの単方向になると思います。

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「最後の推理」

推理ものです。出だしとオチだけが決まっています。シングルプロットでガチなテイストです。仕上げるにはもう少し構想力と文章力が必要かな。。。

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「メタもの」

100パラグラフのゲームブック2冊組みで、1冊は主人公が作者で、もう1冊のバグだらけの作品を修正しながらゴールを目指す、なんてのはどうでしょうか?

 

「戦隊もの」

主人公が5人のザッピングものも考えてますよー。問題は私がほとんど戦隊ものを観たことがないということ。勉強しなくちゃ。。。

 

倒叙もの」

ゲームブックって二人称小説ですから、語り手が読者に嘘をつくのはある意味禁じ手ではあります。でも、二重人格とか、記憶喪失とか、意図せずミスリードになってたとか、色々作れそうですよね。既にどなたかが制作されてるかもしれません。「展覧会の絵」がイメージ的には近いかな。一発ネタなので100パラグラフでも良さそうです。

展覧会の絵 (アドベンチャーゲームノベル)

展覧会の絵 (アドベンチャーゲームノベル)

 

 

「マルチプロット、マルチエンディング」

箱庭的な舞台を作って、自由に遊んでもらうのも良いですね。複数主人公にして、それぞれの思惑が交錯するオムニバス作品も作ってみたいです。分冊にしても良いかも知れません。「サソリ沼の迷路」とか、「ゴーレムナイトと巨人戦争」みたいな雰囲気になるかな?

ゲームブック ゴーレムナイトと巨人戦争 FT書房

ゲームブック ゴーレムナイトと巨人戦争 FT書房

 

 

あと、今の作品を仕上げたら、次はちょっと企画ものっぽい小粒の作品を作ってみたいと思っています。

 

やらなきゃいけない作業に追われているときって、やらなくても良い作業がどんどんはかどりますよねー。

今回は雑記帳でした。ではまた。

「人狼村からの脱出」DVDとゲームブック

どうも、ちゃなです。

今日は、リアル脱出ゲーム「人狼村からの脱出」イベントに参加してきました。

実は、リアル脱出ゲームへの参加は初めてです(出不精なので……)

 

人狼村からの脱出」は、いわゆる人狼ゲームを元ネタにしたリアル脱出ゲームです。初回公演はかれこれ10年くらい前になると思いますが、今でもリバイバル公演が行われている人気作品です。

本作は、DVD版が発売されています。今回のイベントはこのDVDを使って行われました。

 

会場では、ゲームを制作したスクラップの方がファシリテーターを務められ、ゲームを盛り上げてくださいました。

www.scrapmagazine.com

 

プレイヤーは数人でチームを組んで、様々なナゾトキにチャレンジします。16人の謎めいた村人たちの中から、3匹の人狼を探し当てなければなりません。解いた謎に基づくキーワードを集めていくうちに、人狼の正体と脱出の方法がわかる仕掛けになっています。

 

人狼村からの脱出」DVD版の特徴は、このDVDさえ流しておけば、ゲームマスター無しで楽しめることです。ネタバレしていないお友達同士でまる1時間、がっつりチャレンジすることができます。

また、DVD版の謎は、回答編にすべての正解が収録されています。これは、この手の作品にしてはちょっと珍しい仕様といえます。おそらく、本作をイベントで使用する時などで主催者がトラブルに対応できるようにするための心配りでしょう。

 

ナゾトキの難易度はそれほどでもないのですが、とにかく時間制限がきついです。DVDの上映中に次々とヒントが出てくるので、謎を解く係、ヒントを捕まえる係、人狼をあぶり出す係、そして連絡調整やヘルパー役と、役割分担がとても重要です。

 

幸い、私のチームのメンバーは皆さん強者揃いで、特に相談もせず片っ端から謎を解いていき、ついに無事脱出することができました!

私は、ひとつふたつのナゾトキを手伝ったくらいで、ほとんど何もしなかったです。。。

詳しくは書けませんが、最終問題から脱出に至るまでの過程は非常に芸術的でした!

 

ところで、「人狼村からの脱出」には、ゲームブック版というものもあります。

人狼村からの脱出 狼を見つけないと、殺される (脱出ゲームブック)

人狼村からの脱出 狼を見つけないと、殺される (脱出ゲームブック)

 

こちらは、ゲームブックの体裁を取っていますが、中には様々な謎が詰まっていて、プレーヤーは幾多の謎を解きながら人狼村の秘密に迫っていくという体裁になっています。

DVD版とはストーリーラインこそ同じですが、まったく別物ですので、どちらも新鮮な気持ちでプレイすることができます。

 

