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「魔術師の宝冠」チャート解析 その2

それでは「魔術師の宝冠」フローチャートを細かく見ていきましょう。

 

物語は主人公と吟遊詩人ダーリスがマンティコアの針を採取しようとしている場面から始まります。

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ダーリスの作戦通りに動けば、針を入手できるチャンスがあります。ただし問題は、ここで針を入手してもストーリー上まったく役に立ちません。

逆に「魔法の矢」はここで使ってしまっても問題ありません。ただし、判定に成功するとマンティコアを殺してしまい、針を採取できなくなります。(マンティコアってマジックミサイル数発で落ちるほど弱かったかしら……?)

 

森に帰ると、前作での宿敵アルノがセイブンの聖騎士団を掌握したというニュースが飛び込んできます。

ブーコッドの錫杖を用いてアルノに対峙するかどうか、主人公は悩みます。錫杖を使えばアルノの魔法を無力化できるかもしれません。ただ、錫杖にかけられた防護の魔法は尽きかけていて、万一アルノに錫杖が渡ると最悪の結果になるおそれがあるのです。

というか、アルノがこんな宿敵になるなんて予想外でした。前作では、そこそこ腕は立つものの、ベルドンに気に入られて自分の実力をひけらかすだけの、典型的な小物に見えたんですけど。。イメージは「ハリー・ポッター」シリーズのドラコ・マルフォイですね。

ここで前作の師で会ったゼインがなぜか逆上して錫杖に触れてしまい、瀕死になってしまいます。ちょっと笑えない展開です。。。

主人公は旅に錫杖を持っていくか否かを決断することになります。重要な選択のように見えますが、どちらを選んでも、さほど大きな影響はありません。

 

パラグラフ121で、セイブンに向かうかシーゲート島に向かうかの選択があります。ここでシーゲート島を選ぶと、チャート上は一気に終盤に進みますが、結局詰むことになります。この序盤でのトラップはちょっと厳しいですね。

 

セイブンに向かう場合、道は三通りあります。街道を通るか、「黄色の沼」を通るか、それとも漁船で港に向かうかです。

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ここで「黄色の沼」は主人公の父である偉大な魔術師ランドールでさえも避けていたという警告が再三出ます。

しかし、正解は「黄色の沼」ルートです。「黄色い沼」に住むマリードから悪魔パズゼウスもしくは「魔術師の宝冠」についての情報を聞いておかないと、最後に詰むことになります。

 

船で港に向かった場合、海兵に襲われます。

「稲妻の一撃」や「火球爆発」で強引に突破するのが正解です。「眠り」や「炎の手」等の弱い魔術では勝てません。

調子によって大魔法である「他者変身」を使うと、とんでもないことになります。従者のラファエルをロック鳥に変身させる選択では、術が強すぎるとかえってコントロールが効かなくなったり、勝手にシーゲート島まで飛ばされてしまったりします。

 

街道や海ルートで進んでも、途中で「黄色の沼」に入る分岐があります。ここで沼に入らないと街道の騎士と対決することになります。色々な魔法を使うチャンスがありますが、既にバッドエンドが確定しています。

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沼に入った際に大魔法を使う機会があります。マンティコアの針を入手していれば、「魔力付与」を試すことができますが、結局失敗します。「他者変身」も使わない方が身のためです。「異界接触」に成功すればヒントが得られますが、大した情報ではなく、失敗すると即死します。

 

沼地の中で襲ってくるマリードの巨大な手に対して、毒の投げ矢を使ってはいけません。下手な魔法も命取りです。杖で殴りかかるか、弱い魔法で様子を見てみてください。

すると、マリードからアルノの力の源である悪魔パズゼウス、もしくは「魔術師の宝冠」についての情報を得ることができます(紫のパラグラフ56または128)。ここを通らないとエンディングにはたどり着けません。

 

パラグラフ100でセイブンの大聖堂の裏まで来ます。

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ここでは敵陣営で唯一の味方と言える聖騎士ガーンに出会います。友好的に振る舞えば沈着度が上昇します。本作では技術点が上がるチャンスは滅多にありません。

ブーコッドの錫杖を持ってきている場合、彼に預けるかどうかの選択があります。

 

