どうも、ちゃなです。
昨年は色々と立て込んでいて執筆が滞りがちでした。本年は頑張ります!
さて、ファンタジー世界に欠かせない要素である「魔法」。
この不可思議な現象、人間の想像力の産物をどうやって表現するか、様々なメディアが数知れぬ試みを繰り返してきました。
TRPGだと、マジックポイントを消費してレベルに応じた強さの魔法を使えるというのが一般的でしょうか。D&Dのようにあらかじめ使う呪文をセットしておかなければならないシステムもあれば、「ビヨンド・ローズ・トゥ・ローズ」では「マジックイメージ」なる摩訶不思議なカードを組み合わせるというユニークなシステムを採用していました。
さて、ゲームブックでは、基本的にすべての処理を各パラグラフに紐付けしなければならないので、魔法の処理にも制約がかかります。主人公が魔法使いで、好きな魔法を自分の思い通りに操れるようなシステムを作るには、それなりの工夫が必要になります。
具体的にはどのようなシステムが採用されているのでしょうか?
魔法使用の処理に当たって考慮する要素として、次の3点があります。
(1)すべての魔法を開始時から使えるか?(開始時から覚えている/道中で習得)
これはストーリーと密接に絡む区分です。
主人公が魔法使いの場合、冒頭のルール説明の段階で使える魔法の一覧が掲載されている作品が多いです。ずらりと並んだリストを眺めていると、いかにも自分が魔法使いになったような気分になれますね。
一方で、開始時には魔法が使えず、冒険の途中で魔法を習得する作品もあります。なかにいは習得してはじめて魔法の存在を知るようなものも。。。
(2)魔法を使うためのリソースは何か?(体力点等のポイント/魔法ストック/無制限)
これはシステム上の大きな分かれ目になります。
大別すると、何度でも魔法を使えるけれどもそのたびに体力や魔力を消耗する作品と、魔法自体をストックしておいて一度使うと回復しない仕組みになっている作品があります。
また、少数ですが、そもそも魔力というリソースを読者に管理させていない作品もあります。
(3)魔法を使うための選択手段は?(選択肢/特別なシステム)
多くの作品では、魔法を使える局面が限られており、選択肢の中から使いたい(使用可能な)魔法を選ぶという形式を取っています。
対して、自由度を上げたい、意外なところで魔法を使う発見をさせたい、といった理由から、選択肢以外の方法で魔法を使えるようなシステムを導入した作品もあります。具体的には、巻末に魔法使用マトリクスをつけたり、特殊なパラグラフジャンプの仕組みを取り入れたりといった具合です。
さて、これらの3要素をマトリクスにしてみましょう。(要素が3つなので本当は三次元ですが。。)
習得時期 | 使用タイミング | 魔法を使うためのリソース | ||
体力点等 | ストック | 無制限 | ||
最初から | 選択肢 | ソーサリー!シリーズ ブラッドソードシリーズ |
バルサスの要塞 サソリ沼の迷路 AD&Dシリーズ |
|
システム | パンタクル T&Tソロアドベンチャー |
★ | ★ | |
途中で習得 | 選択肢 |
スーパーブラックオニキス |
魔力の杖 | デレクの選んだ魔法 |
システム | ネバーランドのリンゴ | ドラゴンスレイヤー | エンチャンター ★ |
さて、やはりメジャーなのは、最初から数多く示される魔法の中からいくつかをピックアップして、そのストックでエンディングまで乗り切る形式のゲームブックでしょうか。「バルサスの要塞」と「サソリ沼の迷路」が二大巨塔ですね。富士見ドラゴンブックで公刊されたAD&Dの作品も、元々のAD&Dに倣ってストック制を採用しています。
この形式のゲームブックの長所は、なんといってもキャラビルドが楽しいこと。先の展開を予想して自分の好みの魔法をセレクトする過程がたまりません。体力点が低めだから体力回復の術を多めにピックするなど、ゲーム開始前から戦いが始まっているのです。またリプレイ性が高いのもメリットですね。