それではどちらが面白いかというと、完成度という点ではゲームブック版の方が遙かに上です。

謎の種類も豊富ですし、ストーリーも凝っていて、次々と村人が殺されていく緊迫感にぞくぞくさせられます。ゲームブックですので、選択を誤ってデッドエンドに至ることもあります。そして、終盤からラストにかけてのナゾトキの美しさは、スクラップさんの真骨頂と言えるものです。

DVD版の方は時間制限とパーティプレイという要素をわいわいがやがや楽しむのに対し、ゲームブック版は一人でじっくり時間をかけて攻略するためのものです。

私は3日ほどでエンディングに辿り着きました。正味15時間くらいでしょうか?公式サイトのヒントにかなり頼りましたけど。。。

ゲームブックにおけるデッドエンドについて

どうも、ちゃなです。

 

ゲームブックというのは、読者が主人公になって、自分で次の行動を決めながら読み進めていく物語です。

当然、選択を間違えて意に沿わない結果に終わることもあります。

そのとき、あなただったらどうしますか?

 

私は、こっそり前のパラグラフに戻って、やり直しちゃいます(笑

 

前回まで連載していた、ゲームブック実況中継でも、唐突なデッドエンドでは、見なかったことにして、別の選択肢を選んでしまうことがありました。

まあ、ズルをしてるわけですけど、これって結構みんなやってることなんじゃないかなあ、と思うわけです。

(意地でも選び直さない、必ずキャラクターメイクからやり直す、と言っている人もいます。本気でゲームブックを愛してくださっている方なのでしょう。

とはいえ、楽しみ方は読者それぞれです。私なんか、選択肢なんか無視してパラグラフ1から順に最後まで通して読むのが結構好きですしね。。。)

 

それでは、選択を誤ったことによるデッドエンド、いわゆる「即詰み」を、どのように用いるのが良いのか、考えてみます。

 

ゲームブックが選択によるドキドキをもたらすものである以上、スパイスとしてのデッドエンドは、ゲームを通じてある程度必要かな、と私は思います。

 

特に序盤では、無鉄砲な選択肢を選ぶとすぐデッドエンドになってしまうようにしておくと、読者に対して「この物語はガチですよ」という警告というかメッセージを送ることになります。

一方で、真面目な読者からすると、終盤で理不尽なデッドエンドにぶつかると、ちょっとむかついてしまうかもしれませんよね。

なので、こういうデッドエンドは、序盤ほど数を多めにするのがひとつのセオリーになるのではないかと思います。

 

次に、ゲームブックのテイストによって、デッドエンドの質や量は変わってきます。

ナンセンスな死に様を楽しむような作風であれば、デッドエンドだらけでも笑って許されるでしょう。むしろいかに変わった死に際をみせるか、作者の表現力が試されるものがあります。

他方で、推理ものなど、読者と作者の知恵比べの要素が強い作品では、唐突なデッドエンドは興を削ぐものがあります。

 

私の作品だと、「ネイキッドウォリアー」なんかは、マルチエンディングで複数回プレイを前提としているので、がんがんデッドエンドを入れています。

ネイキッドウォリアー (ちゃなのゲームブック)

ネイキッドウォリアー (ちゃなのゲームブック)

 

 

一方、「ネイキッドチェイサー」の方は、同じ100パラグラフでも、前半は館の探索、後半は敵地への侵入と、プロットが長く、また後半は主人公が十分に準備して冒険に挑んでいる前提なので、安易なデッドエンドは避けています。バッドエンドにおいては詰まるべくして詰まるようになっています。

ネイキッドチェイサー (ちゃなのゲームブック)

ネイキッドチェイサー (ちゃなのゲームブック)

 

 

主人公がパラグラフ間を行ったり来たりできる双方向作品では、原則としてデッドエンドを入れるべきではありません。コンピュータRPGで、主人公がある程度成長したのに、デッドエンドになって最初からやり直しになってしまったら、納得いかないでしょう?

そんなわけで拙著「ネイキッドサバイバー」は、いわゆるバッドエンドを廃しています。

ネイキッドサバイバー (ちゃなのゲームブック)

ネイキッドサバイバー (ちゃなのゲームブック)

 

 

以前、ゲームブックの難易度について、バッドエンドの数に触れたことがあります。当然、バッドエンドが多いほどクリアが難しいことになるのですが、実は誤選択によるデッドエンドは、体感的な難易度にはあまり影響しません。多くの読者は単に選択肢を選び直すので、してやられた感はあっても、悩まされた感は出ないんですよね。

他方で、アイテム不足による詰みの場合は、ちょっと前からやり直すだけでは解決しませんので、難易度はぐっと上がります。

目に見えないデッドエンドが多いほど、攻略は難しくなるのです。

 

