ちゃなのゲームブック

ゲームブック作家「ちゃな」のブログです。Amazonキンドルで「デレクの選んだ魔法」等販売中!

ソーサリアンTEXTに投稿しました その2

どうも、ちゃなです。

 

ソーサリアンTEXTに投稿した拙作「災厄の夜 -テンペスト・ナイト-」が公開されました!

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ソーサリアンTEXTは、ブラウザベースのゲームブックという形態で日本ファルコムの名作コンピュータRPGソーサリアン」を楽しもうという企画です。

chanagame.hateblo.jp

 

今回、一般投稿を受け付けていたので、ちゃなも参加してみました。

666年に一度襲い来るという「災厄」を打ち倒すため、主人公が奔走する話です。

 

何回かプレイしていただけるとわかりますが、本作のフローチャートは極めて単純です。

内部的には全125パラグラフですが、フラグ管理をサボって同じ描写を複数のパラグラフにペーストしているので、実質的には80パラグラフ程度の短い作品になっています。熟読しても10分程度でラスボスにたどり着くと思います。

主人公は冒頭で王様から謎の武器「アームロッド」を授かります。これをどのように強化するかが冒険のポイントです。

ラスボスは「数多の災厄」という名に恥じぬ強敵です。いわゆる「真の道」を辿れば難なく勝てますが、それ以外のルートでは能力値とダイス目次第です。どのルートでも勝ち目はありますが、ちゃなはテストプレイで10回くらい死にました。

 

このシナリオ、二次創作ということでファンサービス色が非常に強いものになっています。

具体的には、ソーサリアンの基本シナリオ15本すべての舞台、作中人物、若しくはアイテムが登場します。各シーンが一シナリオに対応しているといっても良いかもしれません。

ペンタウァの街の人も全員登場します。

(原作の数十年後の世界という設定なのにみんな歳を取っていないのはご愛敬。。原作でも、主人公が何世代交代しても王様は若々しかったですしね。。。)

原作では憎らしかったあの人が意外に頼りになったり、原作で変態だった人はやっぱり変わり者だったり、原作での強敵な相手が既に死んでいたりと、懐かしさがこみ上げてくるのではないでしょうか。

 

さらに、本作はソーサリアン最大の特徴である「魔法」を強く打ち出しています。

 

原作ソーサリアンでは、七つの惑星(火星、水星、木星、太陽、月、金星、土星)の力を順に武具に込めることにより、その組み合わせで合計120種類の魔法を使うことができます。

(太陽と月は惑星じゃないじゃん!というツッコミはご勘弁。。。)

当時、コンピュータRPGはおろかどんなゲームを見回しても「120種類の魔法」なんて類を見なかったので、当時度肝を抜かれたのをよく憶えています。

この「魔法の作り方」が一筋縄ではいかず、星を掛ける順番を間違えると消滅してしまったりして、どうやったら強い魔法が入手できるのかが攻略の要となっていました。

 

本作では、その作業を再現し、ストーリーとリンクさせる試みをしています。

全部で32種類の魔法をカバーしています。それぞれの効果や演出も、原作の雰囲気を再現したものと自負しています。

原作をプレイした方はすぐにぴんとくると思いますので、どうぞ試してみてください。

 

テーマやラスボスの造型などについては、原作ファンならおなじみのこちらの本を大いに参考にしました。

ALL ABOUT SORCERIAN―ソーサリアンのすべて

ALL ABOUT SORCERIAN―ソーサリアンのすべて

 

本書はものすごく充実した解説書ですが、こちらのサイトにもとても詳しい情報が載っています。七惑星による魔法の組み合わせのシミュレーターには大変お世話になりました。

SORCERIAN Data Room - ソーサリアン情報室

 

原作ソーサリアンを知らない人には、本編は普通のゲームブックとしてお楽しみいただけます。

いろんな展開があって、基本的にラスボスまでは苦もなく到達できるので、あまり悩まずにお読みいただければと思います。システム上、戦闘をすっ飛ばしてエンディングに到達することも可能ですので。。

 

あ、あと本作のメインBGMはちゃなのオリジナルです。音源は懐かしのPC8801です。昔カセットテープに録音したものをMP3変換したので、ちょっと聴き辛いですけど。。。

 

本作はちょっとした思いつきと勢いだけで執筆してしまったものですが、ソーサリアンTEXTのチームの皆様には大変お世話になりました。執筆中に何度も励ましやアドバイスをいただき、投稿後はプロ編集者顔負けの校正までしていただきました。本当に有り難うございました。

ソーサリアンTEXTに投稿しました その1

どうも、ちゃなです。

 

ソーサリアン」ってご存じですか?