その後、一行はアルノを討ちに大聖堂に侵入します。

しかしここでは結局パズズに勝てないので、実は侵入に失敗してしまった方が手っ取り早いです。パズズに錫杖は効かず、攻撃魔法を撃とうとするとアルノの「忘却」に潰されます。逃げる時にけちって「魔法の錠」を温存すると、やはり捕まって殺されます。

 

いよいよ終盤です。

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パラグラフ217では、大聖堂を脱出してガーンと合流する手前で敵の聖騎士に遭遇します。ここでは錫杖を持っていた方が有利です。

 

ガーンと合流した一行は、パズズを倒すための知恵を借りにシーゲート島のアカデミーを目指します。ここで彼に錫杖を預けていた場合は、取り戻すかどうかを選べます。しかし今度は錫杖を回収しない方が若干有利になります。

 

パラグラフ106では、パズゼウスか宝冠の話を聞いていたかどうかで強制分岐します。セイブンを経由せずシーゲート島に来た場合は、どこから上陸するかで同じ選択肢に分岐するので、このアルゴリズムはちょっと不思議ですね。

 

チャートはこれが最後です。

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「魔術師の宝冠」について知っていた場合、島の南から侵入することになります。そこで聖騎士を不意打ちしようとしている変な生き物こそ、ゼインの転生した姿なのです!あとは、みんなでエストラの元に赴き、父から託されたという「魔術師の宝冠」をゲットしてエンディングです。

しかし、セイブンを経由せずここに来た場合は、聖騎士と会話が成立せずに殺されてしまいます。

 

一方、デルマー経由でアカデミーを目指す場合、ノール達をやり過ごす必要があります。ここで沈着度の判定に失敗すると、錫杖を持っていた場合、魔法探知に引っかかって即死します。

デルマーでは前作で主人公の母を弔ってくれたウェンデルから宝冠の話を聞くことができます。ゼインの一族に会いに行くと、先ほどの聖騎士と変わり果てたゼインのシーンに合流して、エンディングに行けます。

初心貫徹でアカデミーを目指してはいけません。アカデミーに侵入すると閉じ込められてしまいます。唯一セットしておいた解錠の呪文を使い切ってしまったという展開です。一晩寝れば魔力が回復しそうなものですが……。

 

パラグラフ106の分岐で、マリードからパズゼウスか宝冠の情報を聞いていない場合も、フリートン経由でアカデミーを目指す道しか選べず、デッドエンドになります。

 

いかがだったでしょうか?

 

どこを経由してきたかで強制分岐するというアルゴリズムは、ちゃな的にはあまり好きではありません。展開に必然性がなく、地名を忘れてしまっている読者もいるでしょうから。パラグラフの圧縮効果もたかがしれています。

また、本作でも「生命点」の存在がまるで意味を成していません。

一方、技術点での成功判定は、失敗すると即死する展開が多い一方で、成否が何の影響もしない場合もあります。

前作に比べると魔法を使う機会は多いです。主人公がセットしている魔法はすべて本文中に登場します(羽毛落下は描写のみで、しかも失敗して即死ですが)。ただ、どこで使うか温存するかを悩む局面はあまりありません。おまけに大魔法がいずれもまったくの役立たずでほぼ地雷と化しています。まあこれは、AD&Dの設定に忠実とも言えますが。。。

 

個々のシーンの描写は相変わらず細かく、アルノがパズズを利用して聖騎士団を支配下に置いてしまう展開などはいかにもAD&Dっぽいですね。主人公の魔法は本作では和名で並んでいますが、「ファイアボール」「ライトニングボルト」「ホールドパーソン」「フライ」「チャームパーソン」などなど、AD&D経験者なら誰しもお世話になったラインナップです。巻末には訳者の清松みゆき氏がAD&Dのシステムと世界観に合わせた詳細な解説を書かれています。

 

が、やはりストーリー展開に比べて、システムとゲーム性がおざなりになってしまっている印象を拭えません。

 

ラストシーンは思わせぶりというか、ぶつ切りです。アルノとの最終決戦は最終巻「魔域の対決」にもつれ込むことになります。