ちゃなのゲームブック

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マーダーミステリーにおける初心者犯人問題への対処法

こんにちわ、ちゃなです。

 

多くのマーダーミステリーは、1人の犯人役プレイヤーと、それ以外の探偵役プレイヤーとの非対称の戦いの構図を持っています。

探偵役はみんなで協力して真相を究明するのですが、犯人役はたった一人でそれを妨害して逃げ切らねばなりません。このため、犯人役をプレイするのが嫌いな方も多いようです。

特に、マダミスが初めて、もしくは数回しか経験していない初心者が犯人役を引いてしまい、うまくウソをつけないままベテランの探偵役プレイヤーにあっさり真相を見破られてしまうと、ゲーム中盤から最後まで延々と皆に糾弾され続けるという、とても辛い展開になることがあります。

犯人役は、仲間がいない、作中で人を殺している、ウソをついて人を騙すという現実の倫理に反する行動を強要される、うっかり大事なことを喋ってゲームを壊しかねないというプレッシャーに苛まれる、といった、心理的負担が非常に強い役職です。

それはマダミスの性質上仕方のないことであり、またそんな極限状況を体感できることがマダミスの醍醐味でもあるのですが……「慣れないうちに犯人やらされてみんなから袋叩きされてしまったから、マダミスは二度とやりたくない」という声もちらほら聞きます。これはとても可哀想だし、勿体ないことだと思います。

(ちなみに人狼ゲームでも同様の展開が起こりえますが、人狼の場合は人狼サイドも複数いて仲間との連帯感があるのと、掲示板型のオンライン人狼ゲームなどでは仲間と相談が出来るので、ベテランプレイヤーから教えてもらえるから却って人狼役の方がやりやすい場合もあります。)

 

そこで、特に初心者向けを謳うマーダーミステリーでは、初心者犯人問題に対する何らかの手当をすることが求められます。

ちゃなは現在マダミスを30本余り体験(視聴も併せると50本近く)した中級者ですが、思うにこの解決策は次のように分類されます。

そしてそのいずれも、マダミス独特の構造に伴う問題点を孕んでいます。

 

(1)犯人役のないシナリオにする

犯人役がきついのだから、真相は事故、自殺、もしくはNPCが犯人というシナリオにする。これなら全員初心者でプレイしても、誰もウソをつく必要がありません。

いきなりトリッキーな解決方法ですが、実際初心者向けを謳うマダミスで目にしたことがあり、うまく機能していました。

難点は、マダミスの基本構造を外しているので、果たしてこんなシナリオが初心者向きと言えるのか、ということ。そして、この方法が普及すると、初心者向き=犯人不在、というメタ推理がはびこってしまうことです。

 

(2)ゲームマスターGM)が個別に希望役職をあてがう

GMがゲームを仕切るのであれば、各プレイヤーに経験や希望役職を聞いて、ニーズを把握してキャラをあてがうという方法があります。シナリオレベルではなく、運用での解決を図るのですね。

店舗でもオンラインでも実際に見たことがあります。

注意すべきことは、各プレイヤーの希望を他のプレイヤーに聞かれないようにすることです。犯人を希望しないと言ってる人がいたら、その人が犯人なわけないですよね。

また、このような采配は、プレイヤーの性格傾向からメタ推理が働いてしまうので、仲間内でのプレイには不向きです。かといって初対面だとGMが各プレイヤーのニーズを把握しづらいので痛し痒しです。GMの負担はかなり大きいです。

私はこのシステムを自作品に導入しようと考えたのですが……もう一つ欠点があります。それはキャラを自分で選択する楽しみを奪ってしまうということです。

勝手知ったるGMが適役をあてがってくれれば良いのですが(ちゃなは何度かこのやり方を体験しましたが、いずれもとても素晴らしいキャスティングをいただきました。感謝!)、自分で自分のかたちを選択できるというのもマダミスやRPGの醍醐味の一つですので、ちょっと勿体ないですよね。。GMが決めるならともかく、システムに決められるのってどうなんだろう……と思って、キャラ割当システムはボツになりました。

 

(3)犯人役のハンドアウトに逃げ方を書いておく

基本的な立ち回り、ウソをついた方が良い点などを、制作者が犯人役のハンドアウトにあらかじめコメントしておくという方法です。いわば犯人役だけ初心者モードでプレイできることになります。この指針は必ずしも守る必要はないので、ベテランならその場でもっと大胆なトリックを考えるでしょう。

これも某作品で見たことがあり、感心しました。

しかし制作者目線ではこれもなかなか厳しいです。シナリオの標準的な展開を完璧に想定して、犯人役が理解できるようにヒントを出してあげなければなりません。また、その方法で確実に犯人が逃げ切れてしまってはならないのです。神の視点を持つ制作者がそのあたりのバランスを取るのは、もはや名人芸だと思います。

 

(4)エンディングで救済する

これはかなりのごまかしなのですが、実は結構有効な方法だと思っています。

犯人がゲーム中に探偵役からフルボッコにされても、エンディングでなんとなくみんな仲良くなったり、犯人側の心境に焦点を当てた後日談を用意することで、カタルシスを与えれば、なんとか丸く収まることが多いものです。

いや、本当ですよ。ふざけているわけではありません。

大事なのは疲弊した犯人役のメンタルを癒やしてあげること、そして、みんなで紡いだ物語に意味を持たせることなのですから。

これは制作者の哲学に依拠する話なのですが、私はほとんどの自作品で、主要登場人物全員がそこそこ幸せになれるエンディングを用意しています。

もちろんそうでない作品がダメだというわけではありません。殺人犯を救済するなんて欺瞞だという考えもあるでしょう。私もプレイする分にはメリバ大好きですし、救いのないエンディングもときには作ります。

まあ、作品の出来不出来にかかわらず、エンディングは丁寧に作り込んでおいて悪いことはないと思っています。

 

(5)初心者お断り

身も蓋もないですが、情報量が多く、犯人役に大がかりな仕掛けやクレバーな立ち回りを要求するシナリオは、初心者には不向きです。

探偵役プレイヤーも歯ごたえのあるシナリオを求めてエントリーするのでしょうから、初めから上級者向けを謳うのも一つの解決策ですね。

マダミスはプレイするまで中身がわからないのですから、Not for me問題はなるべく事前に解決するのが吉です。

 

(6)感想戦

最後に、犯人フルボッコで終わった場合の感想戦には、気を遣いましょう。

ゲームマスターは、とにかく犯人役の健闘を称えてあげることです。

逆に犯人勝利で終わったときも、探偵役が戦犯捜しに走らないよう、誰かの失策ではなく犯人がうまかったのだとまとめてあげるのが良いです。

プレイヤーも犯人を褒めましょう。

私自身、人を褒めるのが上手でないので、なんとかいつも心がけるようにしています。

犯人をするたびに同卓者から篤く労ってもらえるのなら、犯人アレルギーも薄れていくかもしれません。

それが結果的に、マーダーミステリーというジャンルの寿命を延ばすことにもつながるはずです。

 

本日はマダミスの初心者犯人救済についてでした。ではまた。