日本ファルコムさんが1987年に発売した、コンピュータロールプレイングゲームです。

ソーサリアン - Wikipedia

 

戦士やエルフなどのキャラクターを選んでパーティを組んで冒険に出発する、というところまではオーソドックスな作りですが、本作の特徴はその名も「ソーサリアンシステム」。キャラクターや魔法、操作性など基本部分のシステムが根幹にあって、プレイヤーは個別に独立した多数のシナリオから自由に選んで攻略する形式になっているのです。

基本システム部分も、4種類の種族、60種類の職業、寿命と世代交代の概念、7つの星の組み合わせによる120種類の魔法、と、荒削りながら重厚な仕組みに仕上がっています。

基本パッケージには15本のシナリオが入っていました。日本ファルコムからは追加シナリオ集が発売され、さらに当時一部で人気を博したソフトベンダー「タケル」を通じて、公募によるシナリオコンテストの優秀作品なども販売されました。

 

原作はPC-8801シリーズですが、後にPC-9801メガドライブなどにも移植されました。グラフィックを強化したリメイク版がWINDOWSでも発売されています。

ソーサリアン・オリジナル (スリムパッケージ版)

ソーサリアン・オリジナル (スリムパッケージ版)

 

 

原作のすべてのシナリオをエミュレーターで楽しめる収録した復刻版もあります。(現在はプレミアがついているようです。ちなみに、ちゃなの環境ではWINDOWS XPでしか動きませんでした。) 

 

ゲームバランスは荒削りなものの、この「基本システム」+「別売りシナリオ」という販売形態はテーブルトークロールプレイングゲームトレーディングカードゲームなどにも通じるところがあり、当時としては大変先進的だったと思います。

グラフィックも綺麗で、BGMにも耳に残る名曲が多く、アレンジバージョンなど数多くのCDが販売されています。今でもAmazon Primeで聴くことができるものもありますよ。

パーフェクト・コレクション ソーサリアン

パーフェクト・コレクション ソーサリアン

 

 

さて、そんな昨年で30周年を迎えた「ソーサリアン」ですが、復刻やリメイクを望むファンの声も多いようです。

近年での展開としては、ソーサリアンオンラインやiOS版などもプロジェクトがあったのですが、いずれも現在はサービス終了しています。

 

このまま歴史の片隅に沈むのは勿体ない!ということで、次世代のソーサリアンを構想するプロジェクトが、「ソーサリアンNEXT」です。

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上のサイトを見ると、往年のファンとしては狂喜乱舞してしまうのですが、実はこれ、もとはエイプリルフールネタです。日本ファルコムさんは「ザナドゥNEXT」は発売したものの、残念ながらソーサリアンNEXTを開発中という話は聞きません。

 

とはいえ、2013年4月1日に初公開されたこのサイトはその後もどんどん更新され、今では立派な企画書の様相を呈しています。権利関係と資金の問題がクリアできれば実現も夢ではないという気持ちにさせてくれます。

 

そしてソーサリアン発売30周年である昨年、「ソーサリアンNEXT」のスピンオフ企画として「ソーサリアンTEXT」が発表されました。

 

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長かったですが、ここからが本題です。。

 

ソーサリアンTEXTとは、ソーサリアン風の世界観でブラウザベースで楽しめるゲームブックのシステムです。プレイヤーは自動生成されるキャラクターを操って、選択肢を選びながら物語を読み進めていきます。ハッピーエンドにたどり着けば勝利です。戦闘や魔法のシステムも実装されています。

現在、数本のシナリオが公開されています。

 

ここで面白いのが、フラグ処理は自動化されているものの、パラメータの管理はプレイヤー任せであること。すなわち、いわゆる「無敵モード」、戦闘や運試しをすっ飛ばして読み進めることが可能なんですね。もちろん真面目に戦って死んだら最初から、というストイックなプレイスタイルを好む人もいるでしょう。

このアバウトな仕組みによって、開発者は実験的なシステムをテキストだけで提案することができ、プレイヤーは好みや時間的余裕に合わせて柔軟に楽しめるというメリットが生まれています。完成度を下げることで敷居を下げているんですね。

 

そしてなんと、ソーサリアンTEXTではシナリオの一般投稿を受け付けています!

