こんにちわ、ちゃなです。
ゲームブック作家を名乗っていながら、実は最近あまりゲームブックを読んでいない(積ん読はいっぱいある)のですが。。
代々木丈太郎さんの新刊、「口裂け少女のゲームブック」をプレイしました!
代々木さんは以前にもご紹介したことのある、長らくゲームブックの普及活動に努めていらっしゃる方です。
本作は100パラグラフ余の単方向作品です。サイコロ・筆記具不要。フラグ管理なし。つまり、ただ読み進めて選択肢をタップしていくだけの簡単仕様。
主人公は小学生の男の子。ある日、マスクをした可愛い少女に会うところからお話はスタートします。しかしその少女は……!
この作品、正直に言うと、前半はかったるいです。
選択肢を一つ間違えるとゲームオーバー。理不尽なエンドも多い。ストーリーはなかなか進まない。どんな風に面白くなるのかさっぱりわからない。
私はたまたま電車内で手持ち無沙汰だったので読み進めましたが、もう少しでそっ閉じするところでした。
ただ、そんな前半でも、少し引っかかるところがありました。
それは、怪奇ものを臭わせながら、設定が妙に現実的なところ。
法律の話とか出てきます。
代々木さん、以前に交通法規をテーマにしたゲームブックを執筆されています。(私は運転できないので実は読んでないのですが。。)
ご都合主義でない、徹底的に現実に即した設定が氏の真骨頂なんですよね。
そうすると、この口裂け少女の正体が、気になってきます。
ただホラーにわーきゃーする作品ではありません。というか、ホラーとしては描写があっさりしすぎてて旨味がありません。
わかるようでわからないゲームオーバーの山を越えると、ようやく主人公と少女の交流が始まります。
そして舞台が展開。
小田急線とか出てくるのは代々木さんらしいなあ、とか勝手に思いつつ。
登場人物が少し増え、怪奇もの一発ギャグは、児童文学のような広がりを見せ始めます。
白状してしまうと、この辺からちゃなは選択肢を選ばずただ通読を始めてます。相変わらずよくわからないゲームオーバーが多いんですもの。気短な方には、ゲームブック作家にあるまじきことですが、ちゃなはズルを推奨します。
そしてクライマックス。
何度か、目頭が熱くなりました。
いわばネタバレ、そして解決編に当たるパート。
甘さがまったくないんです。作者自ら、難題に対する実現可能性のある回答を示しています。
ゲームブックのシステム論的にはここまで特に見るべきものはなかったのですが、ここで初めて二つのギミックが出てきます。
一つは、ちゃなもよく使う技。賛否は分かれますが、本作ではこれがゲームブックたる所以というところで投入されています。
そしてもう一つは、ちょっとびっくりしました。初見というわけではないのですが、他のどの作品で出てきたか、ちょっと思い出せない。「読者が決める」という、ゲームブックのテーゼを前面に押し出したギミックです。
そしてエンディングへ……。
堪能しました。
代々木さんがゲームブックという媒体で何を表現したかったのか、そしてなぜゲームブックでそれを表現したかったのか、ようやくここで思いが伝わりました。
本作はキンドルアンリミテッドの対象なので、契約者はタダ読みできるのですが、序盤のたるさで力尽きてしまうのは勿体ないです。
パラグラフがあまりシャッフルされてないので、試し読みで読める範囲はたるい部分だけだと思います。
ここ、惜しいなあ。。
いわゆる「面白い作品」とは大分異なります。
ちゃなは大人ですが、果たしてこの少年のグッドエンドのように行動できるだろうか、とちょっと自分が恥ずかしくなりました。
そんな作品です。