ファイティングファンタジーシリーズ 版元・邦訳対照一覧表
どうも、ちゃなです。
ファイティングファンタジーシリーズは、ゲームブックの中で世界で最も有名な作品群といえるでしょう。
このシリーズは、スティーブ・ジャクソン、イアン・リビングストン両氏によって制作され、英国のペンギン・ブックスから出版されました。本国では全59作品が上梓され、当時大きなゲームブックブームが巻き起こっていた日本でも、社会思想社から次々と日本語版が出版されていたのです。
The Warlock of Firetop Mountain (Fighting Fantasy)
- 作者: Steve Jackson,Ian Livingstone
- 出版社/メーカー: Wizard Books
- 発売日: 2007/08/02
- メディア: ハードカバー
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しかし、コンピュータゲームの隆盛とともにゲームブックの人気は次第に衰え、オリジナルの第60作になるはずだった「Bloodbone」は未完に終わりました。
その後英国では、アイコン・ブックスが権利を買い、「ウィザード・ブックス」というブランドでファイティングファンタジーシリーズのいくつかが再版されました。その際にはいくつか新作も刊行されています。
ウィザードブックス版としては、シリーズ1で29作、シリーズ2で17作が出版されました。第一作「火吹き山の魔法使い」はもとより、初期の名作「バルサスの要塞」「死のワナの地下迷宮」や、ジャクソン氏による「地獄の館」「サイボーグを倒せ」「モンスター誕生」、リビングストン氏の「迷宮探険競技」「死の軍団」といった人気の高い作品は、繰り返し選ばれています。
Creature of Havoc (Fighting Fantasy)
- 作者: Steve Jackson
- 出版社/メーカー: Icon Books Ltd
- 発売日: 2010/02/04
- メディア: ペーパーバック
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日本でも、初期作のいくつかが扶桑社から再版されたほか、ホビージャパンから「デストラップダンジョン」「サムライソード」「ハウスオブヘル」の三作がライトノベル風に翻案して公刊されています。
- 作者: イアン・リビングストン,空中幼彩,あっと
- 出版社/メーカー: ホビージャパン
- 発売日: 2008/12/27
- メディア: 文庫
- 購入: 6人 クリック: 84回
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あと、地味にNTTドコモのiモードアプリでもファイティングファンタジーが遊べたんですよね。特に「火吹き山再び」とかは最初で最後の日本語版だったと思います。
以下にお示しするのは、ファイティングファンタジーシリーズの一覧表です。左から順に、原題、著者名、発売年、邦題、オリジナル版とウィザード・ブックスのシリーズ1及び2におけるナンバリングを付してあります。
タイトル | 著者 | 邦題 | PG | WB1 | WB2 |
---|---|---|---|---|---|
The Warlock of Firetop Mountain | Steve Jackson & Ian Livingstone | 火吹山の魔法使い | 1 | 1 | 1 |
The Citadel of Chaos | Steve Jackson | バルサスの要塞 | 2 | 2 | 2 |
The Forest of Doom | Ian Livingstone | 運命の森 | 3 | 8 | 13 |
Starship Traveller | Steve Jackson | さまよえる宇宙船 | 4 | 22 | |
City of Thieves | Ian Livingstone | 盗賊都市 | 5 | 5 | 6 |
Deathtrap Dungeon | Ian Livingstone | 死のワナの地下迷宮 | 6 | 3 | 3 |
Island of the Lizard King | Ian Livingstone | トカゲ王の島 | 7 | 17 | |
Scorpion Swamp | Steve Jackson (USA) | サソリ沼の迷路 | 8 | ||
Caverns of the Snow Witch | Ian Livingstone | 雪の魔女の洞窟 | 9 | 10 | |
House of Hell | Steve Jackson | 地獄の館 | 10 | 7 | 9 |