作成にはXMLの知識が必要ですが、ベースはゲームブックなので、さほど難解ではありません。

この企画、参入しない手はない!

 

というわけで、ソーサリアンTEXTに短いシナリオを投稿してみました。

 

無事に公開されたら、次のエントリで紹介したいと思います。

フラグワードシステムについて

どうも、ちゃなです。

「フラグワードシステム」この言葉を聞いたことがある方、有り難うございます!だって、私が作った用語ですから。

(以下、「デレクの選んだ魔法」ほか、拙著の内容がちょこっとだけ出てきます)

 

フラグワードシステムは、「ネイキッドサバイバー」で初登場し、「デレクの選んだ魔法」でも採用した、フラグ管理のためのシステムです。

ネイキッドサバイバーの裏話エントリでも簡単にご説明しましたが、これは一言で言うと、「ドラクエ復活の呪文に言葉としての意味を持たせたもの」です。

ネイキッドサバイバー (ちゃなのゲームブック)

ネイキッドサバイバー (ちゃなのゲームブック)

 

 

そもそもフラグとは、「強制的な分岐のトリガー」を意味します。

ゲームブックでは、パラグラフ分岐が複雑になると、同じパラグラフを複数の展開で使い回したり、主人公の過去に取った行動が未来に影響を及ぼしたりするようになります。そのため、同じパラグラフであっても、それまでの経緯によって次の飛び先を強制的に分岐させる必要が出てきます。

フラグを立てるためによく使われるのが、アイテム(所持品)です。

拙著「ネイキッドチェイサー」では、何色の指輪を嵌めているかが、同行者の有無を示すフラグになっていました。

ネイキッドチェイサー (ちゃなのゲームブック)

ネイキッドチェイサー (ちゃなのゲームブック)

 

 

アイテム以外でフラグ管理を行おうとすると、もう少し抽象的な仕組みが必要になってきます。

キーナンバーとか、チェックリストを読者に管理してもらう方法がスタンダードです。

1000パラグラフ双方向の大作「ネバーランドのリンゴ」では、キーナンバーが32個も用意されています。

ネバーランドのリンゴ (スーパーアドベンチャーゲーム)

ネバーランドのリンゴ (スーパーアドベンチャーゲーム)

 

でも、32個の数字を憶えていられる人はいませんよね。キーナンバー方式は、紙と鉛筆、もしくはアプリの機能がないと成立しないシステムです。 

 

それに対して、フラグワードシステムは、数多くのフラグを一つの意味のある単語で管理してしまおうという仕組みです。

 

フラグワードシステムの利点は下記の通りです。

 

1.一つの言葉で、物語のすべてを管理できる

「デレクの選んだ魔法」では、一つのフラグワードに実にたくさんの意味を持たせています。

デレクの選んだ魔法 (ちゃなのゲームブック)

デレクの選んだ魔法 (ちゃなのゲームブック)

 

例えばアカデミー1年生の時期には、「学生としての知力レベル」「火蜥蜴を持っているか否か」「シグレ草を持っているか否か」「ナイトシェードを持っているか否か」といった情報がフラグワードに収納されています。

これが社会人になると今度は、「疲労度」「悪意度」「貴族との関係」「陰謀を阻止したか否か」といった情報がフラグワードに書き込まれています。

ちなみに最終決戦では、3つのパラメータを用いて戦局を管理しています。

 

2.選択した行動の影響を読者に隠すことができる

「デレクの選んだ魔法」では、ある行動を取ると「疲労度」が上がっていきます。そして、一定数を超えると、主人公は病に倒れてしまうのです。

このような展開を、通常のゲームブックではヒットポイントなどで管理しています。また、キーナンバーなどを用いる作品でも、どの値を動かすかを見れば、行動の結果がどのようなボーナスまたはペナルティになるのか、読者は何となく予想がついてしまいます。

フラグワードシステムは、各種ポイント管理やキーナンバーに比べて、パラメータ変化の意味を読者に感づかれにくいという特徴があります。本作ではこれをうまく活用することで、何が主人公にとって最善の行動かが選択の直後にはわからないようになっているのです。

 

