ちゃなのゲームブック

ゲームブック作家「ちゃな」のブログです。Amazonキンドルで「ネイキッドウォリアー」等販売中!

新作予告

どうも、ちゃなです。

 

ここしばらく、新作ゲーブックの執筆を優先させていて、ブログがすっかりお留守になってしまっています。すみません。

 

で、その新作ですが、ようやく形になってきました。おそらくあと1〜2ヶ月以内には刊行に漕ぎつけられるのではないかと思っています。

 

もう大幅な変更はないと思うので、その新作について、宣伝がてらちょっとだけ顔見せしておきますね。

 

(1)テーマは「魔法」

ツイッターでは何度か言っていますが、次回作のテーマはズバリ魔法です。

魔法をテーマにしたゲームブック作品というと、まずはスティーブ・ジャクソン氏の「ソーサリー」4部作、次いで鈴木直人氏の「パンタクル」シリーズですね。

 

ファイティングファンタジーシリーズでは、私のブログでもご紹介した「バルサスの要塞」のほか、「サソリ沼の迷路」「恐怖の神殿」でも魔法を扱っています。

 

マイナーですが、「エンチャンター」も私にとってはインパクトの強い作品でした。

エンチャンター (アドベンチャーノベルス)

エンチャンター (アドベンチャーノベルス)

 

 

次回作では、主人公は作品内でいくつもの魔法を学ぶことになります。

その数は総勢12種類。

これは、書いてみて思いましたが、単発作品としては限界レベルです。「バルサスの要塞」も「サソリ沼の迷路」も12種類ですね。「パンタクル」では主人公が初めから大魔術師という設定なので敢えて15種類に設定したと鈴木直人氏が語っています。

パンタクル1 メスロンサーガ (幻想迷宮ゲームブック)

パンタクル1 メスロンサーガ (幻想迷宮ゲームブック)

 

 

今回、主人公は初めから魔術師だったわけではありません。すべての魔法を極められるかは、あなたの選択次第です。それどころか、一つも魔法を習得せずにエンディングにたどり着くことも可能です。

 

(2)600パラグラフ、単方向、マルチエンディング

これまで私は100パラグラフのミニゲームブックを3作品上梓してきました。

100パラグラフは作るのも読むのも手頃ですが、やはり大仕掛けを作るには物足りません。

次回作は堂々の600パラグラフです。

また、私の信条として、一つの流れをいくつものパラグラフに分けたり、同じ内容を別のパラグラフで繰り返したりということはしていません。そのため、パラグラフ数以上のボリュームを感じるのではないかと思います。

単方向か双方向かと言われると、基本的には単方向なのですが、一捻り加えてあります。これは解説イコールネタバレになってしまうので、是非製品版でお確かめください。

そして、マルチエンディングですね。パラグラフ600にあるハッピーエンドがすべてではありません。真のエンディング、そして「超エンディング」「裏エンディング」までご用意しています。真エンドは誰もが納得できるハッピーエンドですが、超エンドは私から読者の皆さんへの挑戦状です。裏エンドはちょっとしたおまけです。これら以外にも、人によってはより自分らしいエンディングを見つけられるでしょう。主人公が死んでしまうバッドエンドは少なめです。

 

(3)裏のテーマは「後悔」そして「人生」

これはもう蛇足みたいなものですが、次回作では主人公の半生をそのまま描いています。前半で主人公は魔術を学び、後半でそれらを使いこなして困難に立ち向かいます。お悩み相談からダンジョン探索、都市経営まで様々なクエストが用意されています。悪への誘惑もあります。そして主人公は見果てぬ夢を追い求めて危険な旅に出ることになります。

お読みいただければわかってしまいますが、以前このブログでご紹介した「魔法の王国」3部作にはかなり通じる部分があります。ハリー・ポッターぽいと言われるかもしれません。物語世界で起きそうなこと、主人公がやりそうなことをすべて詰め込んだら、こうなってしまいました。

是非主人公の人生を体感してみてください。

 

(4)世界はネイキッドシリーズと共通

次回作は、実は「ネイキッドウォリアー」と世界観を共有しています。時代的には同作の20年前になります。

そして、主人公は、同作に登場するあの人ですよ!