Talisman of Death | Jamie Thomson & Mark Smith | 死神の首飾り | 11 | 24 | |
Space Assassin | Andrew Chapman | 宇宙の暗殺者 | 12 | ||
Freeway Fighter | Ian Livingstone | フリーウェイの戦士 | 13 | 23 | |
Temple of Terror | Ian Livingstone | 恐怖の神殿 | 14 | 19 | |
The Rings of Kether | Andrew Chapman | 宇宙の連邦捜査官 | 15 | ||
Seas of Blood | Andrew Chapman | 海賊船バンシー号 | 16 | ||
Appointment with F.E.A.R. | Steve Jackson | サイボーグを倒せ | 17 | 18 | 16 |
Rebel Planet | Robin Waterfield | 電脳破壊作戦 | 18 | ||
Demons of the Deep | Steve Jackson (USA) | 深海の悪魔 | 19 | ||
Sword of the Samurai | Mark Smith & Jamie Thomson | サムライの剣 | 20 | 25 | |
Trial of Champions | Ian Livingstone | 迷宮探検競技 | 21 | 12 | 12 |
Robot Commando | Steve Jackson (USA) | ロボット コマンドゥ | 22 | ||
Masks of Mayhem | Robin Waterfield | 仮面の破壊者 | 23 | ||
Creature of Havoc | Steve Jackson | モンスター誕生 | 24 | 4 | 5 |
Beneath Nightmare Castle | Peter Darvill-Evans | ナイトメア キャッスル | 25 | ||
Crypt of the Sorcerer | Ian Livingstone | 甦る妖術使い | 26 | 6 | |
Star Strider | Luke Sharp | スター ストライダー | 27 | ||
Phantoms of Fear | Robin Waterfield | 恐怖の幻影 | 28 | ||
Midnight Rogue | Graeme Davis | 真夜中の盗賊 | 29 | ||
Chasms of Malice | Luke Sharp | 悪霊の洞窟 | 30 | ||
Battleblade Warrior | Marc Gascoigne | 最後の戦士 | 31 | ||
Slaves of the Abyss | Paul Mason & Steve Williams | 奈落の帝王 | 32 | ||
Sky Lord | Martin Allen | 天空要塞アーロック | 33 | ||
Stealer of Souls | Keith Martin | 34 | |||
Daggers of Darkness | Luke Sharp | 35 | |||
Armies of Death | Ian Livingstone | 死の軍団 | 36 | 14 | 15 |
Portal of Evil | Peter Darvill-Evans | 37 | |||
Vault of the Vampire | Keith Martin | 38 | |||
Fangs of Fury | Luke Sharp | 39 | |||
Dead of Night | Jim Bambra & Stephen Hand | 40 | |||
Master of Chaos | Keith Martin | 41 | |||
Black Vein Prophecy | Paul Mason & Steven Williams | 42 | |||
The Keep of the Lich Lord | Dave Morris & Jamie Thomson | 43 | |||
Legend of the Shadow Warriors | Stephen Hand | 44 | |||
Spectral Stalkers | Peter Darvill-Evans | 45 | |||
Tower of Destruction | Keith Martin | 46 | |||
The Crimson Tide | Paul Mason | 47 | |||
Moonrunner | Stephen Hand | 48 | |||