3.フラグワード自体に意味があることで、憶えやすい

読んで字のごとくですね。ただ情報を暗号化するだけなら、五十音2文字で2000種類以上の状況を管理できますが、「フラグワードを「らに」から「しきつ」に変更せよ」とか言われてもなかなか憶えられません。「もえさかる」から「もえつきる」とかの方が、憶えやすいですよね。

 

4.フラグワード自体の意味を使ったギミックも可能

これはまだ実験段階ですが、「デレクの選んだ魔法」では、フラグワードの言葉の示す情報のみならず、その言葉自体に意味を持たせている箇所が何カ所かあります。いずれも本作のテーマとも言うべき言葉です。

ドラクエ復活の呪文でも、偶然にせよ意図的にせよ意味の通る文章になっている例がありましたね。

 

こんなふうに幾つかメリットのあるフラグワードですが、一方欠点はと言うと。。。

 

1.収納できる情報量が少ない

一つのフラグワードに込められる情報には限りがあります。

平仮名の羅列ではなく、意味のある文字列に絞るとなると、例えば「ら行」で始まるフラグワードはほとんど作れません。

私は、「デレクの選んだ魔法」の執筆にあたり、すべての五十音の組み合わせを試しました。

その結果、一文字目16パターン、二文字目8パターン、文字数5パターン、総計640種類のフラグワード(+特殊なもの)を作成することになりました。

640種類もあれば十分だろうと思うかも知れませんが、そうでもありません。

原案の段階では、デレクが習得した魔術の種類もフラグワードに組み込むつもりでした。しかし、全12種類の魔術の習得過程がそれぞれ独立している(「ある魔術を覚えてからでないと次の魔術が覚えられない」というようなことがない)場合、組み合わせは2の12乗で4096通りにもなります。全然足りませんよね。そこで、習得した魔術の種類は別個に読者の皆さんに把握しておいていただくことにしました。

本作では他に物語の進行度を示すフラグが全編通じて必要になります。これを文字数に当てはめました。実際にプレイしていただくと、物語の節目節目でフラグワードの文字数が2文字から3文字、4文字と上がっていくのが体験できるかと思います。

残りの変数は128、つまり2の7乗ですから、単純な「あり/なし」のフラグなら全部で7つまで仕込めることになります。4段階に変化するフラグだと3つくらいしか管理できません。

当初は、「ダミアンの好感度」とかも考えていたのですが、涙を飲んで切りました。

 

2.記載が面倒くさい

そんなわけで、後に影響する行動をするたびにフラグワードは書き換わるわけですが、その都度640種類のフラグワードを並べていては、作者も読者も疲れ果ててしまいます。本としても単語の羅列が延々と続くことになり、格好悪いことこのうえありません。

本作では、展開上ありえないフラグワードはいちいち記載しないようにして、かなり容量を削っています。それでもなお、要所ではフラグワードの変更規則だけが何ページも続く場所ができてしまいました。

フラグワードを並べ立てずに済むように、あえて物語の展開を単純化した箇所もあります。でもそれって本末転倒ですよね。

 

3.やっぱり憶えていられない

意味のある言葉とはいえ、単語を一つずっと頭の中に置いておくというのは、結構ワーキングメモリを消費するものです。夢中で読み進めるうちに現在のフラグワードを忘れてしまった方もいたのではないでしょうか。実は私もテストプレイ時にしばしば忘れてしまいました。

そうすると、やっぱりメモを取るなりキンドルでハイライトしておくなりの対処が必要になってきます。

 

4.推敲が難しい

フラグワードは、読者からは仕組みが見えづらいシステムです。それは作者にとっても同じです。

「ネイキッドサバイバー」ではフラグワードは全部で100種類程度で、全編通じてその意味する内容は一緒でした。しかし「デレクの選んだ魔法」は、数自体が多いうえに、同じフラグワードでもパラグラフによってその示唆する情報が異なります。このため、推敲がものすごく大変になりました。

例えば「ここは1ダメージ受けるところだったけど、やっぱり2ダメージにするか」と思っても、そう記述を書き換えるのではなくて、フラグワードがどう変わるかを全部検証して、さらに展開上あり得ないフラグワードを除外するという作業が必要になるのです。おまけに一つのパラグラフを直すとその後にも影響が及びます。

 