対して、このシステムだと基本的に道中に魔力が回復しないので、冒険が進むにつれてリソースが枯渇していき、終盤の盛り上がりに欠けるという欠点があります。キャラの成長要素とは相性が悪く、双方向作品には不向きと言えます。
続いて、最初から全ての魔法を使え、使用にあたり体力点等を必要とするシステム。こちらは「ソーサリー!」が金字塔ですね。ストック式と異なり、ゲーム開始時に魔法を取捨選択する必要はありませんが、同作では48種類もある呪文を把握しておく必要があり、別の意味で準備が必要です。回復手段を用意すればまた魔法が使えるようになるので、先細り感も少なくてすみます。さらに、消費体力点や必要アイテムなどを規定することで、魔法に多段階のレベルを設定することも可能です。
ただし、どの魔法が使えるかはあくまで選択肢次第なので、バリエーションが総パラグラフ数に依存します。魔法の数を増やしすぎると、使いたいのに使えない局面も出てくるでしょう。
「ブラッドソード」シリーズはその辺を割り切っていて、戦闘用の魔法は戦闘中に自由に使える(成功率は低いものの最強魔法も初戦から使用可能!)代わり、非戦闘時の魔法は特定されておらず、魔術師が行動宣言すると状況に合った魔法を勝手に選択する仕組みを採用しています。
主人公の魔法にフィーチャーするほど自由度が下がるというジレンマを克服したのが、「パンタクル」のシステムですね。本作では魔法の数を絞り、特殊なパラグラフジャンプ方式を採用することで、魔法を使える局面の自由度を極大化することに成功しています。
T&T のソロアドベンチャー作品には、魔法を使用した際の効果がマトリクス形式で記載されているものがあります。まあ、純粋なゲームブックというよりはTRPGのサプリメントと考えれば、選択肢に載っていない魔法を使って読者が自分で処理を考えてもいいのでしょうけれどね。
一方、物語の途中で魔法を学ぶタイプの作品はどうでしょうか。こちらは2パターンあり、主人公が成長途上の魔術師か、ないしは魔法を専門にしていないかのいずれかが多いようです。
「エンチャンター」の主人公は魔法使いの見習いで、冒険中にいかに魔法を習得して次の道を切り開くかが大きなテーマとなっています。本作では独特なパラグラフジャンプを採用しており、どのタイミングで魔法を使うかのパズル性も重要な要素です。
拙著「デレクの選んだ魔法」もこのタイプに近いですね。ただし本作では、魔術を使うタイミングはパラグラフジャンプで隠してありますが、使える魔術の種類は選択式です。
「スーパーブラックオニキス」では、主人公は専業戦士ですが、仲間の一人がアイテムを手に入れれば魔法を使えるようになります。基本的に戦闘補助のみで、魔法はどちらかというとオマケとして機能しています。
魔法ではなく超能力ですが、「ゼビウス」もこのタイプ。ただし本作では開始時に1種類だけ超能力を習得でき、何を選んだかによって難易度が様変わりします。
「ネバーランドのリンゴ」の主人公は猫妖精のティルトで、魔法の素質はあるものの素人です。その代わり道中にいくつかの魔法を学ぶチャンスがあり、さらに一度学んだ魔法はゲームオーバー時のリトライでも最初から使うことができるというコンピュータゲーム風のギミックを搭載しています。
「ドラゴンスレイヤー」では魔法やアイテムの所持を、なんと本の該当ページを折ることで管理しています。主人公は序盤で手に入れたアイテムと交換にいくつかの魔法を授かり、戦闘中の攻撃手段として活かすことができます。
……いかがでしょうか?先人達は様々なシステムを開発してきたのですね。
さて、なんで私がこんなエントリを書いたかというと……それは、次回作「オクトシャードサーガ」の魔法システムをどうするかをまだ決めかねているからだったりします。
上の表中の★印が候補なのですが。。。どうぞお楽しみに!