ちゃなのゲームブック

ゲームブック作家「ちゃな」のブログです。Amazonキンドルで「デレクの選んだ魔法」等販売中!

「サイボーグを倒せ」チャート解析 その2

スティーブ・ジャクソン氏のゲームブック「サイボーグを倒せ」。

この作品、実は安田均先生が既にフローチャートを公開しています。

今回、ちゃなはあえて安田先生のチャートを参照しないで自分でチャートを作成しました。まあ、間違っていたら、ご愛敬ということで。。。

 

では、始まりのところから見ていきましょう。

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右上に並んでいるのは、選んだ超能力毎にもらえる「手がかり」です。特に「超体力」を選んだ場合、ここで必ず手に入る手がかりを後で活かさないと、ゲームをクリアすることができません。

 

濃い青のパラグラフは、パラグラフジャンプのための手がかりを必要とするパラグラフです。例えば、パラグラフ405ではリッチ親分のメダルを見つけて彼を追跡する機会が与えられます。手がかりがないとリッチを逮捕して英雄点を得ることができません。

 

他方で、別の事件を追いかけている最中にも手がかりが手に入ります。

なお、超体力を持っている場合、パラグラフ137で「35の反対」というヒントが得られますが、残念ながら私はこの意味が最後までわかりませんでした。

 

引き続き様々な事件が起こります。

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本作ではいわゆるデッドエンドは最後を除いては少なめです。しかしハイジャック犯「拷問鬼」への対応を誤ると主人公といえど墜落死を免れません。他にも、乗客全員死亡というトラウマティックな展開もありえます。

 

さて、本作の最終目的は「恐怖結社」のボスを捕らえることなのですが、そのためには結社の幹部が集まる会議の場所や時間を突き止めなければいけません。そのための手がかりは様々なところに散らばっています。なんとなく事件を解決していると、最後の最後に会議を止められずにバッドエンドになってしまうのです。

例えば、「超体力」を持つ主人公の場合、拷問鬼を逮捕すれば、恐怖会議が行われるのが27日であることが明らかになります。ここで聞き逃すと、もはや詰みなのです!

しかし他の特殊能力の場合、この情報は手に入りません。別の場所で他の情報を入手する必要があります。

こういった形で、冒頭で選んだ主人公のタイプ別に攻略手順が異なるのが本作の特徴です。リプレイ性を高める一方で、攻略の難度を引き上げる要因にもなっています。

 

さて、主人公はヒーロー活動のため出社できず、上司からこっぴどく叱られます。正体隠匿ヒーローのお約束ですね。しかしその後の余暇の過ごし方にもご用心。

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「電撃」を持っている場合、ボスの機嫌を取るために是非デパートのゲーム売り場に足を運んでください。そこで遭遇した火の戦士を倒すことで、会議が28日に行われることが判明します。書籍売り場で「火吹き山の魔法使い」なんて買っていてはいけませんよ!

 

まだまだ中盤戦ですが、読者によっては既に詰んでしまっていたりして。。次回に続きます。

「サイボーグを倒せ」チャート解析 その1

どうも、ちゃなです。

ゲームブック執筆が煮詰まってくると、唐突に他の作家さんの作品を解析をしたくなることがあるんですね。。

というわけで今回はチャート解析第10回、スティーブ・ジャクソン氏の「サイボーグを倒せ」です。ちょうど世間は「アベンジャーズ」祭りの真っ最中ですしね。

サイボーグを倒せ?ファイティング・ファンタジー (17)

サイボーグを倒せ?ファイティング・ファンタジー (17)

 

 

本作はファイティングファンタジーシリーズの一作で、原題を”Appointment with FEAR"と言います。舞台は現代の米国タイタンシティ、主人公は「シルバー・クルセダー」というスーパーヒーロー!いわゆるアメコミものですね。

日本語の冊子はとうに絶版していますが、STEAM等のアプリは現在でもプレイ可能です。描写がアメコミ風にアレンジされています。

store.steampowered.com

 

