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「魔力の杖」チャート解析 その2

どうも、ちゃなです。

「魔法の王国」三部作の一巻目「魔力の杖」。チャートを細かく見ていきましょう。

 

序盤は小手調べですが、バッドエンドが結構あります。

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主人公の母が死に、カー・デリングは旅立ちを余儀なくされます。叔父ベルドンを頼ってフリートンに向かいます。パラグラフ102で主人公はハーフエルフのゼインと出会います。

 

次のパートはゼインに師事するかベルドンのもとに向かうかの大きな分かれ道です。

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ゼインと親交を深め、パラグラフ159で彼に師事することを選ぶと、ゼインルートに分岐します。ゼインを信用せず、ベルドンに会って話を聞こうとすると、右側のベルドンルートに入ることになります。

ベルドンルートでは必ずアカデミーに入学することになります。入学早々、上級生との小競り合いがあり、技術点を減らされる局面も出てきます。

 

ベルドンルートの続きを見てみましょう。

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ベルドンルートでは選択によって、「いたずら」、「弱い魔術」、「強い魔術」のいずれかのカテゴリーを学ぶことになります。

ばか正直に初級コースを希望すると「いたずら」を二つしか学べず、これらは物語ではまったく役に立ちません。ブーコッドの錫杖についてゼインから聞いたことを正直に話すと「弱い魔術」のコースに分岐します。「羽毛落下」と「壁登り」があるので最も有用性が高いですが、羽毛落下の習得判定に失敗すると即死します。ブーコッドの錫杖のことを黙っている場合、「強い魔術」を学ぶことができ、さらにいきなり父の私室への侵入にチャレンジする機会もあります。ただし、強い魔術はいずれも攻略にほとんど役立ちません。

 

魔術習得のフェーズが終わると、主人公は侵入者を発見します。ヒロインの吟遊詩人ダーリスです。彼女は本来は味方なのですが、「皆殺し」や「炎の手」で挑んだり、判定に失敗したりすると、弁解する間もなく即死します。ここでは「眠り」を使うのが唯一確実な方法です。

ダーリスとともに主人公は父の私室への侵入を試みます。判定に失敗すると壁から落ちて命を落とすことになりますが、「壁登り」や「羽毛落下」があれば、それぞれ判定のチャンスが増えます。なお、パラグラフ28の飛び先は判定成功で179、失敗で10となっていますが、これはエラッタで逆でしょうね。

 

魔術を学ぶ前に父の私室にベルドンとともに侵入しようとするルートもあるのですが、ここにもエラッタがあります。パラグラフ160で部屋を調べてみる選択肢の飛び先は241となっていますが、これはおそらく105の間違いです。うまく侵入して父の巻物を手に入れ、さらに判定に成功してベルドンを欺ければ、物語は一気に終盤に向かいます。

一カ所エラッタがあり、ベルドンの名前が主人公の父になっています。

 

一方こちらはゼインルートです。

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ゼインに自分の不信感を正直に告白した場合、「強い魔術」を教えてもらえます。隠した場合は「弱い魔術」になります。しかし実際に役に立つのは「弱い魔術」の方です。

いずれも3つの魔術の習得を試みるのですが、一つも判定に成功しなかった場合はバッドエンドになります。ベルドンルートに比べると習得失敗時のペナルティが厳しくなく、また「羽毛落下」は判定に失敗しても習得できます。

 

ゼインルート終盤です。 

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ゼインルートではなぜかここに難所があります。ブーコッドの錫杖を取り戻そうとするミッションに怖じ気づいたり、錫杖より父の魔術書を優先しようとしたりすると、ゼインに記憶を消されます。この人、本当に味方なのでしょうか?

 

ゼインルートの場合はダーリスとともにアカデミーに侵入します。ベルドンルートの場合は侵入してきたダーリスと合流します。ここで主人公があっさりダーリスの言うことを信じて寝返ってしまうのが、ちゃな的にはちょっと違和感でした。

 

チャートは次で最後です。

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主人公は父の私室から巻物を手に入れます。展開によっては一冊入手し損ねますが、何の問題もありません。ニセドラゴンのラファエルという頼りになる従者を手に入れます。

 

最後は、錫杖を守る「暗き者」とベルドンの挟み撃ちに遭います。緊迫の一瞬ですが、ゲーム的には既にエンディングが約束されています。

 

いかがだったでしょうか?

チャートだけ見てしまうとあまり面白みがなく、また山場である魔法習得の機会をいくつにも分離させているのは、パラグラフ的に勿体ないように思います。その一方で、おそらく正伝と思われるベルドンルートのほかに、比較的安全に魔術を学べるイージーモードとしてのゼインルートが用意されているというのは、なかなか面白い試みと言えます。

(追記:続編「魔術師の宝冠」によると、ゼインルートの方が正史になっていました。)

 

前回お伝えした通り、本編の妙は描写にありますので、もし機会があれば是非手にとって読んでみてください。主人公と一体となって魔法を次々と学んでいくような気持ちになれること請け合いです。