5.コンティニューがやりづらい

ゲームブックをプレイしていて途中で死んでしまった場合、律儀に初めからやり直すでしょうか?少しだけ戻って別の選択肢を試したくなること、ありますよね。

通常のゲームブックの場合、直近に手に入れたアイテムを消したり、失ったヒットポイントを回復させたりするだけで良いのですが、フラグワードシステムではそうはいきません。場面場面に応じて、適切なフラグワードが異なるので、フラグワードを変更したパラグラフと変更内容を逐一記録しておかないと、物語を正確に巻き戻すことができないのです。

これがヒットポイントくらいなら、多少間違っていても何となく進めることができますが、フラグワードは物語の展開全体を記述しているので、間違ったまま進めると、例えば秋が終わったのにまた秋が始まったりといった、展開の齟齬を来たすリスクがあります。

 

「デレクの選んだ魔法」を執筆中にこのことに気付いた私は、「コンティニューシステム」の導入を考えました。コンティニューシステムは、「ネバーランドのリンゴ」でも採用されていますが、デッドエンドのパラグラフに、リスタート地点を示しておいてあげることを言います。

例えば、「ゲームオーバー。コンティニューする場合は、フラグワードをXXXXに変えてYYYへ飛べ。」などと書いておけばいいのです。

是非作ってみたかったのですが、本作は構成が複雑で、何処まで戻れば良いか、その際にフラグワードをどう変えればよいかがとてもわかりづらかったため、断念しました。

 

6.作るのが面倒くさい

一番の問題はこれですね。「デレクの選んだ魔法」でフラグワードマトリクスを作成して、選択肢に導入するだけで、1ヵ月近くかかってしまいました。前半は辞書とにらめっこ、後半はフローチャートを上から下まで辿ることの繰り返しです。普通にキーナンバーなどで管理していれば、せいぜい数日でできたはずです。

 

7.翻訳と相性が悪い

説明不要ですね。フラグワードシステムは日本語の妙を活用した仕組みなので、翻訳不可能です。もしも英語でフラグワードシステムを構築したら、どんな感じになるんでしょうか?

 

そんなわけで、「デレクの選んだ魔法」ではフラグワードシステムを全面的に採用しましたが、ちゃな的にはそれなりにやり尽くしたかなという感じです。

なるべく筆記具なしで楽しめるゲームブックというコンセプトにはこだわっていきたいので、また新しい方法を考えてみたいと思います。

フラグワードシステム自体も、特定の性質を持つゲームブックと相性が良かったりするので、いずれ進化した形でお見せできるかもしれません。

 

今回はフラグワードについてでした。

ではまた。

「デレクの選んだ魔法」トロフィー集

どうも、ちゃなです。

新作ゲームブック「デレクの選んだ魔法」、お楽しみいただけていますでしょうか?

デレクの選んだ魔法 (ちゃなのゲームブック)

デレクの選んだ魔法 (ちゃなのゲームブック)

 

 本作は600パラグラフ単方向のマルチエンディングです。もちろん、読者によって主人公の歩む道筋が異なってきます。

既に紹介していますが、パラグラフ600にあるノーマルエンドの他に、真エンドと超エンド、おまけの裏エンドが用意されています。ほかにバッドエンドが無数にありますが、そのうち幾つかにたどり着くのは、普通のエンディングを見るより難しかったりします。

 

ところで、最近のコンピュータゲームでは、プレイヤーの達成度に応じて「トロフィー」が認定される仕様が多いですよね。例えば「敵を100人倒した」とか、「お姫様を救出した」とか。なかには、一回エンディングに到達したくらいでは全然達成できないような、やりこみ専用のトロフィーもあったりします。

実はこのトロフィーシステム、ゲームブックでも既に導入されているんですよ!

例えば、こちらをご覧ください。

見捨てられた財宝

見捨てられた財宝

 

本作は100パラグラフと小柄ながら、エンディングのパターンが様々あり、それによって「冒険者ランク」がつけられるようになっています。

 

こちらもそうですね。 

ゲームブック 剣竜亭とカラクリ迷宮 FT書房

ゲームブック 剣竜亭とカラクリ迷宮 FT書房

 

巻末に「達成度」というランク分けがあって、単にエンディングを見ただけでは迷宮を制覇したとは言えないようになっています。

 

そんなわけで、「デレクの選んだ魔法」にも、トロフィーを作ってみました。

是非100%達成目指して、楽しんでいただければと思います。

とはいえ、本作ではいわゆるパラメータが存在しないので、各項目は到達したパラグラフだけの簡単なものになっています。

(性質上、若干のネタバレがあります。)