本作の主人公は名前をジーン・ラファイエットと言います。無色透明の「君」ではありません。表の顔は会社員ですが、コスチュームに着替えて「シルバー・クルセダー」としてヒーロー活動をしています。「スパイダーマン」タイプですね。伯母さんがいるのもそれっぽいところ。犯罪者に素顔を見られてしまうとバッドエンドになります。

 

さて、本作では主人公の特殊能力を「超体力」「思念力」「超技術」「電撃」の4種類から選ぶことができます。

「超体力」はいわゆるスーパーマン。筋力が爆発し、原技術点は13になり、空を飛ぶこともできます。最も死ににくいタイプだと思います。

「思念力」はテレパスですね。他人を操ったり、物体を動かしたりできます。

「超技術」では、腰の飾りベルトに収納したハイテク兵器を使いこなします。

そして「電撃」は一撃必殺の高圧電流を操るのですが、放つたびに体力点を2点消費し、さらに技術判定に成功しないと命中しないのが困りものです。原技術点が低いと苦戦しそうですね。

 

いずれかを選ぶと、二つの「手がかり」を得たうえで、ゲームスタートです。

主人公はいつもの技術点・体力点・運点の他に「英雄点」というパラメータを持っています。これはシナリオクリアのボーナス点のようなもので、ゲームクリアにはまったく影響しませんが、高いほど優秀なヒーローと見なされることになります。

 

それではチャートを見てみましょう。

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はい、例のごとく、これだけでは何やらわかりませんね。。。

でも、全体がいくつかのクラスタにまとまっている感じがなんとなく見えますでしょうか?このクラスタ一つ一つが様々なヴィランの引き起こす事件に該当しているんです。

赤いマスは戦闘です。黄色のマスはデッドエンドです。

そして特徴的なのが、水色マス。これらのパラグラフではヒントが得られます。そのほとんどが、パラグラフチェンジのためのフラグになっているのです。

 

なお、本作ではいわゆる「アイテム」がほとんど出てきません。冒険記録紙にもアイテム欄が存在しないのです。ただ、終盤で手に入る「回路妨害器」は唯一にしてクリアに必須なアイテムになっています。

 

続きます。

ソーサリアンTEXT「金竜の陰謀」 製作裏話

どうも、ちゃなです。

ソーサリアンTEXTのドラゴンモードシナリオ「金竜の陰謀」、お楽しみいただいているでしょうか?

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ちゃなは以前にもソーサリアンTEXTに「災厄の夜−テンペスト・ナイト−」を投稿しています。同作では「原作ソーサリアンの基本15シナリオすべてのネタを散りばめる」「原作ソーサリアンのシステムに則って七星の組み合わせで魔法を開発する」というコンセプトを採用しました。その分、フローチャートは極めてシンプルなものになりました。

 

対して今作は、パラグラフ数こそ64しかありませんが、双方向型シナリオ、職業によって開かれる選択肢、アイテムやフラグを限定した隠しテキストといったギミックを色々と取り入れています。

 

(ここからはネタバレを含みます)

 

砂漠王ルワン

 

実は「テンペスト」を執筆しているうちに、ちゃなのオヤジ趣味が顔を出して、砂漠王ルワンが大好きになってしまったんですよねー。ルワンは原作では一言も喋らずただ戦って倒すだけの敵なのですが、交易都市ヴァラージを長く治める領主なのですから、ただの小悪党であるはずがありません。

ゴールドドラゴンの幻影を出して戦うというのも、もしかしたら外敵の命を奪わず追い払うためだったのでは……?そして、そのゴールドドラゴンとは、ルワンが幼き日に見た巨大な竜の姿を再現したものだったのかもしれません。

 

というわけで、ちゃなのシナリオの中では、ルワンは尊大でいけ好かない嫌な奴ですが、根っからの悪人ではありません。原作「呪われたオアシス」でソーサリアンに敗れた後は、オアシスの呪いを解いてペンタウァの王様と和解し、ヴァラージの良き領主として君臨しているという設定になりました。砂漠の民はきっと反骨精神が盛んですから、ルワンのように傲岸不遜な男に憧れるところもあるでしょう。。。

 