Siege of Sardath | Keith P. Phillips | 49 | |||
Return to Firetop Mountain | Ian Livingstone | 火吹き山再び | 50 | 16 | |
Island of the Undead | Keith Martin | 51 | |||
Night Dragon | Keith Martin | 52 | |||
Spellbreaker | Jonathan Green | 53 | 28 | ||
Legend of Zagor | Keith Martin (credited to Ian Livingstone) | ザゴールの伝説 | 54 | 20 | |
Deathmoor | Robin Waterfield | 55 | |||
Knights of Doom | Jonathan Green | 56 | |||
Magehunter | Paul Mason | 57 | |||
Revenge of the Vampire | Keith Martin | 58 | |||
Curse of the Mummy | Jonathan Green | 59 | 27 | 14 | |
Sorcery! The Shamutanti Hills | Steve Jackson | 魔法使いの丘 | 9 | ||
Sorcery! Kharé - Cityport of Traps | Steve Jackson | 城砦都市カーレ | 11 | ||
Sorcery! The Seven Serpents | Steve Jackson | 七匹の大蛇 | 13 | ||
Sorcery! The Crown of Kings | Steve Jackson | 王たちの冠 | 15 | ||
Eye of the Dragon | Ian Livingstone | (新作) | 21 | 10 | |
Bloodbones | Jonathan Green | (新作) | 26 | 7 | |
Howl of the Werewolf | Jonathan Green | (新作) | 29 | 11 | |
Stormslayer | Jonathan Green | (新作) | 4 | ||
Night of the Necromancer | Jonathan Green | (新作) | 8 | ||
Blood of the Zombies | Ian Livingstone | (新作) | N/A |
内容は基本的に公式サイトやWikipedia等からの引用です。私自身が各作品の日本語版の有無をしばしば間違えるので、備忘録的に作ってみました。ご参考まで。
ファイティングファンタジーシリーズ35周年
つい大人買いしてしまいました。。。
ファイティングファンタジーシリーズが今年35周年を迎えます。
ファイティングファンタジーと言えば、英国から始まったゲームブックのシリーズです。記念すべき第一作はスティーブ・ジャクソン、イアン・リビングストン両氏による「火吹き山の魔法使い」。本国では何度も装丁を変えて再販されています。
The Warlock of Firetop Mountain (Fighting Fantasy)
- 作者: Steve Jackson,Ian Livingstone
- 出版社/メーカー: Icon Books Ltd
- 発売日: 2009/09/03
- メディア: ペーパーバック
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ファイティングファンタジーの特徴は、遊びやすくバランスのとれた戦闘システム。主人公はゲーム開始時にサイコロで技術点、体力点、運勢点を決めます。戦闘は、主人公と敵とでそれぞれ技術点にサイコロ2つの目を足して、低い方が体力点を2失うというシンプルなものです。運試しに成功するとダメージを増減できますが、運試しをするために運勢点が減少していき、運試し自体が失敗しやすくなっていきます。
ほとんどの作品は400パラグラフで構成されています。当時としてはこれが標準的な長さでしたが、今読んでみると結構読み応えを感じますね。
スティーブ・ジャクソン最後のゲームブック作品とされた「モンスター誕生」は460パラグラフの大作でした。
Creature of Havoc (Fighting Fantasy)
- 作者: Steve Jackson
- 出版社/メーカー: Icon Books Ltd
- 発売日: 2010/02/04
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現代教養文庫から邦訳版も出版されていました。本家の60作品中、全部で30作あまりが翻訳されています。