あ、上記の例外として、「最終選択」としてのデッドエンドもありますね。

最後に二択又は三択を迫り、正解すればエンディング、間違えたらバッドエンドという展開です。

言わばラスボス的な緊張感を味わわせるためのものです。

リビングストン氏の「盗賊都市」なんかが印象に残っています。ザンバー・ボーンを倒した後、とどめを刺すためにどのアイテムを組み合わせるかを選ばされるのです。ノーヒントなので、ちょっとアンフェアな感じがしますけどね。。。

City of Thieves (Fighting Fantasy)

City of Thieves (Fighting Fantasy)

 

 

まとめると、私の考え方は次のようになります。

(1)デッドエンドは難易度を上げる仕組みというよりスパイスとして考える

(2)デッドエンドを楽しめる作風か否かを考える

(3)デッドエンドは序盤に多く、終盤に少なくする

(4)双方向作品では、安易なデッドエンドは控える

(5)最終選択としてのデッドエンドもあり?

 

以上、ゲームブックにおけるデッドエンドの考え方でした。

「ドラゴンの目」実況中継 その10(終)

どうも、ちゃなです。

長かった「ドラゴンの目」探索の旅もいよいよラストです。

 

怒りにまかせてシャークルに襲いかかったハンナ。ダンジョンで何度も死ぬほどの目に遭ってきた彼女にとって、こんな卑怯で回りくどい手を使うようなシャークルなど、もはや敵ではありませんでした。一太刀浴びせると、シャークルは真っ赤に染まった自分の胸元を見て震え出しました。

 

ハンナはリトルビッグの元に駆け寄ります。まだ、息がある!わらをもつかむ思いでシャークルの荷物を漁ったハンナは、そこに一瓶の治療薬を見い出しました。おそらくこれが、ハンナが飲まされた遅効毒への解毒剤でしょう。

「お願いだ、そいつを俺に飲ませてくれ!」

シャークルの恥知らずな言葉を尻目に、ハンナはリトルビッグの傍らにしゃがみ込みました。

「それは、お前さんのものだろう……」

リトルビッグがか細い声を振り絞ります。しかし、そのスプーン1杯ほども残っていない治療薬を誰が飲むべきか、ハンナに迷いはありませんでした。彼女はリトルビッグの口をこじ開け、液体を流し込みました。

 

リトルビッグの頬に少しずつ赤みが差してきました。起き上がった彼は、しばしばつが悪そうにうつむいています。

「シャークルは……逝ったようだな」

そこでリトルビッグは我に返り、力強く言い放ちます。

「こうしておれん。お前をストーンブリッジに連れて行こう。俺の村には強力な治療者がいる。なんとしてもお前を死なせるものか!」

 

2日後、ストーンブリッジはGillibran王の誕生祝いで賑わっていました。宴席には偉大なる魔術師ヤズトロモの姿も見えます。リトルビッグはヤズトロモにすべてを報告し、助けを求めました。

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「ほう、毒に犯されたとな?」

ヤズトロモはハンナをしげしげと眺めて、ゆっくりと言いました。

「遅効性の毒と言ったな。もしそれが本当ならお主はもはや瀕死のはず。間違いない、お主は毒など飲んでおらんよ。シャークルはお主に一杯食わせたのだ」

あなたとリトルビッグはぽかんと口を開けてしまいました。

「忘れるがいい。嫌なことはすべて忘れて、楽しもうぞ」

その通り。良き友と、計り知れない価値のある黄金のドラゴン像を得て、誰が楽しまずにいられましょうか。ハンナは心ゆくまで宴を味わうことにしました。新たなる旅立ちまで、つかの間の休息とともに……。

 

はい、お付き合いいただき有り難うございました。

終わってみれば、スタンダードなハックアンドスラッシュでしたね。とにかく敵が強い!しかし、「真の道」を通れば、主人公の技術点もどんどん上がっていきます。もとの能力値が高ければ、ドラゴンスレイヤーも夢ではありません。

必須アイテムは穴穿つスクロールくらいで、難易度という点ではさほどでもありません。リトルビッグは本当にいい奴でしたねー。ただ、使いどころのないアイテムが多いのはなんともはや。。。

 

ところで、ヘンリーが最初に行っていた「双頭のトロール」は実在します。ハンナはたまたま出会いませんでしたが。それに、サイクロプスメデューサなんかも出ます。あと、おへそを出したお姉さんもね。

プレイしているうちに、だいたいフローチャートが想像ついてしまいましたが、時間があればまた解析してみたいと思います。

久々のファイティングファンタジー、堪能しました。

本作は気のせいか、英語がかなり読みやすいです。iPad版Sorcery!なんかにくらべると、非常に平易に感じました。文章量も多くないので、楽しみながら英語の勉強するにも良いかもしれません。

蛇足ですが、本作は全407パラグラフですが、グッドエンドは400パラグラフにあります。7パラグラフ分くらい圧縮できそうでしたけどね。。