さて、一方で本作のラスボス「金竜」です。

ルワンが作り出したのはあくまでも幻影。オリジナルは比べ物にならない強さのはず。

強くするためにはでかくすればいい!というわけで、全長100m以上(多分)もある巨大なドラゴンがペンタウァの王城を押しつぶそうとしているイメージが生まれました。

 

金竜の性格は、今思えば、コンピュータRPG「バルダーズゲート2」のファークラーグ卿に似てますねー。彼も主人公に逆ギレしてたぶらかし人間同士で殺し合いをさせて楽しむというなかなかなご趣味をお持ちです。

しかし同時に、金竜は世界の守護者としての理念をも持っています。なので、666年に一度の災厄が人間によって防がれたことや、一介の人間がドラゴンスレイヤーを手に自分達に挑むことなどは、まったくもって受け入れがたいことなのですよね。

プライドの高い金竜は、同じドラゴンに対しても時に軽蔑の目を向けています。作中ではレッドドラゴンブルードラゴン、シャドードラゴンをディスっていましたね。きっとヴァイデスとも仲が悪いでしょうね。

金竜が唯一認める存在は、「ザガ」すなわちキングドラゴンです。曲者揃いの竜族の中で、自分こそが唯一のキングドラゴンの理解者であるという自負を持っています。

(ちなみに「ザガ」とは「ザ・ガ○○○」の略です。ファルコムファンのあなたなら、わかりますよね?)

 

……というわけで、実は良い人だった砂漠王ルワンと、人間には決して理解できない存在である金竜のキャラが決まり、そんな金竜をブチギレさせたルワンの「大人になれよ」というセリフを思いついた瞬間に、このシナリオは完成したのでした。

 

職業システム

 

システム面では、せっかく実装された「職業システム」を使いこなそう、という思いが最初にありました。

ただ、ソーサリアンでは種族と年代によって就ける職業にかなりの格差があります。どんな主人公でもクリア可能にするため、様々な選択肢を用意して、行き当たりばったりでもなんとなくクリアルートが見えるよう工夫したのですが、ここのところはちゃなの中でまだ不完全燃焼かなあ。。。

ちなみに、ソーサリアンが一瞬で転職可能なのは、ありきたりですが、幻惑の霧の中にいるからですね。

 

金竜戦

 

ラスボス戦のコンセプトは、「歴代最強のラスボスを目指す」ことと、「デフォルトのソーサリアンTEXTの戦闘ルールをなるべく変えない」ことでした。

前作「災厄の夜−テンペスト・ナイト−」では、とにかく災厄の恐ろしさを表現したくてかなり無茶苦茶な強さにしてしまったので、今作はあくまでもルール内での強さを目指すことにしました。

ところが、ソーサリアンTEXTの戦闘システムはシンプルで、基本的にどの敵も一回殴れば死にます。その際主人公がどれだけダメージを受けるかによって敵の強さを表現しています。

なので、このダメージを1000とかにしてしまえば「強い敵」を表現できるのですが、それでは流石に味気ない。

コンピュータRPGとかでも、強敵というのは、「いくら殴っても死なない」「一撃で味方を壊滅寸前にする」の二つの要素を持っています。

そこで、前者に関しては金竜のパーツごとにパラグラフを分離して弱点を順番に突かなければ倒せないようにして、後者は必殺技「衝撃波のブレス」に委ねることにしました。

 

こんな感じで制作された「金竜の陰謀」。小品ですが、作っていてとても楽しい作品でした。このような制作環境を与えてくれたスタッフの皆様に、改めて感謝申し上げます。

実は、ソーサリアンのネタであと2つほど制作したいものがあるんですよねー。余裕があれば、いずれお披露目したいものです。。。

ソーサリアンTEXT「金竜の陰謀」

どうも、ちゃなです。色々あってご無沙汰していました。

本日は、新作ゲームブック「金竜の陰謀」が公開されました!