火吹山の魔法使い ファイティング・ファンタジー (現代教養文庫)
- 作者: スティーブ・ジャクソン,イアン・リビングストン,浅羽莢子
- 出版社/メーカー: 社会思想社
- 発売日: 1984/12
- メディア: 文庫
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35周年を記念して、新作「The Port of Peril」が公刊されるそうです。更に盛り上がっていくといいですね!
吸血鬼の洞窟 チャート解析
どうも、ちゃなです。
フローチャートを用いて古典ゲームブックを解説するシリーズ第5回。今回はデイヴ・モーリス氏の「吸血鬼の洞窟」です。
本作は290パラグラフ単方向。主人公は吸血鬼テネブロン卿を倒すために単身敵の館に乗り込むことになります。
パラメータは体力、精神力、敏捷性をダイスで決めるだけのオーソドックスなシステムです。戦闘時にはサイコロを2つ振って、敵の攻撃力より大きい目なら敵の体力を3減らし、小さければ主人公が傷を負うというシンプルなものです。精神力や敏捷性は成功判定に用い、冒険中に値が変化することはあまりありません。
特徴的なのは、冒険中に見つけたお宝のいくつかに値段がついていることです。単にエンディングに到達するだけでなく、どれだけ金貨を稼いだかを誇ることができます。
とはいえ、アイテムの数はあまり多くありません。
さて、フローチャートはこちらです。
基本的に一本道ですね。
デッドエンドはそれなりに多いのですが、必須アイテムがなくて詰むという展開はあまりありません。真の道を通ろうとすると、銀の燭台、金の腕輪、銅の鍵、銀の鍵という連鎖が発生しますが、なくても横から抜けることが可能です。最重要アイテムは十字架と鉄の意志の薬で、これらは貴重な味方であるハルカス神父が必ず進呈してくれます。
さて、順に見ていきましょう。
最初の選択で門をよじ登ろうとするといきなり確率で即死します。
その後は敵地で寝ようとしたりしなければスムーズに進み、パラグラフ215でハルカス神父からランタンと十字架又は薬をもらえます。この神父、十字架と薬のもう一方は後から来る者のために取っておきたいと言うのですが、すなおに主人公に二つとも渡してくれればいいのに……。
なお、十字架と鉄の意志の薬のどちらをもらうかですが、十字架の方が汎用性が広くてお勧めです。ただし、十字架は終盤でも手に入ります。
丁寧に進んでいけば、銀の燭台、メビウスリング、大理石の骨が手に入ります。
十字架がないと体力を削られたり、場合によってはデッドエンドになったりします。
パラグラフ75、騎士の遺体から入手できる「青の剣」は、実は吸血鬼にとどめを刺せる唯一の武器です。またこの剣は決して壊れませんので、持っていって損はありません。
パラグラフ229の厨房では様々な食材が手に入りますが、最優先すべきは当然、ニンニクです。チーズは意外な使い方をします。
パラグラフ70で黒のクイーンに勝つと、体力が全快する上に、能力値を強化できる貴重なチェスピースをもらえます。
ルートが複雑に分岐しています。
パラグラフ58では強敵ワイトが出現します。ニンニクで立ち向かおうとすると即死するので注意。銀の燭台があれば戦うことができ、倒すと金の腕輪が手に入ります。この腕輪は銅の鍵を入手するためのカギになっています。なお、ここでメビウスリングを使うと、一気に終盤までワープします。
パラグラフ38で骸骨の音楽に魅了されそうになったら、チーズを耳に詰めましょう。間違っても食べてはいけません。ここで金のフルートが手に入ります。
銅の鍵を入手していれば、パラグラフ200で魔女の部屋に入って銀の鍵を手に入れるチャンスがあります。途中のポーションで能力値を全快させることができますが、毒薬も混じっています。
銀の鍵があれば、パラグラフ101の宝石部屋には入れます。ここでは炎を防ぐトパーズが手に入ります。なお、サファイアを取ると、なんとスタート地点にザップされます。
パラグラフ182のコウモリの群れにニンニクは効きません。金のフルートを使うか、黙って耐えてください。
いよいよ終盤です。
パラグラフ263の部屋ではコブラの彫像が手に入ります。一種のトラップアイテムですが、120金貨という高値で売れます。
神父から鉄の意志の薬をもらっていたのであれば、パラグラフ90で巨大蜘蛛を倒して十字架を入手しておきましょう。
そのすぐ後、パラグラフ50ではヘルハウンドとの戦闘があります。トパーズがなければ火炎の息に気をつけねばなりません。
パラグラフ283でいよいよ吸血鬼テネブロン卿との対決です。いきなり襲いかかったりせず、まず卿の催眠術を防ぐために十字架か鉄の意志の薬を使ってください。その後の最終決戦では、ニンニクが役に立ちます。とはいえ、青の剣がなければ卿に直接とどめを刺すことはできません。逃げてしまってもOKです。
