こんにちわ、ちゃなです。
フローチャートをリバースエンジニアリングしてゲームブックの構造を読み解く不定期シリーズ第11回。今回は「エンチャンター」を取り上げます。
本作はこれまでの中でも極めてレアもの。Amazon.co.jpでは在庫が出てきません。ヤフオクでも高値がついています。
著者は白鳥洋一氏、パソコンゲームが原作のようですが残念ながらちゃなは見たことがありません。シリーズはEnchanter, Sorcerer, Spellbreaker, Wishbringerと続くゾークシリーズのようです。
さて、「エンチャンター」はそのうちの第一話。続編として「ソーサラー」と「スペルブレイカー」もゲームブック化されています。
本作は313パラグラフの双方向。主人公のカールは駆け出しの魔法使いです。しかし、序盤から父を殺した悪魔クリルと戦う羽目になるという怒濤の展開を迎えます。悪魔の巣くう不気味な城を探索し、様々な魔法の呪文を獲得して力をつけ、クリルを打ち倒すのが本作での最終目標です。
システムは簡素で、A~ZZの52種類のフラグをチェックするだけ。体力点などのパラメータやランダム要素はありません。
そして本作の根幹をなすのが魔法システム。本作には全部で19種類の魔法が出てきますが、主人公は開始時点では一つも知りません。冒険中に様々なところで新たな魔法を手に入れることで使うことができるようになります。
その使い方が一風変わっています。魔法を使おうと思ったら、魔法の種類を選んで、そのパラグラフにページ右肩の数字を使って処理を加え、巻末の「呪術の書」を見ると、飛び先が書いてあるという仕組みです。
つまり、本作ではどのパラグラフでも魔法が使い放題。その代わり、適切な局面を選ばなければ無駄打ちになりますし、時にはデッドエンドにつながります。
逆に、魔法によってはデッドエンドのパラグラフからジャンプすることだって可能です。いわば、前回のブログで私が書いた「インタラプト型ゲームブック」になっているんですね。
そしてその魔法一つ一つも、「隠された力を引き出す」「ものを激しく動かす」「元の形に戻す」といった抽象的なものが多く、想像力をかき立てます。
このような自由度の高いシステムはちょっと他に例がありません。有名な鈴木直人氏の「パンタクル」の原型といえるかもしれませんね。
では、そんな「エンチャンター」のフローチャートはどうなっているのでしょうか?
ズバリお見せしましょう。
細かいけど、分かるでしょうか?
画面の右上がスタートで、序盤は一本道、中盤から完全な双方向になっているイメージがつかめると良いのですけど。。
薄緑が魔法を使ったパラグラフ。水色が新たな魔法を手に入れるパラグラフ。そして黄色がバッドエンドです。
あと、一番右上の離れ小島。これは「LIEWHITE」という本編に存在しない魔法を選んだときのパラグラフ。当然、全てバッドエンドになっています。こだわりですね。
よく目をこらしてみると、本作では、魔法を使ってジャンプしても元の選択肢に戻る展開が多いんです。つまり魔法の無駄打ちですね。読者としては、飛び先を見つけて「やった、ここで魔法が使えるんだ!」と喜んだのも束の間、効果なく戻されたり即死したりと、なかなか楽しませてもらえます。
本作は自由に魔法を使えるのがコンセプトですから、正解の場面でしか魔法が使えないというのはいかにも味気ないですよね。300パラグラフに19種類の魔法を盛り込むのはちゃな的には無謀に思いますが、その限られた容量の中にここまでダミーの選択肢を放り込んだ作者の矜持も感じます。
次回は攻略に踏み込みます。