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こちらは、以前にご紹介した「ソーサリアンTEXT」。日本ファルコムさんの名作コンピュータRPGソーサリアン」の世界をブラウザゲームブックで表現したサイトです。

ただのファンサイトと侮ることなかれ。既に作品数は原作ソーサリアンの15シナリオを超えています。定期的なシステムリプレースに、RYUさんの超大作やその筋では有名な山田賢治さんらの寄稿もあり、どんどん賑わいを見せています。

 

今回は、「ドラゴンモード」と称する連作シナリオ。ちゃなの「金竜の陰謀」は第5作に当たります。

 

原作ソーサリアンでは、「呪われたオアシス」というシナリオで、砂漠王ルワンとゴールドドラゴンというボスキャラが登場します。ルワンはオアシスに呪いをかけた強力な魔術師で、ゴールドドラゴンはルワンの呼び出した幻影という設定なのですが……本作に出てくるルワンとゴールドドラゴンは一味違いますよ!

 

このシナリオでは、ソーサリアンTEXTの「職業システム」を活用したフラグ立てをしています。原作ソーサリアンでも特定の職業についていないとクリアできないシナリオがありました。「金竜の陰謀」では、シナリオ中に転職が可能な場所があり、怪しい場所を探索するにあたってふさわしい職業を選ぶと新たな展開が見える仕掛けになっています。作中で何度も転職が可能という不自然さも、プロットに組み込んでいます。

 

後半戦では、ペンタウァを襲う陰謀の全容が判明し、それまでの行動によっては非常に後味の悪い展開になります。こういう語り口は、ちゃなの作品にはちょっと珍しいですね。そしてボス「金竜」は、ソーサリアンTEXT最強を目指しました!あなたは果たしてノーダメージで倒せる攻略法を見出せるでしょうか?

 

是非、ご笑覧ください。

ただ、仕様上、「金竜の陰謀」はいきなりプレイすることはできません。

拙作「災厄の夜-テンペスト・ナイト-」でエンディングを見ることと、RYUさんの作品「その名はドラゴンスレイヤー」の最初のクエストをクリアすることが、解放条件になっています。

この機会に他の作品にもお目通しいただけるととても有り難いです。

ブログ開設2周年

どうも、ちゃなです。

私がこのブログを開設してから2年が過ぎたようです。

ちょうど「ファイアーエムブレムヒーローズ」と同時期に始めたみたいですねー。

あんまり関係ないですけど。。

fire-emblem-heroes.com

 

主に拙著の販促用途で始めたこのブログですが、宣伝以外にも、名作ゲームブックのリプレイやゲームブック作成の技法など、様々なエントリを執筆してきました。

この間、代表作である「デレクの選んだ魔法」をはじめ、計6作を仕上げました。

デレクの選んだ魔法 (ちゃなのゲームブック)

デレクの選んだ魔法 (ちゃなのゲームブック)

 

 

処女作「ネイキッドウォリアー」は今も結構売れてます!100パラグラフのマルチエンディングで気軽に楽しめますよ。

ネイキッドウォリアー (ちゃなのゲームブック)

ネイキッドウォリアー (ちゃなのゲームブック)

 

 

最新作「魔皇を継ぐ者」 は200パラグラフ。エンディングは9種類! 

魔皇を継ぐ者 (ちゃなのゲームブック)
 

 

そして、現在ドラゴンモード真っ盛りのソーサリアンTEXT。私は「災厄の夜-テンペスト・ナイト-」を上梓しました。近々2作目「金竜の陰謀」も公開予定です!

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本ブログは、息切れしないよう、毎日更新とかいったきついルールは設けずに、書きたいことがあるときだけゆるゆると執筆してきましたが、とりあえず2年を迎えられたのは、ゲームブックを愛する読者の皆様のお陰です。

 

今後ともよろしくお願い申し上げます。

ゲームブックにおける「ラスボス」について

どうも、ちゃなです。

(本稿はいくつかの作品のネタバレを含みます)

 

たいていのロールプレイングゲーム、特にコンピュータRPGでは、戦闘が起こります。主人公に敵対する勢力と厳しい戦いを繰り広げた末に勝利を収めるというのが王道ですよね。