こんな感じです。
古典的なダンジョン冒険もので、吸血鬼との対決という雰囲気は良く出ています。ただ、ゲーム性に関しては、種々のアイテムの存在感がいまいち薄かったり、主人公の選択によってあまり展開に変化がなかったりと、ちょっと地味な印象を受けます。
デイヴ・モーリス氏は、同系統の作品をいくつか上梓した後、TRPG色とタクティカルコンバットを全面に押し出した「ブラッドソード」五部作で一世を風靡しました。この作品は最終巻が未訳という可哀想な目に遭っていますので、いずれご紹介できればいいなと思います。
なお、本稿は原著に基づいて執筆しました。そのため、邦訳とは一部訳語が異なっているかもしれませんことをお詫びしておきます。
悪夢の幽霊都市 レビュー&チャート
どうも、ちゃなです。
今回解説するのは、「悪夢の幽霊都市」。
初出は1986年ですが、最近キンドルで再版されました。
本作は鳥井架南子先生の「悪夢シリーズ」三部作の最終巻に当たります。
三部作と言ってもストーリー上のつながりはありません。いずれも単体で完結しています。主人公はいずれも「君」ですが、多分別々でしょう。妖怪村の主人公は怖いもの見たさに廃村に忍び込む好奇心旺盛な人物ですが、二作めの主人公は失恋したてのナイーブな少年です。
私は以前にも書きましたが、この二作目「悪夢のマンダラ郷」が一番好きですね。
さて、このシリーズは、主人公がふとしたことから不思議な世界に迷い込んでしまい、現世に戻る道を探すという物語になっています。いずれも300パラグラフと短めですが、デッドエンドが多く、またパラグラフジャンプを駆使しなければエンディングに辿り着けないため、難易度は高めになっています。
ゲーム開始時に「運命数」と「バイオリズム数」を決めるのが特徴です。運命数はランダムな1~9の数字で、バイオリズム数は運命数にその日の日付を足した数ということになっています。この二つの数字は、そこかしこで成功判定に用いられることになります。
したがって、運命数やプレイする日にちによって、行けるはずの道が通れなかったり、攻略ルートが微妙に変わってくるんですね。
その特徴が顕著なのが、今回紹介する「悪夢の幽霊都市」で、運命数によって3パターンの脱出路のうちどこを辿るべきかが変わってきます。
さて、この「悪夢シリーズ」。システムは同一ですが、舞台を包む雰囲気がそれぞれ異なっていて、どれも絶妙な味わいを出しています。
妖怪村はまさしくゲゲゲの鬼太郎の世界。怖い妖怪もいればとぼけた奴もいたりします。
マンダラ郷では、ありとあらゆる時代の怪物が登場します。原始人と決闘したり、仙人の弟子になったり、スフィンクスの謎かけに挑んだりと、破天荒な冒険が待っています。エンディングのカタルシスが一番大きいのもこの作品だと思います。
そして、幽霊都市は、一見普通の町並みですが、危険がいっぱいです。消灯したビルか地下鉄の駅に閉じ込められたような恐怖を味わえます。一番現実味があるのもこの作品で、本当に夢に出てきそうです。
「悪夢の幽霊都市」には、デッドエンドといえるパラグラフが全部で40以上あります。400パラグラフのファイティングファンタジーシリーズでもデッドエンドは十数箇所の作品が主ですから、これはべらぼうに多いといえます。
なお本作では、バッドエンドには三段階あり、「死」はスタート地点に戻されるだけで最もペナルティが軽いとされています。アイテムはすべて失いますが、道中に手に入れたヒント(パラグラフジャンプの方法も!)は持ち越せますので、完全なやり直しではありません。
次に、「永遠の罠」というのがいくつかあり、例えばエレベーターがいつまでも下り続けて出られない、という悲惨な目に遭います。これにはまってしまうと、お助けアイテムがなければゲーム終了です。そのお助けアイテムは序盤で手に入るのですが、入手できるかどうかは運次第。例えば、運命数が1の読者は、このアイテムを手に入れることはできません。
そして、幽霊都市に囚われてしまったり、異世界で生涯を終えることになる、言わば真のバッドエンドもたくさんあり、ここでは無条件でゲーム終了となっています。
さて、そんな凶悪な本作は、実は双方向になっています。主人公は地下鉄やバスを乗り継いで都市の中を行ったり来たりしながら脱出路を探すのです。確かに、その方が都市っぽいですよね。
以下にチャートをお示しします。
こんな感じです。
黄色のパラグラフは完全なバッドエンド、赤いパラグラフは「永遠の罠」です。紫のパラグラフは「死」で、パラグラフ208に飛ばされるのですが、簡略化するためにその道筋は省いています。
本作は現在でもキンドルで入手可能なので、興を削がないようにチャートの細かい説明は省いておきます。我こそはという方は、是非挑戦してみてください。