ネイキッドシリーズ3部作に出てきた人物も何人か登場します。

とはいえ、3部作を知らなくても、プレイするのに全く問題はありませんのでご安心ください。

開発コードネームはNW4、当初のタイトルは「ネイキッドウォリアー外伝」だったのですが、外伝が正伝の6倍のボリュームというのもアレなので、やめにしました。

 

さて、いかがだったでしょうか?ご託はいいから早くリリースしろというご意見、謹んでお受けします。執筆はいよいよクライマックスです!

「エリザベス姫と古びた城 ナゾトキブック」レビュー

どうも、お久しぶりのちゃなです。

 

新作ゲームブックの執筆にかかりきりで、ブログの更新がすっかり滞ってしまいました。

私はブロガーではなくゲームブック作家なのでそれは仕方ないと思っているのですが、ここしばらくアウトプットに偏ってしまい、インプットがすっかりおそろかになってしまっているのが問題です。インとアウトのバランスには常に気を配っておかないと、時代に乗り遅れたりアイデアが枯渇したりと、ろくなことがありません。。。

 

さて、前回ご紹介した幻想迷宮書店さんのナゾトキブック「Domino」ですが、早くもシリーズの続編が出ました。 

エリザベス姫と古びた城 ナゾトキブック (幻想迷宮ゲームブック)

エリザベス姫と古びた城 ナゾトキブック (幻想迷宮ゲームブック)

 

 

「エリザベス姫と古びた城」いかにもメルヘンファンタジーなタイトルですよねー。早速プレイしてみました。

 

本作も舞台はイングランド。時代は明示されていませんが、15~17世紀くらいかなと思います。

主人公はマスタッシュ伯爵家に仕え始めたばかりの新米従者です。ここのご令嬢であるエリザベス姫は、可愛いけどわがままでとってもおてんば。いつもメイドや従者を振り回して遊んでいるのです。

主人公は、「東にある謎の古城に、魔法が使えるようになる魔導書が眠っている」という噂に魅せられたエリザベス姫に付き合わされて、冒険に出かけることになります。

エリザベスたちは古城でアネットという名の小さな少女に出会います。ところがそこから先が大変です。次々と襲い来る謎をすべて解き明かし、エリザベスは果たして魔法を使えるようになるのでしょうか?

 

このように書くと、シンプルなメルヘン物語ですねー。実際、本作のストーリーは和気藹々とした雰囲気で進んでいきます。しかし、終盤でエリザベスとアネットが見る光景は、鮮烈な驚きともの悲しさに満ちています。

少ないながらも物語には分岐があり、エンディングもいくつか用意されています。

 

謎の種類は、約20種類。ストーリーの長さとちょうどマッチするくらいです。本作は、「Domino」に比べると、謎のバリエーションが多く、ひらめきを必要とするものから論理的に突き詰めて解くタイプまで様々です。ただ、全体としてはひらめき系が多い印象がありました。前作ではひとつひとつ可能性を潰していけば答えが見えてくる謎がかなりありましたが、本作の謎の多くはただ唸っているだけでは全然ゴールに近づけません。全体としての難易度は前作より低いかと思いますが、苦手な人はちょっと辛いかもしれませんね。

 

実は私、最初の謎でいきなり撃沈しました。あと一歩、答えが目の前にぶら下がっているのに見落としてしまったんですねー。答えのページを見た瞬間、「あ、やられた!」と思いましたよ。

他に2~3、自力で解けない謎がありました。

中でも最終問題は、これもほぼわかっていたのに最後の一押しができずに詰まってしまいました。もう少しゆとりを持って考えていたら、解答を見ずに粘っていたら、と後悔することしきりです。この謎は自力で解けるととても感動するタイプだと思うので、未読の方はぜひ最後まで諦めずに挑戦してみるといいと思います。

 

本作はマルチエンディングですが、私は、正統なエンディングよりも、強引に決着をつけてしまうエンドの方が胸に刺さるものがありました。また、明らかにバッドエンドといえるものにも、それぞれ独特の味がありましたね。

 

それにしても作者のマスタッシュさんは、この作品を3ヶ月くらいで作り上げたようです。ものすごい速さですね!私も見習いたいものです。

「Domino ナゾトキブック」レビュー

どうも、ちゃなです。

 

幻想迷宮書店さんから期待の新刊、「Domino ナゾトキブック」が発売されました! 