 

難易度 タイトル パラグラフ 説明
冒険のはじまり 1 あなたはデレク、魔術師だ。
王都に潜む影 42 第4章に到達した。
教授たちの思惑 43 第3章に到達した。
漂泊の旅人 95 自由はいいものです。
決戦 121 最終章に到達した。
痴話げんか? 146 言い争っている二人を見た。
伯父の誘い 161 第1章を開始した。
王立魔術アカデミー 186 第2章に到達した。
飲んだくれ 219 ある意味、幸せな人生かも。
魔術師は野望を明かす 441 第5章に到達した。
★★ ネイキッドガール 54 不可抗力なのよ、これは……
★★ 魔術師対剣豪 64 世紀の対決の結果は……
★★ 昼下がりの情事 74 品のないお方ね。
★★ 一攫千金 123 財宝を手に入れた。
★★ 交渉成立 126 強力なコネクションを手に入れた。
★★ 絶望の使徒 130 その瞳に映るのは次世代の神。
★★ 病魔 172 ウィズバードン症候群に罹った。
★★ ブラック企業 265 為政局雑務部に就職した。
★★ 犯人はお前だ! 355 事件を解明した。
★★ ジョギングデート 420 メグと二人で公園まで走った。
★★★ 上司を操る方法 145 心理学より簡単です……?
★★★ 首席! 193 学年トップの成績を取った。
★★★ 心攻 316 宿敵を打ちのめした。
★★★ 公僕として 406 官僚として大成した。
★★★ 愛する人に抱かれて 446 これもまた幸せな終焉か……
★★★ カウンターフォース 482 宿敵の術を打ち破った。
★★★ 悲しい決断 499 愛を取るか、仕事を取るか。
★★★ 将軍の素顔 511 パトリシアの生い立ちを聞いた。
★★★ 開花した商才 516 異世界転生ものではありません。
★★★ 虚しい決着 546 宿敵をボコボコにした。
★★★ 100年の荒野 570 手を出すべきではない力に手を出した。
★★★ 黒幕発覚 590 黒幕の正体を突き止めた。
★★★ エンディング 600 クリアおめでとう!
★★★★ 旅の終わり 6 これぞ真の大団円。
★★★★ 狂気の魔術師 28 ルール破りがお好きなようで……
★★★★ セカンド・チャンス 333 ???に到達した。
★★★★ ウォーロック 428 禁呪を使いこなし、禁呪に染まった。
★★★★ この日のために 574 最も大切な術を最も大切な相手に使った。
★★★★★ 法則の間 ??? そこは世界の中心。
★★★★★ 完全な世界 ??? 隠しエンディングの法則……

 

いかがでしょうか?なんとなくそれっぽく感じていただければ幸いです。

「デレクの選んだ魔法」最強王座決定戦!

どうも、ちゃなです。

 

新作ゲームブック「デレクの選んだ魔法」では、いろんな人が出てきます。主人公デレクの心強い味方もいれば、ライバルや不倶戴天の敵も登場します。

デレクの選んだ魔法 (ちゃなのゲームブック)

デレクの選んだ魔法 (ちゃなのゲームブック)

 

本作には明示的なパラメータが存在しませんので、誰がどのくらい強いのかは想像するしかありません。戦って一番強いのはいったい誰でしょうか?

(軽いネタバレを含みます。)

 

戦士部門

 

第3位 カーン

治安局の部長を務めるカーンは、典型的な体育会系の人物です。制圧部隊を率いていることから、自らも相当の腕っ節を誇るのではないでしょうか。とはいえ、山賊ハロルドを取り押さえ損なったというエピソードがあるので、その腕力はあくまでも人間レベルにとどまるものでしょうけれど。。。

 

第2位 アストリア

本作で実際に登場した悪魔の中では、戦いの権化ともいえるこの悪魔が最強ではないでしょうか。剣と盾を装備した姿で現れて大暴れします。普通の戦い方では到底敵う相手ではありません。ただ、知能や感覚は並の人間と大して変わらないので、そこが付け目かもしれませんね。

 

第1位 オバール・ブレイガス伯爵

やはり最強はこの人でしょう。光速流の使い手で、王都での武芸大会でも優勝経験があり、しかも精神力が強くて魔術にもかからないというスーパーマンです。「ネイキッドチェイサー」では年老いた彼が主人公の女戦士に立ちはだかりますが、その戦いでも「全盛期のブレイガスはどれだけ強かったのだろう」と思わせる描写があります。悪魔なんか余裕で斬り殺してしまいそうですよね。

