ちゃなのゲームブック

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「魔域の対決」チャート解析 その2

前回の続きです。

バグだらけの問題作「魔域の対決」。総パラグラフ数212と三部作中最短なのですが、ストーリーはどうでしょうか?

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主人公はすっかり魔法にうつつを抜かしていて、いきなりダーリスを魔法で呼び戻そうとしたり、従者ラファエルに魔法の触媒を探しに行かせたり、さらには自分の意見を押し通そうと仲間達に「暗示」を使ってみたりと、やりたい放題です。

 

パラグラフ9で仲間に既に会っている場合の飛び先は、157ではなくおそらく116です。

 

ラファエルを早めに使いにやっておかないと、触媒探しがうまくいかず、大魔法「送還」を使うことができなくなります。もっとも「送還」を実際に使う局面は出てこないのが、シリーズのお約束です。

 

主人公はアルノのもとに攻め込むか、大魔術師のローブを奪取しにブーコッドの寺院の遺跡に向かうかで、その後の展開が大きく変わります。

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セイブンを攻めるのは結構無謀で、「飛翔」の術に成功すると深入りして墜落したり、「弓矢封じ」を発動させていないと狙われてハリネズミにされたりと、危険がいっぱいです。

 

最終的にはブーコッドの寺院の遺跡に向かうことになります。そこでアルノとの対決が待ち受けていると思いきや……

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前作で登場したマリードの導きでブーコッドの寺院の遺跡に到着した主人公ですが、ここで望むなら秘密の入口を探すことができます。入口を見つけずに「瞬間移動」で中にテレポートしようものなら、成功判定が3段階に分かれているにも関わらず、必ず失敗して死ぬことになります。大魔法「失敗なき瞬間移動」もその名に反して大失敗します。

 

パラグラフ143で寺院の門を破ろうとした場合の飛び先は25ではありません。ストーリーがめちゃくちゃになります。おそらく23が正しい飛び先です。

 

アルノと鉢合わせて魔法対決になった場合、唯一役に立つのは「眠り」です。他の魔法ではアルノに後の先を取られて敗北します。スピードファクターって大事ですね。アルノに殺されずに済んでも、その先はデッドエンドになっています。

 

ブーコッドの寺院の遺跡に入った主人公は、凶悪な魔物であるタラスキューを目にします。奴に一人で勝つことはできません。アルノと一時休戦して二人で「限られた願い」をぶつけるか、さもなくばアルノが戦っている間に逃げおおせることです。

なお、前者が正史のように思えますが、この方法ではクリアが非常に困難になります。

 

タラスキューを退けた主人公は、ゼインと合流してエアドリーの冠を譲り受けます。ここで沈着度16の判定に失敗するとデッドエンドですが、初期値が低くても5割以上は成功するので問題ないでしょう。そこでちゃっかりダーリスに告白して、最後の戦いに挑みます。

 

主人公は遂に大魔術師のローブをまとうリッチの前に到達します。実はこの場面に来るだけなら「瞬間移動」を使えば良いのですが、そうやってパラグラフ99に来た場合は、何をやっても殺されます。

 

ここでタラスキューが死んでいる場合は、アルノとの精神対決になります。

問題はこのアルノが異常に強いこと。判断力判定34というのは、キャラメイクで全振りしてかつ魔法をひとつも準備していなくても、サイコロ2つで11以上を出す必要があります。失敗すると生命点1を失って再チャレンジです。これはほとんど不可能といっていい難題で、いくら何でもバランスが悪いかなと思います。

 

逆にアルノを見殺しにしてタラスキューが生きている場合、パラグラフ192からの飛び先がいきなりエンディングになっています。それらしい正しい飛び先はパラグラフ180で、タラスキューがアルノごと飲み込んだロルスの冠と主人公のエアドリーの冠が反応する描写が入り、見事に敵を撃退します。

 

こうして主人公は大魔術師のローブを手に入れて、物語は終焉を迎えるのです。

 

いかがだったでしょうか?

私は正直、三部作の大団円にしてはちょっと期待外れでした。エラッタは論外として、ストーリーも少々広がりに欠け、父の言葉通りにアルノと協力する方が勝利が遠のいたり、瞬間移動のパラグラフが異常にたくさんあってみんな飛び先が同じだったりと、アルゴリズム的にも今ひとつ納得いかないところが多かったです。三作品中最も魔法を使う機会が多いのですが、その魔法もごく一部の必須のものを除いてはあまり役に立たず、面白みがありません。

結局、「魔法の王国」シリーズで一番面白かったのは、第一作「魔力の杖」でした。こういうことってよくありますよね。私のネイキッドシリーズも第一弾が一番売れています。。。

ネイキッドウォリアー (ちゃなのゲームブック)

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ともあれ、AD&Dのシステムと世界観を600あまりのパラグラフでゲームブックに書き起こしたのは、本シリーズが随一です。完成度の問題から名作のお墨付きは押せませんが、記念碑的作品といって良いでしょう。