Domino ナゾトキブック (幻想迷宮ゲームブック)

Domino ナゾトキブック (幻想迷宮ゲームブック)

 

 

本作は、ゲームブックの体裁をとっていますが、いわゆる脱出ゲーム的な色彩の強い作品です。

読者は主人公になりかわって、出題される謎を解きながら、先に進んでいきます。

途中で選択による分岐も若干出てきて、ストーリー展開が大幅に変わることもあります。

 

作者はニチョ謎さんです。

www53.atwiki.jp

 

謎解きがメインということで、ストーリー性はあまり強くありません。導入は、お金に釣られて訳のわからない実験に参加させられるという、定番のものです。

でも、後半に入ると、主人公と深いつながりのある登場人物が何人か出てきて、助けるか見捨てるかの選択を迫られたり、お互いの裏事情が明かされたりと、わくわくさせられる要素もあります。謎に比べて強くないというだけで、決してとってつけたようなストーリーではありません。全編通じて、タイトルである「ドミノ」の意味を考えさせられるようになっています。

 

そして謎解きですが、本書では「検索システム」を用いて答え合わせをしています。

読者は謎を解いたら、「正解はセイカイ」といったような形で電子書籍リーダーで検索をかけます。当たっていれば、続きのストーリーのページがヒットするという仕組みです。

従来のゲームブックでいう(隠された)パラグラフジャンプに似た仕組みですね。パラグラフジャンプだと、解答を数字にしなければなりませんが、検索システムではあらゆる単語が解答にできるので、より柔軟に謎を設定できます。そして、それぞれの謎の答えも、非常に意味深なものになっていて、雰囲気によくマッチしています。

 

もちろん、全編通読すれば正解は判明しますし、解説セクションもきちんと収載されています。

 

謎の数は、あまり多くありません。しかし、最終問題では度肝を抜かれます。最近ではこういうギミックもたまに見かけるようになりましたけど、すべての謎に意味があり、かつ表だけでは真実が見えてこないという、この最終問題の完成度の高さはハンパないです。

 

ただ、本作はやっぱり紙の本で読みたかったかなー、と思います。コピーを取ったり書き込んだりして試行錯誤するタイプの謎は、どうしても紙の方が扱いやすいんですよね。

私は最終問題以外は紙とペンなしで解きましたが、最終問題はとても無理でした。(というか、実は最終問題は紙とペンを使っても結局解けず、正解を読んでしまいましたが……)

 

電子書籍で謎解きというジャンルに挑戦し、検索システムを活用するところは非常に斬新でしたが、謎の性質も電子書籍に合わせていたら、もっと良かったのではないかと思います。

 

あと、本書はマルチエンディングになっています。個々の謎が解けなかったときのバッドエンドも、結構凝っています。ノーマルエンドだけ見て読み終えた気になっていたら、本書の三分の一も楽しめていませんよ?

 

キンドルで謎解きゲームブックというジャンルに大胆に挑戦した意欲作でした。

主人公たちには幸せになってほしいなあと思います。

「ネイキッドウォリアー」チャート解析

どうも、ちゃなです。

 

ゲームブックフローチャート解析シリーズ、第9回は遂に私の処女作「ネイキッドウォリアー」です。

すべての所持品を失った状態で街全体を駆け巡るレースに挑む、名も無き女戦士の物語です。

100パラグラフ単方向作品で、フラグ管理は武器・鎧・靴の3種類のアイテム管理だけと、とてもシンプルな構造になっています。

ネイキッドウォリアー (ちゃなのゲームブック)

ネイキッドウォリアー (ちゃなのゲームブック)

 

 

では早速チャートを見ていきましょう。

実は本作は「The Gamebook Authoring Tool」を用いずに制作しました。MS Wordベタ打ちで、パラグラフシャッフルも全部マニュアルでやったんですよねー。なのでこのチャートは、本エントリのために新たに作成したものです。

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100パラグラフで、パラグラフ内分岐などのギミックも入れていないため、非常に単純な構造をしています。