 

魔術師部門

 

第3位 カストロ

魔術師の中でもアカデミーの教授陣は現役の最強術者ということで、甲乙付けがたい実力を持っています。しかし、汎用性という点では召喚術の大家であるカストロ先生が一歩前に出るでしょう。片っ端から悪魔を呼んで使役すれば、相手はなすすべもありません。その冷静で隙のない性格も戦いで真価を発揮することでしょう。

 

第2位 ツルニコフ

「一対一なら衰弱の術が最強」説は根強いです。ツルニコフ本人はなかなか独特のキャラクターで、彼が戦う姿はそうそう見られないでしょうが、いざ本気を出したら、その口から漏れる真言の前に死屍累々という情景が浮かび上がります。

 

第1位 サイフリート・アッシュ

アカデミーの学長にして思念の術者。プロフェッサーXばりの超能力で敵の心を操り、魔公案で全ての相手をねじ伏せます。しかも彼は60歳を超えるというのに筋肉ムキムキ。いざとなれば魔術に頼らずその豪腕で相手をくびり殺すことだってできそうです。伊達にくせ者揃いの教授陣のトップにいるわけではありませんね。

(余談ですが、ちゃなは、この「テレパス能力」+「物理的に強い」のコンボこそ最強だと思っています。X-MENシリーズでも最強のミュータントは多分、テレパシーと硬質化の能力を併せ持つ”ホワイトクイーン”エマ・フロストでしょう。)

 

いかがだったでしょうか?

実際には相性やシチュエーションによる違いもありますので、あくまでも一つの思考実験です。ネタバレのためあえて伏せた人物や設定もあります。

公式に誰が最強と決めるつもりもありませんので、皆さんも「この二人が戦ったらどうなるか?」という想像をしてみてくださいね。

ロンドンのアナログゲーム事情

どうも、ちゃなです。

 

私は数年前にちょっとだけロンドンに住んでいたことがあります。英語も苦手で、物価も高く、慣習の違いに苦労することも多かったですが、現地で何度かゲーム会に参加できたのは良い思い出です。

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ロンドンにも、アナログゲーム愛好家は数多くいます。週末になると、その辺のパブを借り切って、コンベンションが開かれるのです。

だいたいのところで、入場は無料。普通に居酒屋として営業しているので、お酒や料理を注文しながら、パートナーを見つけて好きなだけゲームを楽しめます。ゲームは主催者が持ち込んでいたり、プレーヤーが持ち寄ったりと、様々です。50~60人規模のところもあり、お酒飲みながらの人もいるので、割とゆるゆるです。

 

よくプレイされるゲームは、日本でもおなじみの「パンデミック」「ラブレター」「ゴキブリポーカー」など。アメコミものもよく見かけました。

ごきぶりポーカー (Kakerlakenpoker) カードゲーム

ごきぶりポーカー (Kakerlakenpoker) カードゲーム

 

 

「タケノコ」「花火」「キング・オブ・トーキョー」など、日本をテーマにしたゲームも遊ばれています。

花火 (Hanabi) 日本語版 カードゲーム

花火 (Hanabi) 日本語版 カードゲーム

 

 

重ゲーも結構プレイ人口が多いようです。「電力会社」「世界の七不思議」なんかは、大会が開かれるほどです。 

世界の七不思議 (7 Wonders) 日本語版 ボードゲーム

世界の七不思議 (7 Wonders) 日本語版 ボードゲーム

 

 

クニツィア先生も人気で、クニツィア縛りの大会もありました。優勝賞品はサイン色紙。私はその日は「頭脳絶好調」「ロストシティ」「ラー」なんかをプレイしました。

ラー (Ra) 日本語版 ボードゲーム

ラー (Ra) 日本語版 ボードゲーム

 

 

残念ながら日本製のゲームを見ることはありませんでした。。。

 

海外でプレイするとなると、言語依存がもろにのしかかってきます。「ゴキブリポーカー」でさえも、"This is a bat!" "Rat?" "No, bat!"みたいな感じです。

とにかく、ルール説明がなかなか頭に入ってこない!それでも、基本ルールはなんとなくわかるのですが、細則や例外事項についてうまく質問できなくて戸惑うことがしばしばありました。