敵にもランクがあり、ザコから中ボス、ラスボス、さらには隠しボスなんて存在もあったりします。このボスが強ければ強いほど攻略意欲を掻き立てられます。一人用ゲームだと、ボスの強さはゲームとしての寿命にも直結することになります。

 

しかし、ゲームブックでラスボスの強さを表現するのって、結構難しいです。

理由は2つあります。

 

一つは、数値計算の繰り返しを得意とするコンピュータRPGに比べて、ゲームブックは戦闘のために大量のデータを扱うことが苦手であること。

そのため、ゲームブックにおける戦闘ルールは概して単純です。

「ラスボス 技術点12、体力点18」と言われた瞬間に、主人公が勝てる確率がおおよそ予想できてしまいます。

ただの殴り合いでなく、特殊攻撃などを敵の行動ルーチンに組み込むことも可能ですが、その分専用のパラグラフが増えることになります。ボス戦だけにあまりページを割くわけにはいきません。

 

二番目は、多くのゲームブックが「消耗戦」であることです。

ファイティングファンタジーシリーズに典型的ですが、主人公はスタート時点で最大の体力点を持っていて、物語の進行と共にどんどん消耗していきます。回復のチャンスが設けられていることもありますが、コンピュータRPGみたいに「ボス戦前に全快してセーブ」みたいな定石はありません。

また、多くのゲームブックは容量の都合上、主人公の成長(レベルアップ)要素があまりありません。

なので、ラスボスの強さを体現するために無理やり能力値を高くすると、攻略不可能になってしまうんですね。

 

結果として、ゲームブックのラスボスは、数値的な強さよりも、特定のアイテムや行動をとらないと倒せないというアルゴリズム的な形で、表現されることが多くなっていまるように思います。

火吹山の魔法使い」のザゴールは技術点11でした。

対して、「バルサスの要塞」のバルサスは技術点12を誇りますが、魔法だけで倒すことが可能です。「ソーサリー!」四部作のマンパンの大魔王は(完全形態でないゆえですが)技術点7しかなく、「盗賊都市」のザンバー・ボーンや「モンスター誕生」のザラダン・マーには能力値すら与えられていません。

 

ラスボスが不在で、攻略過程を楽しむことに重きを置いた作品も多いですね。

 

もちろん、ラスボスの強さを体現したゲームブックもあります。

代表的なのは「ドルアーガの塔」三部作でしょう。本作はドルアーガ討伐が初めから目的として提示されているので、ラスボス戦を盛り上げることが物語上不可欠です。また本作は双方向作品なので、ボスに挑む前に主人公を成長させる機会が十分に用意されています。

そのことを意識してなのでしょう、ドルアーガは複数の戦闘形態を取り、多彩な攻撃を仕掛けてきます。戦闘ルール自体はサイコロを振るだけですが、途中で襲ってくる特殊攻撃をどうかわすかが勝敗を分けることになります。強敵なだけに、倒した時のカタルシスはかなりのものです。

魔界の滅亡 (ゲームブック・ドルアーガの塔)

魔界の滅亡 (ゲームブック・ドルアーガの塔)

 

 

対極的に、ラスボス戦そのものをエンディングの一部として、必ず勝てる仕様にしている作品もあります。コンピュータゲームだと「グラディウス」シリーズが代表的ですね。

エスパー火の王の伝説」では、ラスボスは7連戦で、最終形態は6ゾロを振らないと勝てないという鬼仕様なのですが、実は何度負けてもアイテムや仲間が窮地を救ってくれて、必ず勝利できる仕組みになっています。

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「護国記」の最後にも強大なラスボスが待ち構えていますが、攻略に苦労するということはありません。すべきことは、それまでの長い旅を振り返り、叙事詩的戦いの終局を味わいつくすことだけです。

護国記 (幻想迷宮ゲームブック)

護国記 (幻想迷宮ゲームブック)

 

 

白熱した戦いをゲームブックで楽しむならば、むしろ他の要素は一切そぎ落としてしまいましょう。そういう発想で作られたのが、「クイーンズブレード」シリーズです。古くは対戦型ゲームブック「魔術師の挑戦」なんかもあります。

デュエル・マスター〈1〉魔術師の挑戦 (富士見文庫―アドベンチャー・ゲームブック)