ぱっと目立つのはデッドエンドの多さですね。100パラグラフ中、実に21パラグラフがバッドエンドになっています。

緑のパラグラフはグッドエンドです。5つあり、うちパラグラフ100が一応真のエンディングという扱いになっています。

 

序盤は、スタート地点の闘技場を出て武具を選ぶところまでです。

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幾つかの装備のセットを選択するチャンスがありますが、まったく選ばないで先に進むことも可能です。武器防具を一切取らなくてもクリアできるのがネイキッドシリーズの特徴にもなっています。

 

ジョーや聖者ジャナリスと下手にやり合ったりしなければ、この段階でバッドエンドに至ることはありませんし、詰むこともありません。

一方で、真のエンディングに向かうためには、「血塗られたダガー」が必要になります。したがって最初の選択肢でガンツォとやり合ったりしたら、もう取り返しはつきません。

 

(追記:ちなみにここにはバグというか裏技が一つあり、ジャナリスにダガーを譲って他の箱を選ぶと、最初の箱から手に入れた革の靴を装備したままもう一つ別の箱を選ぶことができます。箱は一つだけというルールですが、見逃されたようですね。。。)

 

闘技場を出た主人公はチェックポイントに向かって走ることになります。

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パラグラフ39で、大通りか裏道か、あるいは北門を抜けるか、大きな分かれ道があります。所持品により、どの道が有利かが変わってきます。

 

北門を抜けたのでなければ、中盤にガンツォを倒すチャンスがあります。しかし、それなりの装備がなければ返り討ちに遭いますので先を急いだほうが無難です。とは言っても、罠は警戒しなければなりません。

 

パラグラフ91は、必ず通ることになる庭園のチェックポイントです。ここで帰り道を選ばなければなりません。

ガンツォを倒してスウィフトブーツを入手していれば、細い道でもゴールできますが、ブーツがなければ時間切れになります。

住宅街を抜けると、ジョーとのデッドヒートになります。サンダルや具足では話になりません。靴か裸足の場合、ジョーを倒すか逃げ切るかの判断を迫られます。分岐は少々複雑ですが、基本的には、装備が強ければ戦いを、裸なら走り続ける方を選ぶのが正解です。

川下りを選んだ場合、武器か鎧を持っていればゴールまで一直線です。

 

ゴール後にエンディングの選択になります。

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 パラグラフ76で勝ち名乗りを受けた後は、事実上エピローグです。血塗られたダガーを持っていれば真エンド、ドレスを着ていればハーレムエンド、魔法の槍かミスリルの鎖帷子を持っていれば近衛兵エンドへの道が開けます。ガンツォを倒していれば復讐エンドに進めます。いずれもなければ素直にノーマルエンドに進みましょう。

 

パラグラフ100で種明かしがありますが、真エンドに進むためには作中で一度も鎧を装備してはいけません。

 

また、5つのエンディングの中で体感的に最も難しいのは多分ハーレムエンドです。ドレスを入手すること自体は簡単ですが、その後が大変です。

まず、裏路地に出てくる謎の男(「ネイキッドチェイサー」で、彼の名がレイド・ブレイガスであることが明かされます)から魔法の槍と革の靴をもらう必要があります。そして帰り道は住宅街を選び、ジョーに一旦追い抜かれてから槍を投げつけて倒せば、ドレスを着たまま優勝することができます。

 

本作はとにかくフラグ管理をシンプルにしているので、その分リトライ性を増すために、マルチエンディングを採用しています。選択肢の一つ一つに意味があり、見た目よりもガッチリした構造になっています。

ゲームブックにおけるマルチエンディング

どうも、ちゃなです。

(今回は紹介作品の重大なネタバレを含みますのでご注意ください)

 

マルチエンディングというのは、文字通り物語の終わり方が複数あるゲームシステムのことを言います。

 

多くのソロゲームでは、作者とプレーヤーの知恵比べ的な要素があって、障害を乗り越えたプレーヤーへのご褒美として、素敵なエンディングが待っています。

ただ、それまでのプレーヤーの選択を問わず最後は画一的なエンディングを迎えるというのは、いささか味気ないという気もしますよね。そこで、それまでの行動過程によってエンディングが変わるようにするわけです。

 

