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「盗賊狩りの財宝迷宮」レビュー

 どうも、ちゃなです。

 

ソーサリアンTEXTに投稿してから、ブログはすっかりご無沙汰していました。

ゲームブック制作は続けていますが、ちょっと方向性を模索中です。

 

今日は神崎マコトさんの新作ゲームブック「盗賊狩りの財宝迷宮」を紹介します。 

盗賊狩りの財宝迷宮

盗賊狩りの財宝迷宮

 

 

構成は107パラグラフ、半双方向。システムはファイティングファンタジーシリーズ(技術点、体力点、運点の3パラメータ)を使用しています。戦闘システムも同様です。

 

主人公は若き盗賊。ある日、盗賊仲間である「早スリのベック」から不吉な話を聞かされます。そして、そして彼から聞いた見世物小屋で主人公が見たのは、大商人ウップルハックの財宝迷宮に忍び込んで囚われた、なじみの女盗賊「猫足のロミーナ」の変わり果てた姿でした……。主人公は復讐のため、財宝迷宮に挑むことになります。

この辺りのプロローグ部分はパラグラフが序盤に固めてあって、無料サンプル版でも楽しめるようになっている辺り、芸が細かいですね。

 

迷宮の中は双方向。つまり、行ったり来たりしながら様々な罠をくぐり抜けてアイテムを集めていくことになります。

 

主人公は序盤で盗賊「シロップ」と出会い、二人で攻略を続けます。迷宮に店を構える魔女から食料を購入したり、ロープを頼りに穴の中に降りて隠された宝箱を引き上げたり、といったシチュエーションは、往年のファイティングファンタジーを彷彿とさせます。

 

しかし本作はそれだけではありません。出てくる敵は「マダムスライム」「影斬り」「引きずり顔」など、一筋縄ではいかない強敵ばかり。罠にかかれば内臓を焼かれたりどろどろに溶かされたりと悲惨な最期を迎えることになります。

 

迷宮の構造はさほど複雑ではないのですが、踏破するためには、くまなく情報を集めた上で、正しいアイテムを順序よく使いこなす必要があります。

暗号や謎解きも登場します。

 

終盤に登場する、ロミーナを破滅させた元凶たる最強のモンスターは強敵です。

さらには、満身創痍となった主人公を嘲笑う、ウップルハックのどす黒い思惑。迷宮内で周到な準備を重ねていなければ、最後の最後で絶望の淵にたたき落とされるでしょう。

 

また、本作ではクリアルートが巧妙なミスディレクションで隠されています。例えば、選択肢を総当たりして本物の宝を手に入れたと思っていても、正しい情報がなければその先にあるもっと大切な宝を取り逃がしてしまったりします。ネタばらしになるので詳述は避けますが、この辺はゲームブック作成の王道を行っています。

また、作者が一番力を入れたという数々のバッドエンドも見どころです。死ぬより悲惨な目に遭うことも多いですが、シロップの意味深なコメントをはじめ、ちょっとした手がかりが得られることもあります。コンティニューシステムも実装されています。

 

私はひとしきり遊んだ後、全パラグラフのフローチャートを作ってみました。公開は控えますが、無駄のないすっきりしたパラグラフ構成で、チャートを見ると起承転結がはっきりと見て取れます。

 

文章は読みやすいですが、残虐描写が多いので、人を選びます。

ちょっと引っかかったのが、主人公の台詞です。シロップと口調が被るので、誰が喋っているのがわかりづらいところがところどころありました。

 

グロテスクな独特の世界観、107パラグラフを使い切った緻密な設計、一筋縄ではいかない登場人物達。とても完成度の高い作品でした。