どうも、ちゃなです。
お久しぶりになってしまいました。皆さんゲームブックやってますか?
お陰様で発売後2年近くになる拙作はまだ売れています!
ところで、ゲームブックを読む際に、皆さんはルールを完全に守っていますか?
多分、そういう人ってむしろ少数派じゃないかなって思うんです。
ファイティングファンタジーシリーズなど、幾つかのゲームブック作品は、iPadのアプリなどでもリリースされています。しかし、ゲームブックを本のまま読むのと、アプリでプレイすることには、大きな違いがあります。
それが「ずる」ができるかどうかです。
アプリだと、途中でヒットポイントがゼロになれば強制的にゲームオーバーです。進めないパラグラフに進むこともできません。(無敵モードなどの仕様が搭載されている作品もありますが)
コンピュータゲームでは、いきなりエンディングを見ることはできませんが、ゲームブックならそれも可能です。
「ずる」ができるのは、本の形態を取っているゲームブックの専売特許であるわけです。
今回は、ゲームブック攻略における様々な「ずる」、もしくは裏技について、ちょっと考えてみます。
「ずる」と言っても、ちょっとしたショートカットから、ゲームの屋台骨を揺るがすレベルのものまで、様々です。どの手法を用いるかによって、楽しみ方が大きく変わってきます。
(1)指セーブ
これは、ゲームブックを読んだことのある方なら、誰でも経験したことがあるんじゃないでしょうか?
選択肢に迷った時、そのパラグラフに指を挟んでおいて、先に進んでみて、結果が思わしくなければ戻って別の選択肢を選ぶ、というものです。
指セーブは、「グラスに入ったワインを飲むか、飲まないか」といった、選択の結果がすぐにわかるような場合に向いています。
逆に、「右に行くか、左に行くか」という場面で指セーブして右に進んでも、飛び先で今度は「右に行くか、まっすぐか、左に行くか」みたいに分岐していると、困ってしまいますよね。
何度も指セーブをして、指が足りなくなってしまうのは、「ゲームブックあるある」といえます。
指セーブはお手軽な「ずる」の手法ですが、作者目線で見ると、指セーブが頻回に行われるようなゲームブックは、良くも悪くも底の浅い作品であるように思います。
選択の結果がすぐに判明するので、正しいルートを探し出すのが容易なのです。
短期間で楽しめる一方、リプレイアビリティは低くなります。
逆に、選択の結果がすぐには判明せず、フラグなどによって後々になって響いてくるような作り付けにすると、深みのある作品になります。一方プレイする側としては、指セーブが通用せず、自分の選択が正しかったか否かがすぐにわからないので、少ししんどい思いをすることになります。
(2)無敵モード
これもスラングになっているほどに有名な方法です。
ファイティングファンタジーなど、主に戦闘の結果をサイコロで決めるゲームブックの場合、すべて読者に有利な展開になったと仮定しながら進めることを言います。
要は、戦闘は全部無傷で勝利したことにしてしまうということです。
無敵モードを導入すると、正しい道のりを進んでいるのに運悪く死んでしまったという展開を避けることができます。
また、ヒットポイントを記録しなくて済むので、プレイアビリティが上がります。フラグやアイテムなどが少ない作品なら、鉛筆なしで読めるようになります。移動中に読みたい場合に有効ですね。
さらに、サイコロを振る手間も省けます。とにかくお気楽にプレイしたい方向けの方法です。
途中まではフェアにプレイしていて、もしも死んでしまったらヒットポイントを全快してそのまま続けるというのも、変則的な無敵モードと言えるでしょう。格闘ゲームでいう「難易度を下げてコンティニュー」です。
無敵モードは、一部のコンピュータゲームでも公式チートとして導入されています。ストーリーやグラフィックに集中してエンディングを迎えることができるのは有り難いですよね。お金を払ったのに最後までプレイできないのは悔しいですから。
他方、一度使ってしまうと、全うに攻略する気が失せてしまうのが無敵モード。作品の寿命を短くするという大きな副作用があります。
私自身は、子供の頃は死ぬのが悔しくて常に無敵モードでプレイしていましたが、最近は逆にフェアにプレイすることが多いです。
個人的には、この指セーブと無敵モードは、「ずる」というよりは「変則的攻略」かなと思っています。やったことのない人はほとんどいないんじゃないかな?