コンピュータゲームでは、多くの作品でマルチエンディングが採用されています。特にテキスト型のアドベンチャーゲームでは、プレーヤーの選択を楽しむというコンセプトがあるため、マルチエンディングが馴染みやすいです。「弟切草」「かまいたちの夜」シリーズなんかが有名ですね。

 

ゲームブックも、コンピュータのアドベンチャーゲームに近いので、マルチエンディングには非常に馴染みが深いです。

というか、バッドエンドも含めると殆どのゲームブックがマルチエンディングを採用していると言えます。

 

マルチエンディングの構造を分類すると、だいたい下記の3パターンに分かれます。

 

(1)無数のバッドエンドと、一つの真エンド

殆どのゲームブックや、一般的なテキストアドベンチャーゲームがこれに該当します。

ゲームブックだと、最終パラグラフがエンディングになっていて、それ以外のエンドパラグラフ(飛び先の示されていないパラグラフ)はバッドエンド扱いという作品が多いですね。

もっとも作風によっては、真エンドよりもベターな結末を迎える展開もあり得ます。

 

古い作品ですが、「ゴーストタワーの魂の石」では、主人公は盗賊と修道士と3人で迷宮に挑むのですが、途中で仲間に裏切り者がいるという疑惑が出てきます。

そこで本作では、2人を見捨てて一人きりでゴーストタワーを脱出した場合のみ、真エンドにたどり着けるようになっています。盗賊か修道士のいずれかとともに生還する結末もあるのですが、本作ではそれらはバッドエンド扱いになっています。なお3人揃って生還する方法はありません。

実際には裏切り者は存在しないようです。孤独と疑心暗鬼、そして仲間を見捨てた贖罪意識を余韻として残したいという、作者の思想が色濃く現れた作品だといえるでしょう。

ゴーストタワーの魂の石 (富士見文庫―富士見ドラゴンブック)

ゴーストタワーの魂の石 (富士見文庫―富士見ドラゴンブック)

 

 

(2)複数の等価な真エンド

幾つかのハッピーエンドがあり、いずれがベストかは読者に委ねられているパターンです。

作者が特定のエンディングを贔屓していないことを示すため、ゲームブックではあえて最終パラグラフをエンドパラグラフにしないという技法を用いることもあります。

スティーブ・ジャクソン氏の作風ですね。氏はファイティングファンタジーシリーズで「サソリ沼の迷路」「深海の悪魔」「ロボット・コマンドゥ」の三作を出版しています。

「サソリ沼の迷路」では、主人公は最初に依頼人を善・悪・中立の3人から選びます。そして沼地の冒険を終えて成果を報告するところでエンディングを迎えます。善の魔法使いや中立の商人にはまっとうな報告を終えてグッドエンドになりますが、悪の魔法使いに対しては、悪事の片棒を担いで報酬をもらうパターンと、依頼人を裏切って倒してしまうパターンがあります。いずれが主人公らしいかを決めるのは読者の仕事です。

 

「ロボット・コマンドゥ」では、主人公は謎の眠り病から街を救うことになります。病をはやらせた元凶をロボットで制圧するか、一対一の決闘で打ち破るか、病のワクチンを散布して街を復活させるか、三通りの解決法があります。

どの道を選んでも結末は一緒なので、マルチエンディングというよりはマルチプロットと言えるかもしれません。 

ロボット コマンドゥ?ファイティング・ファンタジー (22)

ロボット コマンドゥ?ファイティング・ファンタジー (22)

 

 

私の「ネイキッドサバイバー」も小粒ながらマルチプロットを採用しています。エンドパラグラフは一つだけですが、ラスボスの陰謀を暴くための道筋は複数用意されています。中にはバッドエンドっぽいものもありますが。。。

ネイキッドサバイバー (ちゃなのゲームブック)

ネイキッドサバイバー (ちゃなのゲームブック)

 

 

このパターンは繰り返しプレイを前提として設計されているものですので、コンピュータゲームに馴染みが深いです。アドベンチャーゲームのみならず、シミュレーションゲームにもしばしば採用されています。「プリンセスメーカー」シリーズや「アトリエ」シリーズが代表的ですね。ただ、近年ではプレーヤーのやりこみ意欲を煽るため、難易度の高いエンディングを真エンドとして定義しているものが多いです。