ちなみに、今回チャートを作っていて改めて思ったのですが、やはりパラグラフジャンプの多い作品は紙の方が読みやすいですね。最初はPCに両手で打ち込むためにキンドル版を参照していました。しかし、パラグラフジャンプの飛び先を確認する作業は、紙の本の方がずっと速かったです。
さまよえる宇宙船 チャート解析 その2
前回の続きです。
「さまよえる宇宙船」がなぜ難しいかというと……
さまよえる宇宙船―ファイティング・ファンタジー (4) (現代教養文庫24)
- 作者: スティーブ・ジャクソン,浅羽莢子
- 出版社/メーカー: 社会思想社
- 発売日: 1985/09
- メディア: 文庫
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ここでいきなり、チャートの一番最後を見てみましょう。
紫のパラグラフ216で、主人公は最後のワープを試みることになります。ここはパラグラフジャンプになっており、それまでの旅で時間座標と空間座標を見つけ出しておかないと、飛び先がわからない仕組みになっています。
正しい座標を計算式に当てはめれば、無事地球に帰れるのですが、見てわかる通り、間違った座標を入力してしまうとバッドエンドに直行です。
そしてこの、空間座標と時間座標の候補は、それぞれ3つずつあるのです。
したがって、考えられる組み合わせは9通り。そのうち正解は一つだけなのです。
(組み合わせの一つは同時入手が不可能なので飛び先が用意されていません。)
しかも、どの空間座標と時間座標が正しいかは、本文中のどこにも明らかにされていません。実際に飛んでみてバッドエンドに至って初めて、少なくともどちらかは間違いだったことがわかるのです。
これでは、正攻法で正解を見つけ出すためには、何度チャレンジを繰り返せばいいのか、見当もつきませんよね。
多くのゲームブックは、一回のチャレンジではクリアできないように難易度調整されています。しかし、バッドエンドになった場合、何がまずかったのかはおぼろげにわかるのが普通です。
例えば「バルサスの要塞」では、ヒドラで詰むことが多いですが、ヒドラに手も足も出なかった場合、「妖怪写し」が選択肢に出てくるので、この魔法を用意しておけば攻略できるかもしれない、ということが読者にはわかります。実際、妖怪写しを3つ持っていけば、ヒドラを打ち倒すチャンスが生まれます。あるいは、毛皮が選択肢に上がっているのを見て、次のプレイではバルサスの妻からなんとしても毛皮を盗もうと試みるかもしれません。このように試行錯誤を繰り返して、クリアに近づいていくのが、ゲームブック攻略の王道ともいえるやり方です。
しかし、この「さまよえる宇宙船」では、空間座標や時間座標を手に入れた際、それが本物か偽物かを区別する術はありません。(正解の文章には、なんとなくそれらしい雰囲気があるのですが、それも全文読み比べておぼろげに感じられる程度のものです)したがって、読者はとにかく最後の選択まで読み進めて、そしてバッドエンドに至ることで、可能性の一つをようやく潰すことができるに過ぎないのです。
正攻法で、つまり、選択肢を後戻りしたりチャートを解析したりせずに本書を攻略することがいかに難しいか、おわかりいただけたでしょうか?
私は個人的には、このような難しさは、あまり歓迎しません。初期のファイティングファンタジーシリーズには、こういった運否天賦の選択を迫る展開が、結構見受けられます。
さて、先にネタばらしをしてしまいました。それではチャートをはじめから順に見ていきましょう。
さすがにこんな序盤で詰みが確定することはあまりありません。
しかし、最初の選択肢であるパラグラフ256で右舷にある不毛の星系を目指すと、いきなり燃料補給の必要に迫られます。ここでは、乗員を喪失したり、船にダメージを負ったりするリスクがあり、難易度が上がります。
パラグラフ258で惑星にビーム着陸すると、いきなり座標を手に入れることができます。しかし、選択肢によって空間座標か時間座標のいずれかしか手に入らず、しかもどちらもハズレになっています。
燃料補給ルートからうまくすると、警備員を追加で手に入れられる可能性があります。とはいえ、所詮は警備員なので、あまり役には立ちませんが。
パラグラフ44からビーム着陸して異星人と接触すると、展開によっては彼らの弱点を知り、今後の展開が有利になります。さらにその先では、貴重な技術点を上げるアイテムが手に入ります。
飢饉と疫病のある惑星では医務官が大活躍しますが、彼女を失うリスクもあります。残念ながら幾ら働いてもメリットはありません。
なお、パラグラフ83では、ブラックホールに侵入するための速度に関する情報が手に入りますが、この情報はダミーで、使い道がありません。