デュエル・マスター〈1〉魔術師の挑戦 (富士見文庫―アドベンチャー・ゲームブック)

 

 

ちなみに拙作「デレクの選んだ魔法」では、黒幕との因縁に決着をつけるためにラストバトルが不可避になっています。直接攻撃と魔法による攻撃・防御をどのように組み合わせるかを悩んでもらうため、かなりのパラグラフを割き、専用のフラグ管理システムも組み込んでいます。さらに、主人公がパーフェクトなルートを辿ってきた場合には、ラスボスのアルゴリズムもパワーアップするという、隠し仕様を加えています。

デレクの選んだ魔法 (ちゃなのゲームブック)

デレクの選んだ魔法 (ちゃなのゲームブック)

 

 

今回は、ゲームブックにおけるラスボスについてでした。

ではまた。

ゲームブックの三要素

どうも、ちゃなです。

今回はちょっと制作理論のお話。

 

世の中、なんでもとりあえず3つの要素に分けて考えるっていうやり方がありますよね。真善美とか、心技体とか。

例えば映画だと、シナリオ、役者、演出の三要素が大切です。どれが欠けても名作にはなりません。

アニメなら、キャラ、ストーリー、声優の三要素になるのかな?

アナログゲームはどうでしょうか。私なら、ルール、テーマ、コンポーネントの三要素を挙げたいと思います。もちろんルールが一番大切ですが、「ラングフィンガー」と「グリムリーパー」、「ラー」と「ラッツィア」なんかは、それぞれルールはほぼ一緒ですが設定が違うのでプレイ感覚は結構異なります。コンポーネントが紙か木か金属かでも、全然印象が変わってきますよね。

 

さて、ゲームブックの三要素ってなんでしょうか?

 

少し前から考えていたのですが、今のところちゃなの答えは、

フローチャート

・システム

・テキスト

です。

 

ゲームブックは分岐小説とも言われるように、フローチャートで記述が可能なメディアです。フローチャートこそゲームブックゲームブック足らしめている本質です(単純にチャート化できない作品や、「ひぐらしのなく頃に」みたいな例外もありますが)。

 

対して、ゲームブックのゲーム性をフローチャート以外のところに求めれば、それがシステムということになります。

多くの作品では、冒険記録紙などを使ってフラグ管理を行いますし、戦闘システムが実装されている作品も多いです。トンネルズ&トロールズのソロアドベンチャーでは、システムがメインでチャートはむしろフレーバーだったりすることもあります。

 

そして、ゲームブックが小説の形態をとっている以上、テキストを要素から外すわけにはいきません。

 

ゲームブックを制作する際には、多かれ少なかれ、これら三要素を意識して、そのバランスに気を配ることになります。

そして、どの要素を重視するかによって、作品の個性も変わってくるのです。このバランスは、また執筆スタイルとも関わってきます。

 

私の場合、大抵はフローチャートを作ることから始めます。そして、ストーリーラインに沿って必要なシステムを構築しつつ、チャートを見直してバランスを取っていきます。

多分、フローチャート作成は漫画家さんの「ネーム」に当たるんですね。テキストを書き起こす作業は「ペン入れ」みたいなものです。

私は、チャート作成の段階ではシーンの細部までは決めていません。例えば、戦うか逃げるかの選択肢を設けるとだけ決めておいて、いざ執筆の段階で、この敵は挑発してくるのか、それとも隙を見せているのか、それまでの展開も踏まえて書き込みます。

 

小説メインの作家さんなら、メインのストーリーラインを完全に決めてから、分岐を付け足していくスタイルを取ることもあるでしょう。

 

拙作「魔皇を継ぐ者」は変わっていて、最初にフラグワードシステムを思いついたものですから、その仕組みが機能するようにチャートを作るという、珍しい工程を辿りました。

魔皇を継ぐ者 (ちゃなのゲームブック)
 

 

次回作「ファントムドミネーション」では、逆にテキストが肝になります。独特のテキストを活かせるようにチャートをこしらえているところです。

どうぞご期待ください!