 

竜の血を継ぐ者」のエンディング構成はひとひねりされています。事件の真相に気づいたか否か、及び主人公が脱出できたか否かによって、4パターンのエンディングに分かれるのです。こう書くと、真相に気づいて脱出というのが真エンドのように思われるかもしれません。でも、他の形態のエンディングの方が文学的に遥かに美しいんです。主人公にとって何が本当の幸せなのか、考えされられます。 

竜の血を継ぐ者

竜の血を継ぐ者

 

 

鈴木直人氏も、「魔界の滅亡」のエンディングは、ドルアーガを倒すも脱出に失敗して行方不明になるエンディングの方が好きだと語っていました。

魔界の滅亡 ドルアーガの塔 (幻想迷宮ゲームブック)

魔界の滅亡 ドルアーガの塔 (幻想迷宮ゲームブック)

 

 

(3)ノーマルエンドに加えて真エンドがある

こちらは最近のコンピュータロールプレイングゲームのはやりです。ノーマルのエンディングで物語は完結するものの、主に2周めのやり込み用に、よりハッピーな真エンドを用意しているというものです。マルチエンディングというよりは、追加シナリオといったほうが良いかもしれません。

 

例えば「ドラゴンクエスト4」のリメイク作では、通常のエンディングではラスボスを倒して終わりですが、追加シナリオではラスボスの裏事情が描かれており、主人公と敵対する理由を解消することによってラスボスとともに真の黒幕に挑むことができます。

ドラゴンクエストIV 導かれし者たち

ドラゴンクエストIV 導かれし者たち

 

ただ、この形態の弱点は、真エンドを見てしまうと、ノーマルのエンディングがバッドエンドみたいに思えてしまうということです。旧作を毀損されたと思う人もいるようです。

 

そこでこのパターンでちゃなが最高傑作の一つに挙げておきたいのが、「ルナ2 エターナルブルー」のリメイク作です。本編ではラスボスを打ち倒した後、役目を終えたヒロインが月に帰ってしまい、主人公はいつか再会することを誓って終わります。これだけで物語は完結しているのですが、追加シナリオでは主人公が実際にヒロインを追いかけて月に向かうことができます。そして眠りから覚めたヒロインと月世界の復活を見届けるという真エンドに到達します。本作はノーマルエンドも真エンドも相手の良さを殺さず完全に成り立っているという点が秀逸です。

ルナ2 エターナルブルー

ルナ2 エターナルブルー

 

 

ゲームブックでも、近年の作品にこういうものが出てきています。以前にも紹介した「剣竜亭とカラクリ迷宮」では、100パラグラフの中にちゃんと2周めと隠しエンドがあります。 

ゲームブック 剣竜亭とカラクリ迷宮 FT書房

ゲームブック 剣竜亭とカラクリ迷宮 FT書房

 

 

ちなみに現在執筆中の新作も、ノーマルエンドで物語は完全に解決を迎えますが、やりこみ読者のために高難度の隠しエンディングを用意しています。

 

さて、ここまで紹介しておいて、実は私は松友健氏の作品、未読なんですよねー。マルチエンディングを語るには避けて通れないハズなのですが。。。「魔人竜生誕」、早急に脱積ん読を図ります。

魔人竜生誕 (幻想迷宮ゲームブック)

魔人竜生誕 (幻想迷宮ゲームブック)

 

 

今回はマルチエンディングについてでした。ではまた。

「魔域の対決」チャート解析 その2

前回の続きです。

バグだらけの問題作「魔域の対決」。総パラグラフ数212と三部作中最短なのですが、ストーリーはどうでしょうか?

