どうも、ちゃなです。
小説では、書き出しの一行に一番時間がかかるって、よく言われますよね。
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」とか、「ある朝、グレゴール・ザムザが気がかりな夢から目ざめたとき、自分がベッドの上で一匹の巨大な毒虫に変わってしまっているのに気づいた。」とか、なかなか唸らされる名フレーズです。
ライトノベルでは、いかに早く女の子のハダカを出すかが大事、という不文律(?!)があって、そんな冗談みたい話から私の「ネイキッドウォリアー」は生まれました。
ゲームブックの書き出しはどうでしょうか?
初期のファイティングファンタジー作品では、まず物語調のプロローグが2ページほどあって、それから「さあ、ページをめくりたまえ」となるのが様式美となっています。
「火吹き山の魔法使い」では、冒頭に「噂」と称して、こんな感じでプロローグが始まります。
ファイティング・ファンタジー「火吹山の魔法使い」 (〈ファイティング・ファンタジー〉シリーズ)
- 作者: スティーブ・ジャクソン,イアン・リビングストン,浅羽莢子
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2005/03/26
- メディア: 文庫
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「よほどむこうみずな冒険者でない限り、これほど危険きわまる探索に乗り出すにあたっては、山とそこに秘められた宝について、まずなるべく多くのことを探り出そうとするものだ。」
なかなか詩的な出だしですよね。記念すべき第一作ということで、物語感を大事にしたのかもしれません。
そして、パラグラフ1はこう始まります。
「二日間の歩きもやっと終わった。」
いよいよ目的の洞窟に着いた、ということを示しているわけですね。すぐ後にイラストもあるので、主人公の状況が一目でわかります。
同じファイティングファンタジーシリーズでも、スティーブ・ジャクソン氏の最後の作品「モンスター誕生」は、ものすごいことになっています。
「背景 ―トロール牙峠の伝説―」と称して、なんとプロローグが20ページ!
まんま小説ではありませんか。
しかも、その内容が、本文で登場する主人公とは一見何の関係もない!
おまけに、ご丁寧にも、プロローグの最後で、この情報の大半はたいして役に立たないだろうと、作者が断り書きを入れています。
キツネにつままれた気持ちで読者がページをめくると、パラグラフ1はこうなっています。
「身体の痛みは耐えがたいほどひどかった」
主人公の心情から始まり、そしてあなたがどんな姿をしているのかが徐々に明かされていきます。
背景に記載された、ザラダン・マーやらガレーキープやらが何のことなのかがわかるのは、プレイも終盤、幾多の罠を潜り抜け、おそらく何度もバッドエンドをかいくぐった後になることでしょう。
本作を最後にジャクソン氏は小説家への転向を図っています。氏の決意の重さが垣間見える作品構成と言えます。
和製ゲームブックの雄、「スーパーブラックオニキス」はどうでしょうか。
やはりパラグラフ1の前にプロローグがあります。
「燃えるように紅い髪を持った一人の兵士が、砂漠を大股で歩いている。」
これが、主人公テンペスト、つまりあなたのことです。真っ赤な髪の毛がトレードマークだという印象を最初に植え付けています。
そして、パラグラフ1の冒頭はこうです。
「町の南西の橋に大きな城門があり、あなたはその前にたたずんでいる。」
おや、ちょっと味気ないですか?
実は、本作は双方向作品で、このパラグラフ1はオープニングではなく、単に町の一区画の描写なんです。読者はたびたびパラグラフ1に戻ってくることになるので、ここであまりユニークな記述をするわけにいかないんですね。
このように、ゲームブックの冒頭には、各々の作者の知恵と発想が結集されているんですね。。。
私はというと、今のところ、プロローグという章立ては設けておりません。
ちゃな的には、やはり一刻も早く、読者を主人公にシンクロさせることが大事なのかなあ、と思っています。
緻密な描写にこだわった情感たっぷりなプロローグもいいのですが、やっぱり手っ取り早く冒険に出たいですよね。
なので、拙著「デレクの選んだ魔法」のパラグラフ1はぐっとシンプルに。
「あなたはデレク。魔術師だ。
とはいえ、はじめからそうだったわけではない。」
テクニカルな話をすると、この二行で私は次のようなメッセージを読者に送っています。
・本作の主人公にはデレクという名前と人格が与えられていること。
(ネイキッドシリーズの主人公が名もなき女戦士で読者の想像に委ねられていたのとは一線を画しています)
・本作のテーマが魔法であること。
(これはタイトルからすでに明らかですが。。。)
・本作の主人公が成長すること。
つまり、魔術師として完成された状態から始まるわけではないことを明示しています。
とはいえ、結局は作風次第なところもあります。
純文学風のゲームブックなら、もっと研ぎ澄まされた書き出しを。
チャット風のイージーリーディングな作品なら、スピード感あふれるオープニングを。
「悪夢のマンダラ郷」のプロローグなんか、こうですよ。
「振られちゃった。」
一度読んだら忘れられません。。。
いかがだったでしょうか?
結論。
やっぱりゲームブックも、書き出しの一行が勝負どころですね!
皆さんも、すてきな書き出しのゲームブックを見つけたら、教えてくださいね。