こんにちわ、ちゃなです。
ゲームブックと言えばパラグラフ。
ほとんどのゲームブックでは、1から順番にパラグラフが振ってあり、読者は文中の指示に従ってあちこちのパラグラフに飛びながらストーリーを読み進めていきます。
通常は最終パラグラフにエンディングがありますが、そうでない作品もあります。
パラグラフ数は作品の長さと規模を示す指標にもなっています。「ファイティングファンタジー」シリーズでは400パラグラフを基本としていました。これは小説でいったら中編程度に該当する文章量です。最近では100パラグラフ未満の気軽に読める短編が少し流行っています。100パラグラフだと一冊の本にするには短すぎますが、キンドルをはじめとする電子書籍では単行本として出版することが可能ですし、FT書房さんのようにいくつかまとめて「短編集」として公刊されることもあります。
逆に1000パラグラフを超えると大長編ということになりますね。商業作品では「ネバーランドのリンゴ」シリーズと「かえる沼を抜けて」など、数えるほどしかありません。
さて、そんなパラグラフ、またはパラグラフ番号という概念を廃したゲームブック作品をご存じでしょうか?
「パラグラフのない本をゲームブックとは言わない」というご意見もあるかもしれませんが、ここではそういったゲームブックの定義には踏み込まないことにします。
「シャーロックホームズ 10の怪事件」
ベーカー街の探偵をモチーフにした作品です。続編「呪われた館」「死者からの手紙」も出ています。
本作ではあなたは事件を捜査するために新聞と住所録(本物そっくりに作ってあります!)を読み解いて、手がかりのありそうな番地を探して、その番号に進むことができます。いくつ調べても構いませんが、無駄が多いと最終得点が下がってしまうことになります。そして、事件の真相を暴いたと思ったら解答編に進んで答え合わせ。
細部まで作り込まれたベーカー街と、原作に勝るとも劣らぬホームズの推理の切れが味わえる名作です。
「Meanwhile」
Meanwhile: Pick Any Path. 3,856 Story Possibilities. (Top Ten Great Graphic Novels for Teens)
- 作者:Shiga, Jason
- 発売日: 2010/03/01
- メディア: ハードカバー
本作は英語のマンガ本です。
読者はコマの指示に従って読み進めていき、主人公の少年の行動を決定します。
変わっているのが、選択肢を選ぶとき。ページの終わりでこれぞと思うタブを選んでめくると、ストーリーがつながっていきます。一見、迷路みたいに見えますね。
ストーリーはタイムマシンと量子力学を扱ったもので、子ども向けかと思いきや結構歯ごたえがあります。
「寄生木の夜」
おいしいたにしさんの作品です。
本作は変わっていて、通常のパラグラフの代わりに、「作中人物名+時刻」という形でパラグラフが並んでいるのです。(通常パラグラフのセクションもあり)
主人公は、名前を知っている人物とすれ違ったら、相手に乗り移ることができます。例えば、Aに憑依していて「A:午前9時」の中にBとすれ違ったら、「B:午前9時」にジャンプするという感じです。
このやどりぎシステムが、世界観とストーリー、そしてメモ不要のパラグラフジャンプシステムと完全に噛み合っていて、唯一無二の作風を生み出しているのです。
「護国記」
このブログの読者さんにはおそらくおなじみ、波刀風賢治さんの超大作。
本作の構成自体はおそらく通常のゲームブックと同じです。ただし、選択肢にはパラグラフが書かれておらず、選択肢を直接タップした飛び先にもパラグラフ番号はありません。「ナンバーレスパラグラフシステム」ですね。つまり、意図的にパラグラフ番号を隠しているのです。電子書籍だからこその仕掛けです。
その目的はおそらく二つ。一つは、パラグラフ番号というメタ要素を隠すことにより読者の没入感を深めること。そしてもう一つは、どこで物語が分岐したかを明示しない「シームレスフラグシステム」の隠れ蓑としての効能です。
本作はとある要素をプロットに盛り込んでいるので、同じ(または類似した)内容のパラグラフの繰り返しが読者に気づかれないことが重要なんですね。もし本作にパラグラフ番号を付したら、せっかくの壮大な作風がむしろうざったく感じられてしまうかもしれません。
いかがだったでしょうか?
パラグラフのないゲームブック、もっともっとたくさんあるはず。。。
ただ、そういう一風変わった作品は紙媒体を上手に活用していることが多く、あまり即売会に行かない私はなかなか巡り会うことができません。
面白い作品があったら、是非教えてくださいね。