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主人公はすっかり魔法にうつつを抜かしていて、いきなりダーリスを魔法で呼び戻そうとしたり、従者ラファエルに魔法の触媒を探しに行かせたり、さらには自分の意見を押し通そうと仲間達に「暗示」を使ってみたりと、やりたい放題です。

 

パラグラフ9で仲間に既に会っている場合の飛び先は、157ではなくおそらく116です。

 

ラファエルを早めに使いにやっておかないと、触媒探しがうまくいかず、大魔法「送還」を使うことができなくなります。もっとも「送還」を実際に使う局面は出てこないのが、シリーズのお約束です。

 

主人公はアルノのもとに攻め込むか、大魔術師のローブを奪取しにブーコッドの寺院の遺跡に向かうかで、その後の展開が大きく変わります。

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セイブンを攻めるのは結構無謀で、「飛翔」の術に成功すると深入りして墜落したり、「弓矢封じ」を発動させていないと狙われてハリネズミにされたりと、危険がいっぱいです。

 

最終的にはブーコッドの寺院の遺跡に向かうことになります。そこでアルノとの対決が待ち受けていると思いきや……

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前作で登場したマリードの導きでブーコッドの寺院の遺跡に到着した主人公ですが、ここで望むなら秘密の入口を探すことができます。入口を見つけずに「瞬間移動」で中にテレポートしようものなら、成功判定が3段階に分かれているにも関わらず、必ず失敗して死ぬことになります。大魔法「失敗なき瞬間移動」もその名に反して大失敗します。

 

パラグラフ143で寺院の門を破ろうとした場合の飛び先は25ではありません。ストーリーがめちゃくちゃになります。おそらく23が正しい飛び先です。

 

アルノと鉢合わせて魔法対決になった場合、唯一役に立つのは「眠り」です。他の魔法ではアルノに後の先を取られて敗北します。スピードファクターって大事ですね。アルノに殺されずに済んでも、その先はデッドエンドになっています。

 

ブーコッドの寺院の遺跡に入った主人公は、凶悪な魔物であるタラスキューを目にします。奴に一人で勝つことはできません。アルノと一時休戦して二人で「限られた願い」をぶつけるか、さもなくばアルノが戦っている間に逃げおおせることです。

なお、前者が正史のように思えますが、この方法ではクリアが非常に困難になります。

 

タラスキューを退けた主人公は、ゼインと合流してエアドリーの冠を譲り受けます。ここで沈着度16の判定に失敗するとデッドエンドですが、初期値が低くても5割以上は成功するので問題ないでしょう。そこでちゃっかりダーリスに告白して、最後の戦いに挑みます。

 

主人公は遂に大魔術師のローブをまとうリッチの前に到達します。実はこの場面に来るだけなら「瞬間移動」を使えば良いのですが、そうやってパラグラフ99に来た場合は、何をやっても殺されます。

 

ここでタラスキューが死んでいる場合は、アルノとの精神対決になります。

問題はこのアルノが異常に強いこと。判断力判定34というのは、キャラメイクで全振りしてかつ魔法をひとつも準備していなくても、サイコロ2つで11以上を出す必要があります。失敗すると生命点1を失って再チャレンジです。これはほとんど不可能といっていい難題で、いくら何でもバランスが悪いかなと思います。

 

逆にアルノを見殺しにしてタラスキューが生きている場合、パラグラフ192からの飛び先がいきなりエンディングになっています。それらしい正しい飛び先はパラグラフ180で、タラスキューがアルノごと飲み込んだロルスの冠と主人公のエアドリーの冠が反応する描写が入り、見事に敵を撃退します。

 

こうして主人公は大魔術師のローブを手に入れて、物語は終焉を迎えるのです。

 

いかがだったでしょうか?

私は正直、三部作の大団円にしてはちょっと期待外れでした。エラッタは論外として、ストーリーも少々広がりに欠け、父の言葉通りにアルノと協力する方が勝利が遠のいたり、瞬間移動のパラグラフが異常にたくさんあってみんな飛び先が同じだったりと、アルゴリズム的にも今ひとつ納得いかないところが多かったです。三作品中最も魔法を使う機会が多いのですが、その魔法もごく一部の必須のものを除いてはあまり役に立たず、面白みがありません。

結局、「魔法の王国」シリーズで一番面白かったのは、第一作「魔力の杖」でした。こういうことってよくありますよね。私のネイキッドシリーズも第一弾が一番売れています。。。

ネイキッドウォリアー (ちゃなのゲームブック)

ネイキッドウォリアー (ちゃなのゲームブック)

 

 

ともあれ、AD&Dのシステムと世界観を600あまりのパラグラフでゲームブックに書き起こしたのは、本シリーズが随一です。完成度の問題から名作のお墨付きは押せませんが、記念碑的作品といって良いでしょう。