パラグラフ126から小さな灰色の惑星に降り立つと、恐ろしい病原体を持ち帰ってしまいます。しかしこれを回避すると、真の空間座標を手に入れることができず、バッドエンドが確定します。なんとも意地の悪い構成です。
複雑に分岐していますが、ここでの肝はパラグラフ232で入手できる空間座標です。当初目指していた赤い惑星には目もくれず、パラグラフ11で新たに見つけた小さな光点を目指さねばなりません。そこでイ・アベイルの時空間の研究に協力するか、無理矢理実験台にさせられる必要があるのです。迷路の出口に至れば正しい座標を教えてもらえますが、道を間違えるとバッドエンドです。
パラグラフ109では灰色の惑星に降り立つルートがありますが、この惑星で最終的に手に入る座標は偽物です。ここは無視して飛び去るのが正解です。
いよいよ終盤です。
パラグラフ320では車輪状の建造物ではなく、黒い惑星を目指します。しかしこの惑星そのものが目的ではありません。パラグラフ104から灰緑色の惑星にビーム着陸します。そしてテリアル人と遭遇するのですが、ここでは子供の方が偉いので、パラグラフ118で子供についていくことを選びます。するとラフという子供がサービスを提供してくれます。そこで体力点を全快してもらう誘惑に負けてはいけません。ラフこそが正しい時間座標を教えてくれる唯一の人物なのです。交換条件に船の技術を調べさせてあげても、リスクはありませんので、取引に応じましょう。
この最後のポイントを通るためには、途中の分岐ですべて正しい選択をしなければなりません。最大の難所といえます。
ちなみにパラグラフ106では宇宙船を完全に修理することができますが、その備えが役に立つことはなく、バッドエンド確定です。本書では回復が意味を成さないんですね。
以上です。ファイティングファンタジーにしては少ないパラグラフ数にも拘わらず、非常に歯ごたえのある冒険でした。
本作では、道中、スタートレックを思わせるような奇抜なイベントが多数起こり、いかにもスペースオペラな展開ににやりとさせられます。しかし、地球に帰還するためには、そんな異星人との邂逅を楽しんでいる余裕はまったくないのが、何とも歯がゆいところです。
さまよえる宇宙船 チャート解析 その1
どうも、ちゃなです。
ゲームブックのチャート解析第3弾。今回は、スティーブ・ジャクソン氏の「さまよえる宇宙船」です。
さまよえる宇宙船―ファイティング・ファンタジー (4) (現代教養文庫24)
- 作者: スティーブ・ジャクソン,浅羽莢子
- 出版社/メーカー: 社会思想社
- 発売日: 1985/09
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初出は1983年。343パラグラフ単方向。日本語版は教養文庫から出たきりで絶版になっています。
iOSのアプリでもプレイ可能です。(多分。私は実は購入していません。)
Tin Man Games | Starship Traveller
舞台は遠い昔、遙か彼方の銀河系……ではなく、地球を飛び立った宇宙船がトラブルで別の宇宙にワープしてしまったという局面で始まります。主人公は宇宙船トラベラー号の船長。数多くの乗員を守り、銀河の星々を巡って、地球に帰るための手がかりを探さねばなりません。
本作は、ファイティングファンタジーシリーズの一作なのですが、色々と野心的な取り組みがなされています。
とりわけ目を惹くのはパーティプレイでしょうか。本作では主人公である船長以外に、科学官、医務官、技官、保安官、警備員2名が能力値を持ったキャラクターとして登場します。個々の惑星にビーム着陸する際に、あなたは誰を同行させるかを選ばねばなりません。医療知識が必要そうな局面なら医務官を連れて行くとか、好戦的な異星人がいると思ったら保安官に任せるといった、判断を迫られます。乗員は体力ポイントをすべて失うと殺されてしまいます。また人質になったり事故に巻き込まれたりして乗員を失うこともあり得ます。誰をどのように活用し、温存するか、あなたのリーダーシップが問われているのです。
また、本作では通常の白兵戦以外に、宇宙船同士の艦隊戦や、一撃必殺のフェーザー銃を用いた銃撃戦のルールもあり、戦闘ルールが微妙に異なっています。
システムが複雑な分、シナリオは比較的簡素にできています。宇宙を旅するうちに起こりえるイベントの中には、異星人との遭遇、未知のウイルス、転送機の事故といった、スペースオペラで定番の事件が盛りだくさんですが、個々のイベントにはそれほどの深みはなく、イベント同士のつながりも希薄です。また、アイテムの類はほとんど出てきません。
さて、この「さまよえる宇宙船」、実は非常に攻略難易度が高いです。
実は私は、未だに正攻法でクリアしたことがありません。今回チャートを作成して初めて攻略ルートが判明しました。
そのチャートがこちらです。
例によってよくわかりませんが、基本的に一本道なのが見て取れるでしょうか?