 

リソースマネジメントの傑作「コンコルディア」は、カードの点数づけがよくわからず、最後まで1枚もカードを買わずに終わってしまいました。それでもビリにはならなかったのが奥深いところですが。

コンコルディア 日本語版

コンコルディア 日本語版

 

 

そして重ゲー中の重ゲー「Archipelago」に至っては、初回プレイではゲーム終了までルールが理解できず。。。

アーキペラゴ(Archiperago)

アーキペラゴ(Archiperago)

 

本作は、探索、交渉、建築、リソースマネジメント、終了条件隠匿等、数多くの要素を組み込んだ大作で、プレイ時間も長編シナリオでは4時間に及びます。愛好家の方に誘われて、計3回プレイしました。

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そして私自身、買っちゃいました。日本でも何回かプレイしましたけど、「全員敗北」で終わりやすいので、結構ハードです。

 

日本ではアナログゲーム会の情報はウェブやミクシィ等で探したり、ゲームスペースに通ったりすることが多いと思いますが、ロンドンでは"Meetup"というSNSが流行っています。

www.meetup.com

こちらは催し物を中心としたSNSで、同好の士とかローカルイベントを探すのにとても便利でした。

Meetupは日本にも上陸しているのですが、残念ながらあまり普及していません。

 

あと、ロンドンでアナログゲームを買うなら、なんといっても”Orc's nest"です。

Orcs Nest Games Shop

2階建ての狭い店内にボードゲームTRPGがひしめき合っています。私が滞在していた頃は、Pathfinderが全盛で、ラブレターのバージョン違いも10種類以上ありました。

 

私の住んでいたのはテムズ川の南側の下町なのですが、徒歩3分のパブで毎週ゲーム会をやっている小さなグループがありました。主催者のマシューさんには大変お世話になりました。

 

機会があれば是非また行ってみたいですね。

本当は、TRPGセッションに参加したかった!ロンドンではD&Dも盛んです。でも、どうしても言葉の壁があるんですよね。。。

 

以上、ロンドンのアナログゲーム事情でした。

はじめてゲームブックと関係ないこと書いちゃった。

「デレクの選んだ魔法」制作裏話 その5 テーマとギミック

どうも、ちゃなです。新作ゲームブック「デレクの選んだ魔法」の舞台裏を解説するコーナーもいよいよ最終回。今回は作品の底に流れるテーマについて解説します。

(ネタバレはありません。)

デレクの選んだ魔法 (ちゃなのゲームブック)

デレクの選んだ魔法 (ちゃなのゲームブック)

 

 

以前私は本ブログで本作のテーマを「人生」そして「後悔」と書きました。

しかし、このテーマは実は制作過程も終盤に入ってからようやく見えてきたものです。

当初は、とにかく主人公が色んな魔術を習得して使いこなす話にしようというノリでいました。

その後で、「究極の魔術」というプロットを思いつきました。例えば、火炎の究極の魔術を習得すると、核爆発さえも起こすことができる、その代償として、手に触れるものは全て燃え尽きてしまう呪いに襲われる、それでもあなたは究極の魔術を手に入れたいですか?といった、ちょっと哲学的な話を考えていたのです。結局この話は私の中で煮詰めきれないまま立ち消えになりました。

 

代わって、デレクの成長を描くということになって、官僚や冒険者など様々なフィールドで活躍するデレクが思い浮かんできました。そして、やっぱり、デレクが魔術を学ぶきっかけとなったあの事件に対する決着をつけてみたくなったのです。それも、本作らしく、またゲームブックらしいやり方で。

本作には私の作品には珍しくパラグラフジャンプが出てきます。パラグラフジャンプは、各パラグラフに「隠された意味」を持たせるのに有効な手段です。本作におけるパラグラフジャンプの使い方は、魔術を学ぶときの心構えと密接に関係しています。本作は、パラグラフジャンプのギミックなしには成立しないのです。

そして私はデレクが魔術を学ぶ動機の一つを、人生と後悔から自由になるためと設定しました。この辺りの絡みは、是非本文を読んで感じ取っていただければ幸いです。

 

最終的に、デレクは私が思っていた以上に大きな人間になりました。ありがとう、デレク。そして本書を手に取ってデレクに命を吹き込んでくれたあなたに、あらためて深く感謝いたします。