「魔域の対決」チャート解析 その1

どうも、ちゃなです。

フローチャートを作成してゲームブックの構造を解析するこのシリーズ(?)も、第8回になりました。

 

今回は、「魔域の対決」です。

「魔法の王国」シリーズ三部作の完結編になります。

魔法の王国〈3〉魔域の対決 (富士見文庫―富士見ドラゴンブック)
 

本作は販売部数が少ないのか、中古でも他の二作品と比べて高値がついています。

私は以前「魔力の杖」と「魔術師の宝冠」はプレイしていたのですが、本作はちらっと立ち読みしたくらいでほとんどノータッチでした。なので今回は初挑戦となりました。

 

トーリーは前作「魔術師の宝冠」の5年ほど後になります。

シーゲート島を悪の魔術師アルノの手から守った主人公カー・デリングは、父の残した神秘科学アカデミーの校長として過ごす傍ら、アルノとの対決に備えて禁断の呪文研究に勤しんでいました。アルノは前作で出てきた悪魔の王子パズズの力を借りて全土を制圧しようとしているのに対し、主人公は瞬間移動の実験に失敗して腰を痛めたりと満身創痍になっていて、見通しは深刻です。本作の物語は、失われた最後の秘宝である大魔術師のローブを水晶玉で探している主人公のところに、ガールフレンド(?)のダーリスが大僧正オーラムの訃報を持ってくるところから始まります。

 

本作では、読者が管理するパラメータはひとつ減って、判断力、沈着度、生命点の3種類になります。体力的に衰えた主人公にとって、もはや機敏度はどうでも良くなったんですね。

判断力16と沈着度10に9点のボーナスポイントを配分するのですが、冒険記録用紙ではエラッタで7点と書かれています。判断力が沈着度を上回ること、沈着度に最低2点割り振ることが決まりなので、「判断力23・沈着度12」から「判断力18・沈着度17」までのいずれかになります。攻略としては、沈着度の判定は概ね容易なので、ここでは判断力を23まで上げておくのが正解です。

生命点は4点にサイコロ3つ分(ただし5回振って大きい方から3つ)を加えます。ちなみに期待値は17.6になります。本作はこれまでと異なり、生命点が減る局面が多いので、このパラメータは結構重要です。

 

そして、シリーズ最大の特徴である「魔法」ですが、本作では主人公は大魔術師であり、いくつかの簡単な魔法は「永遠化」させています。物語の途中で、継続的に発動させておく魔法を選ぶチャンスがあり、必要な局面で魔法が発動しているかどうかによって展開が変わってきます。他方で、魔法を発動させておくと、判断力が一時的に減ってしまうので、何でもかんでも発動というわけにはいきません。この辺りの取捨選択が本作の肝になっています。

 

では、いよいよフローチャートを見てみましょう。

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カラフルですね。

緑がエンディングで黄色がバッドエンド。

青が記憶している魔法をかける場面、赤が発動させている魔法が役に立つ場面、紫が発動させる魔法を選ぶ場面になります。

青いパラグラフは、秘密の入口を見つけたかどうかのフラグ処理です。必ずしも踏まなくてもクリアは可能です。

 

そして、本作の最大の問題点は、薄緑のパラグラフ。

これ、飛び先がエラッタなんですよね、多分。

お示ししたチャートは、私の推測でエラッタを修正したものになっています。

原作通りだと、無茶苦茶な飛び方をしていたり、ストーリーが全然つじつまが合わなかったりします。

さらに、下の方にあるパラグラフ91は、どこからも飛べないし、飛び先も3つともまったく筋が通っていません。

 

要するに、本作はバグだらけなんです。

コンピュータゲームでもたまにそういう作品がありますが、当時のゲームブックでは後からパッチを当てることもできません。

もしかしたら正誤対照表が挟まっていたのかもしれません。ざっと探した限りでは、英語でもエラッタを公開しているページは見つかりませんでした。まあ1987年の作品ですから致し方ありませんね。

それにしても、このエラッタの数はちょっといただけません。当時購入していたら、怒り心頭だったことでしょう。

 

モチベーションが下がってしまったかもしれませんが……次回に続きます。