この一本道のゲームブックがなぜ難しいのか、次回、詳しく解説していきたいと思います。
バルサスの要塞 チャート解析 その2
どうも、ちゃなです。
昨日に引き続き、ゲームブック「バルサスの要塞」をチャートで見ていきましょう。
(以下、重度のネタバレを含みます)
まずは砦に入るまで。
実はここで既に運命的な選択が待ち構えています。
灰色のパラグラフは、踏んだ瞬間クリア不可能になる、禁忌の選択肢になっています。
つまり、パラグラフ251、中庭の場面では、「どれかの集団に近づく」つまり住人に接触を持たねばなりません。どうしてかというと、パラグラフ235で手に入る「塗り薬のツボ」が、後半でガンジーをかわすために必須のアイテムになっているからです。
ちなみにパラグラフ235では、他にも銅の鍵と金貨、そして滅多に手に入らない、術のストックを増やしてくれる魔法薬まで手に入るという、大盤振る舞いになっています。
続いて、砦の中。
砦の中ではいくつかのルートに分かれており、道筋によっては行程を大幅にショートカットしたり、逆に敵に捕まって牢獄行きになったりします。
必須なのは、昨日紹介した「黒の塔」に踏み居るための鍵番号を入手することです。
番号は図書館で手に入るため、図書館を通過してしまうとクリア不可能になります。
その図書館を通るチャートが下図になります。
青く塗られたパラグラフ238を通ることがクリアの条件です。
図書館の代わりにカジノ部屋に行ってしまうと、幾ら金貨や魔法のアイテムを稼いでも、最後で詰まります。食料庫も同様です。
道中でガークを倒してブラシを入手しておくと、難易度がかなり下がりますが、必須ではありません。
砦の後半戦。
レプラコーンのオシェイマスがパラグラフ210で登場します。人を食ったキャラですが、剣+1と銀の鏡が手に入るので、この出会いは実はかなり有用です。
その後、道順によっては黒エルフから「携帯用万能棒」を奪うことも可能です。この武器はシリーズの中でも人気が高く、非常に役に立ちます。
ここからはさらに凶悪な罠が待ち構えます。
3つの宝箱を順に開けると、「蜘蛛男の瓶」が手に入ります。しかしこれは、選択肢には数多く出てくるもののまったく役に立たず、しかも敵に回ることもあるという完全なトラップアイテムなのでご用心。
砦の上層へ向かいます。
ブラシを持っていれば、バルサス・ダイアの奥方から毛皮を入手するチャンスがあります。ただし運試しが必要です。
いよいよ終盤です。
パラグラフ182で登場するガンジー。いきなり能力値にダメージを受けるうえに、こいつには武器も魔法もまったく効きません。やり過ごすには、序盤で入手した塗り薬のツボか、魔法のお守りが必要になります。ところが魔法のお守りを手に入れるルートでは錠番号がわからないので、後で詰むことになります。
続いてパラグラフ328のヒドラも、剣では倒せない相手です。確実に越えるには毛皮が必要です。妖怪写しを3回使うか、携帯用万能棒を使うことでも、足止めが可能ですが、いずれも運が絡みます。
最後の番号錠をパラグラフジャンプで抜けると、バルサスとご対面です。
パラグラフ374で満を持して登場するバルサス・ダイヤ。前座の鉤爪獣もかなりの強敵です。
バルサスを倒す手段は二つ。魔法合戦の末に剣で打ち倒すか、弱点を突くかです。戦闘となった場合、彼は技術点12、体力点19と、ほとんどの主人公を上回る強さを持っています。指輪をすり取って弱体化させるか、武器戸棚から剣を入手しましょう。携帯用万能棒を使うと、最強の武器「太陽剣」が手に入るのですが、残念ながら使う間もなく殺されてしまいます。
一番最後に「浮遊」の術がないと、この広大な砦から歩いて脱出することになるのですが、その話はまた後で、ということになっています。
「バルサスの要塞」を事前知識無しでプレイすると、大抵はガンジーかヒドラ、あるいは番号錠で詰みます。それは多くの場合、序盤の選択肢を間違えたことが原因です。
ちなみに本作は、正しいルートを選べば、能力値が最低でもかなりの確率でクリアできます。(魔法を適切に使えば、戦う相手は技術点5点くらいですみます。毛皮を盗む時の運試しに成功できるかがカギになります。)必要な魔法は、「浮遊」2つ、「骨抜き」2つ、「防御」「千里眼」の6つくらいです。「体力増強」「開運」もあった方が良いでしょう。
では逆に、一つも魔法を使わずにクリアすることはできるでしょうか?
これも理論的には可能になっています。
ただしその場合、全力のバルサスと戦わねばならないので、技術点12、体力点20以上は欲しいです。道中ガンジーに技術点を下げられますので、オシェイマスから貰う剣+1があってやっと互角です。
最後に、パラグラフ258は調べた限りダミーパラグラフです。他にも細かいエラーがあることが発見されています。
それでも、本作は屈指の名作といえるものであり、私のお気に入りのゲームブックの一つです。