続いて、特定の名称は思い当たらないものの、ごく軽いチートを二つ。
(3)パラメータチート
主人公の能力値をランダムに決める場合など、最高値が出たことにしてプレイすることです。
無敵モードよりも緩い「ずる」ですね。
ファイティングファンタジーシリーズの名作「死の罠の地下迷宮」などは、能力値の低い主人公では事実上攻略不可能になっていて、かの安田均氏もパラメータチートを推奨しているほどです。
チートではありませんが、コンピュータRPG等で、初期値を何度も振り直して高い能力値が出るまでチャレンジするというのは、よくやることですよね。「バルダーズゲート」シリーズはゲームバランスが厳しくて、一キャラ作るのに一時間かけるなんて人もいます。ソーシャルゲームの所謂リセットマラソンもそれに近いかもしれません。
(4)予知夢
ゲームブックを読んでいると、つい隣の関係ないパラグラフを読んでしまうことがあります。
そのとき、重要な情報が目に入ってしまったら……。
例えば、銀の弓矢で敵を倒した、という描写を目にしてしまったら、次に入った店では銀の弓矢を買いたくなりますよね。
これは「ずる」と言えるかどうか、微妙なラインです。
予知夢とか、パラレルワールドからの干渉ということでオーケーではないでしょうか。
同じように、一度ゲームオーバーになって最初からプレイし直す時には、「前世の記憶がある」ということで、以前の失敗体験を活用して進んでいくことでしょう。
さて、ここからは少し「ずる」の次元が上がります。
(5)パラグラフサーチ
暗号などを解かないと先に進めず、飛び先が明示されていない場合に、頭から本を読み直して飛び先を調べるやり方です。
例えばソーサリー3「七匹の大蛇」では、終盤の強敵を倒すためのアイテムを手に入れても、そのアイテムに示される数字を見出さなければ使いこなすことができません。私はこのとき、1から順に全部読んで、正解のパラグラフを見つけ出しました。
七匹の大蛇―ソーサリー〈03〉 (Adventure game novel―ソーサリー)
- 作者: スティーブジャクソン,Steve Jackson,浅羽莢子
- 出版社/メーカー: 創土社
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拙著「デレクの選んだ魔法」でも、究極のエンディングにたどり着くために、とある座標を見出さねばなりません。パラグラフサーチで攻略が可能ですが、この謎解きには本作の世界観の本質が詰まっていると言っても過言ではありませんので、是非チャレンジしてみてください!(宣伝です)
個人的には、このパラグラフサーチで強引な攻略が可能なところが、ゲームブックのゲームブックたる所以であり、プレイアブルメディアとしての「優しさ」じゃないかな、と思っています。
謎解き系のアドベンチャーゲームとかは、謎が解けないとそこで完全に行き詰まってしまうわけです。あるいは降参ボタンを押して作者に答えを教えてもらうしかありません。ゲームブックなら、自力で本を読むという作業を経て答えにたどり着き、もしかしたらなぜそれが正解なのかにも思いが至るかもしれません。これは、ゲームブック以外では味わえない感覚と言えるのではないでしょうか。
(6)フラグチート
必要なアイテムがないのに、ある振りをして進めることです。
こうなると完全に「ずる」ですよね。
戦闘で死ぬのでなく、アイテム不足でデッドエンドになるわけですから、それまで読者が通ってきた道筋に何らかの間違いがあったわけです。
店で買うアイテムを間違えたというならともかく、正規のプレイで見たこともないアイテムを実は持っていたことにするとなると、ストーリー的にも整合性が取れなくなることがあります。
まあ、これはあまりお勧めできない「ずる」になるかなあ。
とにかくどうしてもエンディングが見たい方向けです。
(7)ワープ
指示されていないパラグラフに飛ぶことです。
これはもはや攻略とは言えません。禁じ手です。
でも、長い作品の場合、ふとパラパラとめくっていて気になるパラグラフが見つかることってありますよね?ついそこからプレイしてみたくなることも。。。
ちょっとだけ、覗いてみるのは、ありかもしれませんね。
作品によっては、ワープ専用のパラグラフが用意されているものもあります。
大抵はチート対策のちょっとしたジョークになっていて、例えば「君は遂に財宝にたどり着いた!」→「引っかかったな。このパラグラフには絶対にたどり着けないはずだ。ずるはやめたまえ!」みたいな展開です。まあ、ずるをすることで初めて楽しめるパラグラフであるとも言えます。
さらに、詳細は言えませんが、ワープを攻略に取り込んだゲームブック作品も存在します。
(8)チャート解析
頭からお尻まで読み解いて、フローチャートを作ることです。
もはや「ずる」ではなく、「ハッキング」ですね。
どうしても攻略できない高難度のゲームブックに対して行うこともありますが、どちらかというと「研究」目的の方が多いかと思います。
私もこのブログで幾つかお示ししていますが、チャート解析することによってゲームブックの構造が可視化され、作者の思惑や作品のキモがより明確になります。作品の寿命を使い尽くすことになりますが、ある意味究極の楽しみ方でもあります。
手軽に解析ができるのもゲームブックの良いところですね。コンピュータゲームでは困難ですし場合によっては法に触れるおそれがありますから。
いかがだったでしょうか?
あえて「ずる」という書き方をしましたが、私自身は、読者が「ずる」ができるのもゲームブックの醍醐味だと思っています。
ソーサリアンTEXTはネット上のゲームブックですが、パラメータチートや無敵モードを人力でできる仕様になっています。これにより読者は気楽に攻略ができ、作者もオリジナルのルールを導入しやすくなっています。
各々が自分に合ったやり方で楽しむのが良いと思います。