ちゃなのゲームブック

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「魔域の対決」チャート解析 その1

どうも、ちゃなです。

フローチャートを作成してゲームブックの構造を解析するこのシリーズ(?)も、第8回になりました。

 

今回は、「魔域の対決」です。

「魔法の王国」シリーズ三部作の完結編になります。

魔法の王国〈3〉魔域の対決 (富士見文庫―富士見ドラゴンブック)
 

本作は販売部数が少ないのか、中古でも他の二作品と比べて高値がついています。

私は以前「魔力の杖」と「魔術師の宝冠」はプレイしていたのですが、本作はちらっと立ち読みしたくらいでほとんどノータッチでした。なので今回は初挑戦となりました。

 

ストーリーは前作「魔術師の宝冠」の5年ほど後になります。

シーゲート島を悪の魔術師アルノの手から守った主人公カー・デリングは、父の残した神秘科学アカデミーの校長として過ごす傍ら、アルノとの対決に備えて禁断の呪文研究に勤しんでいました。アルノは前作で出てきた悪魔の王子パズズの力を借りて全土を制圧しようとしているのに対し、主人公は瞬間移動の実験に失敗して腰を痛めたりと満身創痍になっていて、見通しは深刻です。本作の物語は、失われた最後の秘宝である大魔術師のローブを水晶玉で探している主人公のところに、ガールフレンド(?)のダーリスが大僧正オーラムの訃報を持ってくるところから始まります。

 

本作では、読者が管理するパラメータはひとつ減って、判断力、沈着度、生命点の3種類になります。体力的に衰えた主人公にとって、もはや機敏度はどうでも良くなったんですね。

判断力16と沈着度10に9点のボーナスポイントを配分するのですが、冒険記録用紙ではエラッタで7点と書かれています。判断力が沈着度を上回ること、沈着度に最低2点割り振ることが決まりなので、「判断力23・沈着度12」から「判断力18・沈着度17」までのいずれかになります。攻略としては、沈着度の判定は概ね容易なので、ここでは判断力を23まで上げておくのが正解です。

生命点は4点にサイコロ3つ分(ただし5回振って大きい方から3つ)を加えます。ちなみに期待値は17.6になります。本作はこれまでと異なり、生命点が減る局面が多いので、このパラメータは結構重要です。

 

そして、シリーズ最大の特徴である「魔法」ですが、本作では主人公は大魔術師であり、いくつかの簡単な魔法は「永遠化」させています。物語の途中で、継続的に発動させておく魔法を選ぶチャンスがあり、必要な局面で魔法が発動しているかどうかによって展開が変わってきます。他方で、魔法を発動させておくと、判断力が一時的に減ってしまうので、何でもかんでも発動というわけにはいきません。この辺りの取捨選択が本作の肝になっています。

 

では、いよいよフローチャートを見てみましょう。

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カラフルですね。

緑がエンディングで黄色がバッドエンド。

青が記憶している魔法をかける場面、赤が発動させている魔法が役に立つ場面、紫が発動させる魔法を選ぶ場面になります。

青いパラグラフは、秘密の入口を見つけたかどうかのフラグ処理です。必ずしも踏まなくてもクリアは可能です。

 

そして、本作の最大の問題点は、薄緑のパラグラフ。

これ、飛び先がエラッタなんですよね、多分。

お示ししたチャートは、私の推測でエラッタを修正したものになっています。

原作通りだと、無茶苦茶な飛び方をしていたり、ストーリーが全然つじつまが合わなかったりします。

さらに、下の方にあるパラグラフ91は、どこからも飛べないし、飛び先も3つともまったく筋が通っていません。

 

要するに、本作はバグだらけなんです。

コンピュータゲームでもたまにそういう作品がありますが、当時のゲームブックでは後からパッチを当てることもできません。

もしかしたら正誤対照表が挟まっていたのかもしれません。ざっと探した限りでは、英語でもエラッタを公開しているページは見つかりませんでした。まあ1987年の作品ですから致し方ありませんね。

※2020/1/8追記 https://gamebooks.org/Item/140/Showで、エラッタについて解説されていますが、いくつかのエラッタについては修正方法がわからないままになっています。富士見ドラゴンブックの邦訳ではいくつかのエラッタが修正済みのようです。

 

それにしても、このエラッタの数はちょっといただけません。当時購入していたら、怒り心頭だったことでしょう。

 

モチベーションが下がってしまったかもしれませんが……次回に続きます。