どうも、ちゃなです。
ゲームブックは読者が分岐を選んで読み進めていくものです(いわゆるパズルブック的なものは別とします)。したがって、ほとんどのゲームブック作品では、各パラグラフのつながりをフローチャートにすることが可能です。
チャートはゲームブックのプログラムそのものであり、ゲームブック作家からすると、チャートを作成することは、ゲームブックそのものを執筆するための最も重要な行程です。
逆に読者としては、作品からチャートを作ることは、ゲームブックの構造を解析することにつながります。言わばゲームソフトをハッキングしてプログラムやアルゴリズムを分析するようなものです。
安田均先生の「ゲームブックの楽しみ方」は、スティーブ・ジャクソン氏とイアン・リビングストン氏の作品の魅力を存分に語った名著ですが、同書の最後にもいくつかの作品のチャートが掲載されています。
チャート解析は、ゲームブックに対する究極の愛情表現とも言えますが、一方で作品の寿命を縮める行為でもあります。出版されたばかりの作品のチャートを第三者が公開するのは、コンピュータゲームのチートコードを教えるような行為ですので、慎重にならねばなりません。
一方で、チャートを作成することによって、今まで見えづらかった作品の魅力が見えてくることもあります。中には、チャートを作らねば攻略自体が困難な難問ゲームブックもあります。
このブログでは、主に絶版や歴史的な名作ゲームブックについて、その魅力を掘り尽くす目的から、チャートを解析する試みも行いたいと思います。
ここで紹介するのは、「スーパーマリオブラザーズ外伝」。ファミコン作品のゲームブック化の黄金期に 出版された一作です。
本作の特徴は、全編がコミックになっていること。1ページが1パラグラフに相当します。
そのため総パラグラフ数は215と少なめになっています。
話が展開する場面では何ページか連続して読み進めるので、体感的には100パラグラフ程度に感じます。
ストーリーは、クッパ亡き後、その息子ガルッパがキノコ王国を支配するべく陰謀を繰り広げるというもの。オリジナルキャラクターも多数登場します。実はマリオの活躍で不幸な目に遭っていた人がいたり、敵軍の中にも相容れない関係の者がいたりと、一見子供向きな体裁とは裏腹に、ハードでしっかりした物語性が魅力です。
システム面は、同シリーズではおなじみの方式を踏襲しています。開始時に、体力、戦闘力、魔力にパラメータを割り振ってマリオの能力を決め、戦闘はあらかじめ作成した乱数表によって解決されます。アイテムもキノコやフラワーをはじめとして十数種類も登場します。
さて、チャートを見てみましょう。
はい、見てみましょうと言っても、細かすぎてよくわかりませんね。。。
ただ、シンプルな一本道になっているのはおわかりいただけるかと思います。
黄色のパラグラフは、踏んでしまうと必ずバッドエンドになるルートです。
青は必須アイテムの手に入るパラグラフ。緑は時間経過パラグラフで、踏みすぎるとタイムオーバーになります。
本作では、終盤に4色の水晶がないとクリアできません。うち2つは必ず入手できますが、中盤で選択を間違えると、1つを手に入れそびれます。その選択肢が、逃げるか城兵に従うかという、判断の分かれそうな分岐なので、そこがちょっとだけ意地悪です。
また、本作は個々の戦闘で負けた場合パラメータにダメージを受けて続行というパターンが多いのですが、序盤で一カ所、負けると水晶を取り逃がすところがあります。ここに引っかかると最後で詰んでしまいます。
そして、終盤で強敵と戦う場面では、戦闘に負けると赤水晶が砕け散り、そのお陰でマリオは辛勝を得ます。しかし赤水晶は必須アイテムなので、結局最後にバッドエンドになります。しかしこれはこれで一度は踏んでおきたい印象深いシーンになっています。
本作は、3つのパラメータに数多くのアイテム、時間制限と、少々システムを詰め込みすぎて消化しきれていない感があります。選択肢によって展開が変わるところは多くなく、ゲーム性はあまり高いとは言えません。中盤の迷路だけが妙に複雑になっていて、ストレスフルに感じます。このように、チャートを見ることによって、本作の問題点が浮き彫りになります。
他方、本作は意外にも重厚なストーリー展開が魅力で、コミカルだけど結構頭もいいマリオをはじめ、敵役の黒騎士アーノルド卿やゴーゴンなど、味のあるキャラクターや名場面が満載です。これらを文章だけで表現したらかなりの容量になったはずで、コミックという表現形態に非常に良くマッチしていたといえます。その意味で、私のお気に入りの作品の一つです。
実際評判も良かったようで、続編も出ています。私は買いませんでしたが、本屋さんで夢中で立ち読みした記憶があります。